海のギャング
おれ達は途中小麦の採取をしてブレストに着いた。
他のみんなはまだ経験値稼いでるんだろう。
「人族じゃないか!今日は何しにきたんだ?」
前回と同じ門番がハイテンションで声をかけてきた。
ブレストは、こちら側が褐色肌のハイテンションで、海側は肌が青白く元気も無い種族だった。
「うみにいきたい」
「海か!ちょっと待ってろよ!」
門番は何かの準備をしに行った。
少し待つと戻ってきた門番に、手首を固定されて、門の中へ連れていかれた。
(ん?また捕まった?)
この街は良い思い出がない。
前回も2人の領主に罪人として扱われたが、今回はまだ街の中にすら入ってない。
門の頂上に着くと、門番は大きな鐘を殴って鳴らした。
ゴーン、ゴーンと鐘が鳴ると、鐘を支える棒からロープが海に向かって飛んでいった。
ロープの張りが強くなったことを確認すると、門番は笑顔でロープを差した。
おれの手首を結ぶものには、丁度よくロープに引っかけれそうな金具がある。
問題はこのロープの耐久に対する信頼と、ゴールが見えていない恐怖。
おれが色々なことを考えていると、ロープの上をシュバルが走って行った。
見送って少し待つと、ロープと繋がる場所に雷が落ちた。
それをシュバルからの合図だと信じて、おれはジップラインもどきに手を掛けた。
そして海に浸かった。
必死に手元の金具を外そうと試みるが、焦って外すことができない。
息苦しくなっておれの意識は無くなった。
ゴホッ ゴホッ
砂浜で噎せながら意識が戻った。
心配そうに見守っていたシュバルが、うれしくておれを舐めまくる。
(あの雷はなんの合図だったんだ?)
まだ上手く喋れないから念話で聞いてみた。
そもそもあれも雷じゃなくて、念話を使えばよかったな。
(モー。旦那ならタイミング合わせて抜けれると思ったんすよ。すいやせん。)
海中で止まってからもできなかったのに、あの凄まじい速さの中で出来るわけがない。
じゃあおれはどうやって海からあがれたのか。
近くにはシュバルとサージュがいる。
サージュはほとんどの召喚に応えないけど、ここにいたらしい。
首のクテクと、背中のビテスがいなくなっている。
「クテクと、ビテスは?」
焦ってシュバルとサージュに聞くと、サージュが海を指差した。
海ではクテクとビテスが気持ち良さそうに泳いでいる。
安堵したおれは、次に意識を無くしていた時の話を聞いてみた。
「あるじさま、海に入った。クテク首を絞めて、ビテス硬いもの壊して尻尾でここまで飛ばした。シュバルが電気流して、あるじさま目が開いた」
助けてくれたのは感謝なんだが、最初のクテクが首絞めたのなんで?
よく分からんけど、ジップラインにも納得行かず腹が立ったおれは海で泳いでいる2匹に電気を流してやった。
本来魔法が使えないおれは、ヘアピンの効果でシュバルの雷魔法を借りて2匹に八つ当たりをした。
それなのに…それなのに
「なんでおまえら、ノーダメなんだよ!」
知らない魚や貝が浮き上がってきたのに、クテクとビテスは変わり無く泳いでいる。
さらに苛立ちが増してしまう。
そんな時だった。
海から大波と共にシャチ人が数人出てきた。
上半身シャチで下半身はシャチ色をした人。シンプルに違和感しかない。
「おれらの海を汚すやつは誰だ?」
「誰のお陰で、この街がこんなに安全なんだっけ?」
「おい、この魚と蛇の飼い主出てこい!」
こいつらの飼い主はおれだけど、泳いでただけで、迷惑をかけてはいないと思うのだが。
この言い方だと、こいつらのお陰でブレストが安全な街だと言いたいのか?
だったら前回の巨大タコはなんで戦ってくれなかったんだ?
「おまえらがどこのだれかはしらんけど、やるきマンマンですか? あぁん?」
朝連で無駄にMPを消費してしまったが、余力で問題ない。
ただ遊泳していただけの仲間に対して、海を汚したなんて言いがかりもいいとこだ。
少し頭にきている。
「ガハハハ。 人族のしかも子どもがなんでこんなとこにいるんだ?帰ってママのおっぱいでも飲んでな」
シャチ人達は大声あげて笑っている。
プッツンします
魔力を全力注いで防具を作る。
見た目はダイビングスーツ。朝の事があるから、機能がちゃんと付与されるかは不安だが増し増しで付けてやる。
高速遊泳、水中での呼吸、魔法耐性、物理耐性、自己修復、高速回復、攻撃力と回避率上昇。
いまいち仕組みを理解していないけど、ちゃんと機能してくれればこれでいけるはず。
ふと本やカードに耐水機能がついているか不安になって、使うのをやめた。
「リクドウ、しゅらモード。しばきあげてやる」
2本の剣を握って海に入った。すぐに全身が浸かったが、呼吸は問題ない。移動は歩いたり泳いだりする必要がなく、思った所へ移動することができる。
まるで宙に浮いているかのようだ。
海中に潜ると、クテクとビテスが一緒に戦うためにおれのとこへ来てくれた。
(クテク、ビテス、いくぞ)
シャチ人の1人が普通のシャチになって襲いかかってくる。
大口を開けたシャチをおれは2本の剣で受け止めて、カウンターで下顎に蹴りをかましてやった。
するとシャチは大口を開けたまま海面へ上昇。状況を理解できていないおれに向かって、他のシャチ人が銛で攻撃してきた。
剣を使って受け流し、カウンターを狙うが受け止められ、しばし打ち合っていた。
その間も海面のシャチは動くことなく、他のシャチ人達はビテスが相手をしていた。
「人族なのになかなかやるじゃないか。我の名はレプン、お前の名は」
銛のシャチ人が手を止めて聞いてきたので、少し休憩。
実際のところ長期戦になると消耗が激しい上に、防具の効果が切れると戦闘どころではなくなってしまう。
持続時間が分からない間は、短期決戦に持ち込みたい。
「おれはつかさ。うちのなかまをよくもバカにしてくれたな。ぜったいにゆるさない」
「魚と蛇の事か。 そのペットが雷で海を汚したことに我らは憤りを感じているのだぞ」
雷?
それはクテクでもビテスでもなく、おれではないか?
おれがこの戦いの原因であるなら、素直に謝っておくことが吉である。
「すまない。それはおれだ。ムシャクシャしててやってしまった。もうしわけない」
おれは納刀して頭を下げた。
シャチ人のレプンは武器を下ろしてくれた。
おれとレプンの間で話の折り合いがつき、陸に上がった。
おれがクテクとビテスにも声をかけ戦闘を終えると、海面のシャチが動き出した。
「おい、ガキ。絶対食ってやる。」
シャチがおれに向かって噛みついてきたが、それを避けると、先程と同様に陸の上で大口を開けて固まっている。
「話はついたのに、我の部下が失礼した。だがつかさ、おまえのペットは優秀だな。獣族領に来た時は北の街ケープパリーに来るといい。つかさならいつか来れるだろう。」
そう言ってシャチ人達は去って行った。
すんなりお帰り頂けておれは胸を撫で下ろした。
獣族領も確かに気にはなるが、今は他にやることがある。
ラパン達も森を抜けたようなので、みんなを召喚して海で遊んでもらう。
その間におれは製粉準備を進めた。




