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異世界と12の召喚獣  作者: ドンサン
おれと鬼と時々魔獣
33/81

鬼と厄介払い ②

ペスト王子を追って屋敷裏の訓練場に来た。

背の高い壁に囲われており、外からは様子が見えない作りになっている。



「追ってきてよかったのか? 子どもだからって愚民相手に容赦はしないぞ?」


「こいよ」


おれは防具の準備をする。

見た目は自分の気持ちを大きく変える。

今回は軽鎧でバフを乗せまくる。

いつも何も気にせずかけてるバフだが、本当にノーリスクかいつも心配になりながらてんこ盛りにしている。


防具の自動修復、自己治癒、攻撃・防御・速度・回避率上昇、魔法耐性、状態異常無効化


これだけ盛っても足りなく感じたら追加で付与するつもりでリクドウを構える。


こちらが刀を抜くとクソ王子も武器を構えた。

深く綺麗な青い羽の扇だった。

それは思わず見入ってしまうぐらい、クソ王子には不相応な綺麗さだ。


欲しい


そう思った時、背中から風が吹いてバランスを崩した。

体勢を立て直しきる前に、今度は正面からの突風で吹き飛ばされた。

幸い一緒に飛ばされたイルコスが背中でクッションになってくれて、無事だったが何が起きたか状況が掴めない。


「幸運はどこまでおまえをまもるかな?」


クソ王子が扇を頭上に上げると、また背中から風が吹いた。


来る!


おれは次の突風に備えてリクドウを斧に変えて、正面に構えた。

だが、突風は来なかった。


おれはがら空きの頭上から落雷を浴びさせられた。

そのまま膝から崩れると、正面からの突風に吹き飛ばされた。


「ハハハハ。おれは風と雷のダブルなんだよ。王子だからね!」


ダブル?初めて聞いたけど、2個しか使えないってことだろうか。

魔属領に帰ったらメリアスに相談だな。

仮に2属性が得意で、他にも使える可能性を残しつつ対応するため、おれは本を構えた。


とりあえず様子を見るため火の玉カードを使ってみた。

真っ直ぐ飛んでいく火の玉を、クソ王子は扇をあおいでかき消した。


次は土の玉カードで岩を飛ばす。クソ王子が再び軽く扇をあおぐとこちらに帰ってきた。

おれは斧で弾いて対応する。


「面白い戦い方をするな。だが、そんな攻撃では届きもしないぞ?ペットは見てるだけか?」


プギー!


リックが真っ直ぐクソ王子に突進する。見事な猪突猛進だが、さすがに正面からだと対応されるはずだ。クソ王子は扇を閉じて構えている。リックとクソ王子の距離が縮まってきた時、リックの足元が突起してウリボーの体が弾丸のように飛んでいく。

さすがに突然変わったリズムには対応できず、クソ王子の土手っ腹に弾丸ウリボーがクリティカルヒットした。


リックと逆サイドを遅れて走っていたイルコスの足元も突起して、加速を利用した突進をペストマスクにヒットさせた。


2匹ともそのまま追撃しようとするが、それを許すクソ王子ではなかった。

王子の周りに強い上昇気流が発生し、リックとイルコスは空中高く打ち上げられた。

クソ王子が空高く舞っているおれの従魔達に向かって扇を振ると、刃のように鋭い攻撃が2匹を襲う。


何度も扇を振る度に刃が発生し、2匹を襲う。早々にリックとイルコスを守るように岩が2匹を包み込んだ。

恐らくリックが土属性の魔法を使っているのだろう。


クソ王子はしばらく上空に漂う岩に攻撃していたが、岩の守りが固く諦めたようだ。上空にある2つの岩をこちらに向かって放つ。

おれが土壁カードを3枚重ねてカード化を解くと、2つの岩は分厚い土壁に当たって地面に転がった。

岩が壁に当たると同時に、おれの頭上に雷が落ちた。追撃するように土壁の横から雷の魔物?のような生き物がおれに体当たりしてきた。


(クソ王子め。普通に強いじゃないか。)


正直、バフ増し増しでもかなり劣勢だ。

リック達と協力して戦いたいところではある。


「おーい!生きてるか~?もう終わりか?ペットの方が強かったぞ~」


うっ、


事実だけど他人から言われると少し刺さるものがある。

そう言われて黙ってるおれではない。

確かにおれより召喚獣達の方が格段に強い。

だが、おれだって弱い訳じゃないんだ。


土壁をカード化して本に戻す。

久しぶりにペストマスクを見た気がするけど、マスクの下が笑っている様に見えて再び怒りが込み上げてくる。


おれはヘアピンでクテクの能力を借りる。

強い召喚獣達あってのおれなんだ。全力で相手してやる。


常にクソ王子を視界に入れたまま、ゆっくり距離を縮める。

もちろん属性の玉を1つ1つぶつけながら歩く。


クソ王子は何か言いたそうだが、クテクのスキルで顔の筋肉すら動かせないでいる。


そしてボロボロになったクソ王子の目の前に来た。


「けいせいぎゃくてんだな。そのおうぎもらうぞ」


おれは刀に魔力を乗せてクソ王子の肩から腕を切り落とした。


「おうちにかえってくれる?」


おれは刀をクソ王子に向けて聞いたが返事はない。

おれは刀を強く握り構えた。

振り切ろうとした次の瞬間、おれとクソ王子の間に、空から人が降ってきた。


クテクのスキルが切れて、クソ王子が大男の後ろで悶えている。


「王子を殺されると困っちゃうね~」


そう言いながらブーメランパンツで筋肉質な大男はこっちに微笑んだ。

おれは後一歩の所で止められたので、無意識に大男を睨んでいた。


「そんなに睨まないでよ~。この街には当面関わらないように言っておくからさぁ」


大男は落ちている腕を拾って、力ずくでクソ王子に刺し直し、悶えている王子を抱えて飛んでいってしまった。


勝ったとは言い難いが追い払うことには成功した。

奇遇なことに扇が落ちていた。

それをカード化して本の中に収めた。

おれは一気に緊張が解けてその場に仰向けになる。


(おれより強い人間もいた。もっと戦いの幅を広げないとな。)


クソ王子を追い払い、綺麗な色をした羽の扇も手に入った。

一応ミッションは成功、でいいかな。


おれはそのまま1人、訓練場で一休みさせてもらった。

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