ただいま
何事も無く魔族領に帰ってきた。
「先に城に戻るから、ゆっくり帰っていいぞ。」
パトラは召喚したドラゴンに乗って、足早に去っていった。
状況が理解できないまま、おれは1人取り残された。
頭の整理が済んだ時大変な事に気づく。
「シャティロンってどっち」
とりあえずドラゴンが向かった方向に進むことにする。
もちろんシュバルのバイクモードで、服はツナギ。アクセルをしっかり回して荒野を一気に駆け抜ける。
どれだけ走っただろうか。
数百キロはすすんだが、やっと森が見えてきた。
森の中は、道が整備されてないから馬モードで進む。他のみんなも召喚した。サージュ以外のみんなと森の中を進んでいく。なぜだか、サージュは断ることが多い気がする。
ねずみのスーリは牛のアステリオに乗って、ヘビのクテクはおれの首に巻き付いている。魚のビテスはおれの背中。シュバルはおれを乗せて、進む。先頭を虎のバインフーに乗ったうさぎのラパンと、鳥のモンシューが歩いている。
だいぶ仲間も増えて大所帯になってきた。
ゆっくり森を進んでいると、大きなイノシシが現れた。
もう昔のように、逃げる必要はない。
バインフーとモンシューが手際よく対応してくれたので、昼休憩をとることにした。
「ラパン、シャティロンまでどれぐらいかな」
おれはミルクを飲みながらラパンに聞いた。
さっきのイノシシは、仲良くみんなで食べてもらってる。
「このペースだと、3時間程で帰れると思います。」
以外とまだかかるみたいだから、みんなに提案をしてみた。
「みんな、このもりでつよくなろう」
モンスターを狩りながら、戦闘経験を積んで帰ろうと考えた。
グループを分けて自由に向かうことにした。
召喚獣とおれはお互いの位置を把握できるから、最終的におれの所に帰ってくるように。
「おそくなりすぎないようにね。それじゃレッツゴー!」
おれの合図でみんな好き好きに移動した。
一応3体で1組だから、仲良くやってくれれば問題はないと思う。
グループ1
おれ クテク ビテス
グループ2
バインフー モンシュー ラパン
グループ3
スーリ アステリオ シュバル
足が無くなるのは不便だが、まだ新メンバーの2人はベテランと一緒の方が、お互いが安心できる。
おれはクテクを首に巻いて、ビテスを背負って森を進む。一応動きやすいように着替えておく。見た目はジャージ、スキルは敏捷、頑丈、自動回避、体力増加、これだけあれば十分でしょう。
喉が渇けばミルクを飲んみながら、木の実が落ちていれば本に収めながら先に進んでいく。
「まものとあえなくて、すこしたいくつだなぁ」
なぜか森を散策し始めて、一度も魔物と遭遇していない。
他のメンバーに取られているにしても、さすがに0はおかしい。
そんなことを考えているとようやく見えた。かなり遠いけど正面、角が生えた鹿だ。
おれは鹿に向かって全力で走った。
木々を抜けて、刀を構えて、一刀両断!
終わった。
「これだけ?」
一太刀で終わってしまった。
鹿は逃げも、戦いもせず、首を切られその場に倒れた。
訳がわからないまま、鹿を本に収納しておれ達は先に進む。
しばらく歩いてまた正面に魔物が現れた。今度は大型の熊。
鹿の時と同様、猛ダッシュで距離を詰めた。さっきと違うのは刀を抜いてない事だ。
熊に近づくと異変に気づく。
熊の周りをうろついたり、触ってみたりするのだが、熊が動く様子はない。
おれが熊を見ながら考えていると、首にいたクテクが熊に噛みついた。
クテクが得意そうにこちらを見てくる。
その理由はすぐに分かった。
大きな熊が動かずそのまま倒れたのだ。
「クテク、おまえのどくか!すごいな」
「クーーン」
クテクはおよだを滴しながら、高い声で返事をした。
「たべていいよ」
クテクはうれしそうに片腕の一部を歯で噛みちぎって、丸飲みした。
片腕の残った部分をビテスの水槽に入れると、こっちも旨そうに食べているので、少し休憩をとることにした。
この熊、倒れたのはきっと毒だろう。だけどその前に固まっていたのはなんだったのか。
その時!
上から物音がした。見上げると規格外にでかい虫の足が見えた。
クテクとおれで見ていると、虫が飛びかかってきた。
いや、降ってきた。
さっきまでは動いていたのに、鹿と熊同様、今は全く動く気配がない。
この大きなカブトムシを本に収納して、おれ達の休憩は終わった。
クテクが上機嫌なのが伝わってくる。
もしかすると、魔物の動きが止まるのはクテクの能力かもしれない。
ラパンと合流したら確認をしてみよう。
順調に進んでいると、森の終わりが見えてきた。
他のメンバーはまだ出てきてないので、日没まで待つことにする。
少し待つとスーリ、アステリオ、シュバルのグループがでてきた。
「おつかれさま。まものいた?」
おれらの遭遇率が低かったから、シュバルに聞いてみた。
「モー。しっかりやってきやしたぜ。スーリは隠密向きでして、アステリオは気張ってやした。」
問題なかったみたいでなによりです。
日が沈みかけてきた頃、残りが帰ってきた。
「おそかったな」
「すみません。運搬に苦労しまして」
よく見るとバインフーがロープを咥えて荷車を引っ張っていた。
荷車には複数の大型魔物が無造作に乗せられている。
「バインフーとモンシューが持って帰ると聞かなかったので… すみません。」
「キュルキュル」
「グルルゥ」
2匹は得意気に胸を張っている。
今気がついたが、真っ白だったバインフーは、黒い模様が増えて二回り程大きくなっている。
おれはラパン達が持ってきた魔物を本に収納して、シャティロンへ向かう。
こうして無事につかさ一行は、城にたどり着くことができた。
長旅の疲れからだろう、つかさは魔王の寝室で気絶するように就寝した。