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異世界と12の召喚獣  作者: ドンサン
魔族領の生活
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新しい仲間

そして一ヶ月が経った。

おれは少し驚いている。

なんと歩けるようになったのだ。


この一ヶ月間成長速度に違和感を感じたおれは、ラパンに相談していた。

結論、ミルクだった。

初日に見学した牧場の牛(モーモーと呼ばれている)のミルクがヒューマンの成長を加速させるらしい。

もちろんミルクの効果は誰も知らない。ヒューマンに飲ませた前例がないからな。

だが、おれにとっては良い誤算だった。

歩けるし、少し喋れるようになっていた。



今日は一ヶ月ぶりにあの部屋へ来ていた。今回はおれも大きなイスに座らされている。

初日の昼に顔を合わせた4人が来た。


「おい、人間。揃ったぞ。始めろ」


魔王が言った。

そう。今回はおれが呼んで集まってもらった。自己紹介をしておこうと思ってね。上手には話せないけど早めに伝えておきたかった。


「あつまってくれて、ありがとう。ぼくは、つかさ。こっちは、ラパン。よろしく」


「あらあら、話せるようになったんですねぇ。私はトラリア、サキュバスです。一応第四団の団長です。第四団はサキュバスとインキュバスで構成された家畜の飼育員です。よろしくねぇ」


最初に答えたのは牧場のお姉さんだった。

どうやらサキュバス達の魔法で家畜を育てると幸福感が上がり食材の質があがるらしい。それでスーパーミルクが爆誕しているそうだ。ラパンがこそっと補足してくれた。


「第三団の団長、アイラだ。第三団は研究員、主な構成員はヴァンパイアだ。ヒューマンの被験体は珍しいのでな、いつでも歓迎している。」


そう、うれしそうに言った吸血鬼。

触らぬが仏。南無阿弥陀仏。

おれは無意識に手を合わせていた。


「第二団の団長、メリアスだよ。よろしくね。一応戦時の遠距離部隊ってことになってるけど、戦のない今では狩猟部隊って感じだね。種族はデビル。パトラと一緒だよ。」


やさしそうなイケメン。デビルなのにめっちゃいい人そう。メガネでインテリ感満載のイケメン。

(なにかあったらこの人頼ろう。)


「第一団、団長。ジャイアントのプチだ。第一団は戦時の時、近接部隊。今は治安維持や、災害時などの救助活動を主にしている。」


筋骨隆々ですばらしい肉体なのに、この人だけ名前がネタなんだよな。

巨人の中でチビなのかな。


(今は姿を小さくしているようです)


ベストアンサーをありがとう、ラパン。


「私は魔王、パトラだ。」

 

 ………


それだけかい。

まあ魔王はなんだかんだ面倒見がいい。

国民からは慕われているし、おれのことも毎日欠かさず城から連れ出してくれた。ミルクが欲しくなったら自動補充される魔法を瓶に施してくれた。最高。


だがしかし。

おれには服がない。

今も裸だ。

そこは今後どうにかしてもらおう。

まずはこちらの状況を説明する。


「パトラ、ぼくをひろってありがとう。ぼくにはこことはちがうせかいの、ぜんせのきおくがある。」


「転生者か、興味深いな。」


吸血鬼がうれしそうに言った。

(おまえは一番黙ってろ)


「転生者は必ずヒューマンとして産まれ、特異なスキルや身体能力を有していると聞くが、君にもあるのかい?」


メリアスさんが少し強めに聞いてきた。

プレッシャーを感じるが、敵対するつもりはない。

ここの魔族はみんないい人達だから。


「ぼくのスキルは3つ。1つ目は言語翻訳。どんな言葉でも理解することができる。2つ目は丈夫な身体。ケガや病気になりにくい。3つ目は固有魔法干支召喚。これは前世の12の動物が召喚できるというもの、のはず。まだそこのうさぎしか試したことがない。」


「アイラの魔道具で嘘がないか確認してみたらどうだ。スキルが見れるやつがあっただろう」


プチがそういうと、アイラはテーブルの上に巻物を出してみせた。

それをおれの方に投げたので持ってみたが、なにも起こらない。


「魔力を流してみろ」


魔王に言われたものの、魔力の流し方なんて知らん。とりあえず手に意識を集中させてみよう。


すると、巻物が青く光った。上手くいったみたいだ。

(ふぅ…貴重な魔力を使ってしまったではないか。)


(つかさ様はミルクと視覚強化で魔力量が増えておりますので問題ありません。それにこれは循環魔力を認識するもので魔力は消費しません。)


念話のつもりではなかったんだけど、問題解決できてラッキー。助かるな、ラパン。


光りがなくなったので巻物を魔王に返した。

魔王がそれを広げるとなにか書いてある。


名前     つかさ

称号     転生者

種族     ヒューマン

レベル    1

魔力量    9100

スキル    言語翻訳

       丈夫な身体

固有魔法   干支召喚

魔法適正   なし


魔力量が9100になっとる!!


(モーモーのミルク1食で魔力が100増えます。3食×30日×100が加算されています)


そんなのミルク離れできないじゃないか!


「あらあら、どうやら嘘はないみたいだけど、これは少し問題もあるわねぇ。」


「単刀直入に聞く。おまえは魔王を討つ者か?」


プチに聞かれるが、その体が魔王と同じぐらい大きくなっているように見える。圧がすごい。

(戦は無いはずなのに魔王が討伐される可能性はあるのか。そんなつもりはあるわけもない)


「まおう、たすけてくれた。たたかうりゆうない。おれまだよわい。みんな かてない」


「ま、とりあえず戦闘の意が無いならこのままでいいんじゃない?ヒューマンの観察はそうそうできるものでもないし。」


「ぼくも同意見だね。現時点で敵意も嘘も無さそうだからね。」


吸血女とメリアスが納得してくれた。プチも元の大きさに戻った気がする。


「魔王様は、どう思ってるの?」


トラリアも大丈夫そうだ。

あとは魔王さえ良ければいいんだが。


「なにも変わることはない。こいつはおれが育てる。」


こうしてみんなにおれのことを打ち明け納得してもらえた。

次は召喚魔法の確認をやっていかないとな。



自己紹介から数日がたった。

今日は、魔王が新しいところに連れていってくれるらしい。

魔王城の広い場所で黒いドラゴンを召喚して連れてきてくれたのは、門を出て正面の森を少し中に入った場所だった。空から見ると泉があり、周りはきれいな花がたくさん咲いている。


泉の前に立つと意外と大きいことが分かる。エメラルドグリーンの水が透けてすごくきれいだ。

泉の中心には大きなお皿のような物があり、周りには魔族の石像がありこちらを見ている。

「人の子よ、よく見ておけ。」


「ぼくはつかさ」


魔王が泉の中に手を入れると、水がほんのり青く光った。

光りはすぐに消え、魔王が戻ってきた。


「魔族の一部はこの泉から誕生する。なにもしなければ多種多様な魔族が誕生するが、魔王の魔力を定期的に混ぜることで、ある程度性格の調整をすることができる。私はこのまま争いがない平和が続けばいいと思っている。」


近いうちに戦う予定でもあるかのような言い方だった。

本当に魔王とは思えないな、この人は。


用事を済ませた魔王はおれを連れて城へ戻り、部屋には戻らずどこかへ行った。

おれはラパンを呼んだ。

裸のおれがうさぎと城内を歩いていても、使用人達は暖かい眼差しで挨拶をくれる。みんないい人達だ。

気分高らかに敷地内の演習場に来た。初日に第一団が練習をしていた場所だが、今日はお休みの日。おれは試したいことがあった。


(ねえ、ラパン。他の動物の召喚方法を教えて。)


(サモン、と唱えて望む動物を呼んでください。呼び掛けに応えれば出てくるでしょう。召喚時に魔力を消費しますのでお気をつけください。)


魔力量の心配は必要ないだろう。

最初に呼ぶ動物も決めてある。この一ヶ月一番不便だったのは移動だ。赤ちゃんの姿で歩くのではどこに行くのも時間がかかってしまう。


「さもん、うま」


すると、魔方陣から白馬が現れた。が、小さい。中型犬くらいしかない。まあ赤ちゃんなら乗れそうだし、城内も大丈夫そうだからとりあえず良しにしておこう。

それにしてもうさぎに続いてまた、白い毛に赤い目。不思議ではあるが今は保留にしておく。

白い馬はなにか欲しそうにこちらを見ている。


「なまえ、しゅばる」


シュバルは名前を気に入ってくれたようだ。うれしそうにくるくるその場で回っている。


(思えばなんとも言わなかったな)


こうしておれは新しい召喚獣と仲間になった。魔王の部屋までシュバルに運んでもらい、ミルクを飲んでゆっくり寝る。


次の日違う召喚獣を試してみたができなかった。

ラパン曰くレベル不足らしい。


でも今は赤ちゃん生活最高すぎる。

飲んで寝て、たまに魔王と出歩いて、召喚獣と戯れる。そんなすごく平和なセカンドライフを満喫していた。


召喚獣はそのうち増やしていけばいいや、そう思いながら。

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