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異世界と12の召喚獣  作者: ドンサン
魔族領の生活
2/68

危険を感じる初日

朝が来た。

大きなベッドの上で目が覚めると、立派な角を持った魔王が寝ている。寝返りもできないおれは、ただ上を見ている。


(夢ではなかったか。まだ実感はないなあ。)


魔王が寝ている間に少し試したいことがあった。

召喚魔法だ。まずはうさぎをもう一度召喚してみる。


(うさぎ、カモーン!)


側にある台の上に魔方陣が光り、小さな白うさぎが現れた。うさぎは魔王を見て怯えている。


(うさぎさんや、魔王は今いいから私の質問に答えてくれるかな?)


うさぎは静かに頷く。


(うさぎさんお話しできる?)


首を横にふられた。

これはまずい。質問には答えてくれるが話せないとなると、問い方を考えなければ。っていうか念話って一方通行なんかい。


(いつかはお話しできる?)


「キュ」


小さい声で返事が来た。肯定しているみたいだが、音が発せるなら言語として翻訳できないのか?

そもそも魔人は翻訳できていたのか?

うさぎの鳴き声を言葉だと思うことにしよう。

その前に大切なことを忘れていた。


(うさぎさん、なんて名前なの?)


「名前ないです。でも、欲しいです」


キターーー!!

うさぎ言語理解!

翻訳に成功した。鳴き声ではなくうさぎ語と思えば翻訳できるわけだ。これは大きな収穫だぞ。

名前をつけてやらんとだな。


(うさぎ、君の名前は今から【ラパン】でどうだ?)


「ありがとうございます。名前うれしいです。」


安直ではあるが、この間まで働いていたお店の名前だ。ありがちで捻りもないけど、思い出のある名前。側に置くには丁度よかった。

話せるならたくさん聞きたいことがある。

魔王が起きる前に聞いておこう。 


(ねぇ、ラパン。他の動物も召喚できるの?)


「できます。でも呼びかけが必要です。私だけ例外ですが、普通は呼び掛けてコストを支払う必要があります。碧様の場合、魔力をコストとして支払うことになります。」


(ほう。魔力ってどれだけあるの?)


「碧様の現在の魔力量は10です。魔力をたくさん使うと、魔力総量が増えます。減った魔力は時間で回復します。個人差がありますが、碧様は毎秒10%回復します。」


めっちゃくちゃ丁寧に話してくれるじゃん。翻訳なかったら キュ? ってしか聞こえんかった。

そうだ。 


(それと、おれこの世界で名前変える。今日からおれは【つかさ】。それでよろしくな、ラパン。)


神からの使者ならぬ司者。なんつってな

自分で言っておきながら意味わからん。


「分かりました。つかさ様。よろしくお願いします。」


やさしい卯だわ

こうしてうさぎとの話が一区切りした頃、魔王が起きた。

ラパンは今にも逃げそうに震えている。なんとかしなければ。

キュ。がいけるなら、おれの赤ちゃん語も訳せるだろ、


「あ、あーうー」


訳せなかった。しかも長くは喋れん。

だが、なにか伝わったのか魔王はうさぎとおれを抱え部屋を移動した。

念話なら伝わったのかな。次試してみよう。

お腹空いた。


魔王に連れられ広い部屋に着いた。

長方形のテーブルと椅子が5脚置かれている。一番奥の豪華な椅子に魔王は腰かけ、おれを抱えている。ラパンはテーブルの上で怯えている。

少し沈黙の時間が続いていると、ドアが開き人が入ってきた。空いている椅子に4人が座り、早々に1人の男が口を開く。


「パトラ、その子どもとうさぎはなんだ」


まあそうなるよね。

男は魔王に聞いた。

だがおれは、そんなことより腹が減っている。


「昨日ヒューマンの子どもを拾った。うさぎは朝起きたらこの赤ん坊と一緒にいた。」


「うさぎはまだしも、その赤子をどうするつもり?」


次は女の声だ。

産まれたての視力ではなにも見えないが、今は姿より腹が減ったことの方が問題だわ。


「私が育てる。」


もう無理だ。空腹の限界だ。

念話を使ってみよう。

(魔王さーん、お腹空きましたー。)


しーーん。。


使えねぇ。もういい!泣く

おれは全力で泣いた。


「あらあら、赤子が泣いてますけど。魔王になんとかできるのかしら。」


また別の女の声が聞こえたが、今はどうでもいい。ミルクをくれ。

おれが全力で泣いていると魔王が使用人を呼び、なにか伝えている。

これで、ひと安心。

ではなかった。


生肉のブロックが出された。


え?


赤ちゃんって生肉食べれるの?

歯がないよ?無理じゃない?

お肉が口に迫ってくる。微力ながら必死に抵抗してみた。

すると、魔王は魔法を使って肉を焼いた。


そういう問題じゃねぇ!!


無理無理無理無理。


そんなことをしていると、別の使用人がなにやら違うものを持ってきた。

コップと飲み物だ。

なんの飲み物かは知らんが肉よりはマシだ。


(ラパン、あのコップ哺乳瓶に変えれないかな)


テーブルで息を殺し、小さくなっていたうさぎにおれは頼んだ。

こっちは既に生死がかかってるんだよ。

ラパンは動くことなく、魔法でコップを哺乳瓶に変えてくれた。


魔王は不思議そうだったが、飲み物を哺乳瓶に移し、飲ませてくれた。


うまい。 生き返るぅ

なんか内側から力が湧いてくる感じがする。


「多くの生物は親からエサをもらう。ヒューマンが幼いときには、ミルクを飲ませるそうだぞ。パトラがんばれよ。」


そんな男の声が聞こえた。

ありがとう、男の人。

なんとか食事の問題は解決した。泣きつかれて、お腹は満たされ、おれはまた寝る。おれが眠りに落ちるその前にラパンは消えた。


ラパンはやっていけるんかな。

こうして問題が1つ解決して、朝寝をする。



目が覚めると魔王の寝室だった。


(ラパン、出てきて)


例のごとく、小さな白うさぎがでてくる。


(ラパンさんや、視界が悪いのをなんとかなりませんかな)


(分かりました。視覚強化の魔法をかけておきますね。つかさ様の魔力を毎秒10%ずつ消費します。少しの間、目を閉じていてください)


目を閉じると少し温かい感じがした。

たしか魔力は毎秒10%回復だから、実質0だな。

というか、念話が伝わるならうさぎ語理解必要なかったな。


(ねぇラパン。念話っておれ達しか使えないの?)


(そんなことはありません。恐らく、つかさ様からの受け入れ態勢が整ってないだけだと思われます。)


じゃあ今は使えないわけだ。

どうにか伝えれたら楽なんだけどな。

なんだよ、受け入れ態勢って。と、思うおれが間違っているのだろうか。


寝室のドアが開く音がした。

魔王が近くまできて、うさぎを肩に乗せ、おれを抱き抱えた。

よく見えるから分かる。角がやっぱすごいし、この魔王でかい。抱えられて見える景色が体感2mぐらいはある。


「外に出るぞ」


魔王と共に外に出ることになった。

魔王に抱っこされている。辺りを見回す。辺りが見回せる。丈夫な身体のオプションをつけていたおかげか、転生したての赤ちゃんのはずだが首や腰に問題ない。


城の外にあるグラウンドのような広い場所で、魔族達が戦っている。模擬戦のようだ。武器無しで殴り合っているのでケンカにも見える。


戦いを見ていた周りの一部が魔王に気づいた。


「「魔王様お疲れさまです」」


しっかり統率されている感じがした。

すると、一番偉そうな人が近づいてきた。魔王よりは小さいけど、この人も他の魔族よりでかい。


「プチ、こいつが大きくなったら稽古を頼むぞ。先の話ではあるがな」


「それまで生きていたらな」


このでかいの、プチって名前なの?

魔王よりは小さいけど大分でかいよ。

抱えられたおれと同じ目線で威圧感が怖い。

しかもおれ、あの魔族の殴り合いに参加予定なの大丈夫か?

不安だわ~。


そんなおれの気持ちに気づけるはずもなく、魔王は違う場所へ歩みを進めた。


同じ敷地内に別の館があり、中に入る。

たくさん部屋があるのを無視して2階の奥の部屋まで進んだ。

中には白衣を着用した、いかにも研究員っぽい女性がいた。


「魔王がわざわざ人の子と何か用事?サンプル提供とか?」


「こいつらの周知を兼ねた散歩だ。自衛ができない間、私無しでの接触は厳禁だからな。」


この白衣の人、危険人物なんだ。

できるだけ1人では会わないようにしよう。抱かれている間は大丈夫なんだろうけど。


研究員の女性は、別の人に呼ばれどこかへ行ってしまった。それと同時に魔王はまた別のところへ向かう。


城を出て、左側の門から街を出る。城下町ではたくさんの魔族が魔王に何か言っている。すごく慕われているようだ。魔王もそれに応えるようにファンサはバッチリ。


門をくぐり少し行った先の広い土地に、様々な動物が放牧されている場所に来た。

少し先にある建物からなにかがゆっくり飛んでくる。


「あらあら、魔王様ミルクですか?」


「定期的に城に送っておいてくれ。こいつの食事になるようだからな。」


「ヒューマンの子ですからね。成長が楽しみです。」


朝食のミルクを作ってくれた女神様だったみたいだ。

その節はありがとうございました!


「魔王様こちらを。ひとまず本日分でございます。」


また建物から人が飛んできて、魔王にケースを渡した。 ミルクだ


(ラパン、瓶を頼む)


おれの上に哺乳瓶が現れると、魔王はさっそくミルクを注いでくれた。

さっそく飲むと、その間に別れを済ませ次に行くみたいだった。女神様がいなくなると魔王の近くに魔方陣、その上から黒く大きなドラゴンが現れた。

魔王が背に乗ると、飛んだ。

急に高く飛ぶとビビってミルクが止まってしまう。


街を越え少し進むと、ドラゴンは地面に降りて消えていった。

小便ちびったわ。まぁオムツなんてなく、全身を気休め程度の布が巻かれているだけなんですけどね。


今度は魔法の演習場のようだ。

たくさんの魔法が飛び交っている。

1人の男がこっちにきた。


「どうした、パトラ。特別講師か?」


「こいつを育てるなら、みなに知っておいてもらわねばならんからな。メリアスもこいつに魔法を頼むぞ」


たぶんこの感じ朝の4人に会ってたんだな。

この人は側頭部から正面に向かって、角が生えている。


おれは手にあるミルクを思いだし残りを飲み進めた。その間になにやら話していたがミルクに勝るものなし。

しかもこのミルクうますぎるし、飲む度に体の中から何かを感じる。

ミルクを飲み終えるとまた、眠ってしまった。


起きてはミルク。飲んでは寝る。

赤ちゃんのおれにできることは、その繰り返しだけだった

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