鬼と厄介払い ①
おれ達は勇者のお連れ様を追い払うため、太牙くんを寝かせている部屋に戻ってきた。
だがそこに太牙くんはおらず、勇者の遺体だけが転がっていた。
「なんだこれ?えぐいな」
なにも知らない拳一が驚いている。
自分よりも年下の男の子の股間部分が、真っ赤になって倒れているのだから。
他の者達はスルーして外に出る。
外に出ると通りの遠くの方に黒い魔物を連れた人が見えた。
おれには遠目でも黒い虎に見えた。
「たいがくん!」
おれが大きな声で太牙くんを呼ぶと、黒い虎と隣を歩く人は止まった。
振り返った太牙くんの目の下には、星のマークが3つ並んでいた。
さっきまでは無かったはずだ。
偶然別の黒い虎を連れた人なのかもしれない。
そんな時だった。
「ラキースター☆」
黒い虎の隣の人が、ハイテンションで指鉄砲をすると、指先からこちらに向かって人数分の星が飛んできた。
おれとネフルに向かってきた星は、体に当たってそのまま地面に落ちた。
従魔3匹に向かってきたものは、各々が体当たりや手で叩いて落としていた。
リーダーと拳一は最初避けたが、通りすぎた物が当たって、星は弾けて消えた。
だが、なにも無さすぎて2人が一番キョトンとしていた。
「アン☆ラッキー」
意味の分からない言葉が帰ってきた。
おちゃらけてるのか、なんかリズムを崩される相手だった。
「おれの名前は、前金 鉱平。転移者で勇者と王子とこの街にきたわけなんだけど、勇者死んじゃってたね。おれのオリジナルスキル、ラキースター☆の確率が0なんて、運を黒虎に極振りしちゃったかね。」
勇者が死んでることに関して、すごく無関心なのが伝わってくる。
黒虎は太牙くんて言うのは今ので確定した。
振り返ったのは、おれの呼び掛けに反応したからなんだろうけど、それ以上のリアクションがないのが少し気になる。
「坊っちゃん、ここはあたし達がやるから他をお願いしていいかな。黒虎くんには悪いことしたと思ってるし、ここでチャラにしておきたいからさ。」
「それならおれも残るぜ。パピノア無しで1人じゃしんどいだろ。おれも舞と一緒の方がスキル発動するしな」
この2人は一緒の方が力を発揮できるとのことなので、2人に譲って他を当たることにする。
任せたのはいいものの、どこに他がいるのか分からない。そもそもこの街の地図も把握してない。
どうしようか。。
走ること数分。路地に人影が見えた。
その人影を追うように街の路地に入る。
「すみませーん。ゆうしゃのなかまをしりませんか?」
人影に向かっておれは聞いてみた。
すると人影は立ち止まって振り返った。
その人は肌が白く、髪の長い美しい女性だった。
しばらく見とれいていると、向こうから話をかけてきた。
「ぼく、どうしたの?私の仲間は勇者さんだよ。街の人達とはぐれたの?みんなと一緒にいないと危ないよ。」
女性はおれの腕を掴もうとしたが、マチカが噛みついて腕を引っ込めた。
「なに!?この犬。教育がなってなさすぎじゃないの?ぶっ殺してあげる。」
女性は一気に豹変してしまった。
確かにこっちが悪いんだけど、変貌がすごすぎて、圧倒されてしまう。
「私はね、この街を作り直しに来た王子と勇者のメンバーの1人。白薊 舞花よ。美しい私の体に傷を付けたこと許さないんだからー!」
すごい怒っている。
どうしようかおれの隣に立っているネフルを見てみた。
するとなぜか、ネフルからも少し殺気を感じる。
「薊?紛い物が調子に乗るなよ。本物を見せてやる。 抜刀秋薊。」
ネフルの刀が淡い紫色に光った。
急に太ももにトゲが刺さったのを思い出して、おれは身震いをする。
マチカがおれの足を尻尾ではらった。
こちらも頼れる後ろ姿をしていたので、イルコスとリックとこの場を任せて去る。
リックとイルコスと路地の中を走っていると、リックが急に方向を変えた。
おれとイルコスはリックに付いていくと、街の中で一番大きな建物の前で止まった。
イルコスも何かを感じているようで、この建物に何かいるのだろう。
おれはドアを開けてみた。
「ごめんくださ~い」
返事はない。
いくつかある部屋のドアを開けて、人探しをしてみた。
階段を上がって違う階も探してみる。
ある部屋を開けたとき立派な椅子にマスクを付けた人が座っていた。
マスクと言っても、ペストマスクみたいな変わったタイプのやつだった。
「子どもがわざわざこんなところに何の用かな?愚民と同じ空気なんて吸ってられんから、早く出て行ってくれ。」
すごく感じが悪い、男の声だ。
「いやならむしろ、でていってくれないかな?」
率直にこちらの用件を言ってみた。
そもそも愚民とか言うなら城から出るなよって話なんだが。
「なんて名前だったか忘れたけど、この死んだ街を国王直々に譲り受けたんだよ。中央都市ボーデ程とはいかなくても、西のニホンギとは格別に違う場所にするんだ。そのため、今いるゴミ虫共に居られると困るんだよ。 ね?」
いいやつか悪いやつか分からん。
街や国を発展させて良くしたいらしいが、国民を愚民と呼び、先住民を問答無用で処分するのは違う気がする。
リックとイルコスからも怒りが伝わってくる。
「はぁ。これだから愚民共は。王族の言いなりになっていれば、幸せに暮らせるものを。王子直々にその罪裁いてやろう。」
王子を名乗ったペストマスクは窓を開けて飛び降りて、走って逃げていった。
あれだけ大きな態度をとっておきながら逃げるのかよ。
呆気に取られていたが、すぐに我を取り戻しリックとイルコスと追いかけた。
裏に訓練場があって、そこにペストマスクが待っていた。
「愚民に価値はないが、これで建造物等の余計な被害は出さないで済む。ぼくの貴重な時間をこれ以上奪わないでくれよ。」
つくつぐ癇に障る。
国民の事には興味がなく、国にあるもの全てを自分の物と思っているのか、発言に対していちいちムカつく。
このクソ王子にお灸を据えてやる。




