おれのヒーロー
本日は頑張って2話投稿しました!
赤ちゃんに巨大タコの足が直撃した。
アカリほどではないけど痛いし、さすがにこの数で攻撃されるとおれの身体が耐えられるのも時間の問題だろう。
だが、そんなことはどうでもいい。おれはこのままセカンドライフを終了するのだ。
足が離れ2撃目の攻撃がくる。
おれは全身の力を抜き、目をつむる。
バーーン!!
大きな音がしたのに痛くない。
目を開けるとシュバルが両足蹴りでパリィを成功させて、タコがノックバックしている。その間におれに体当たりしてきた。
「モーモー!」
不甲斐ない。
なんで召喚獣より先に諦めてしまったんだろうな。
シュバルがまだ戦う気でいるのに、主のおれがこんなんじゃ示しがつかんな。
おれはもう一度刀を抜いた。
「シュバル、リクドウ、もういっかいいくよ!」
「モー!」
2本以上の同時攻撃は回避、単体攻撃の時はシュバルがタコ足をパリィして、怯んでる隙に少しずつダメージを与えていく。
時間はかかるし体力はとっくに限界突破してるけど、もう諦めない。
シュバルの必死な姿に鼓舞されて、無理矢理体を動かす。
そうして、しばらくはタコパンチをなんとかさばいていた。
「はぁ、はぁ。そろそろ、うでもあがらん」
「モー…」
シュバルがその場に倒れてしまった。
仕方ないが、強制送還する。
夜が近づき薄暗くなってきた。
巨大タコからも疲労感は伝わってくるものの、海に帰る感じはない。
意識が朦朧としている中、次の攻撃がくる。
(やべぇ。回避が間に合わん)
パーーーン!!
今度はなんだ?
すごい破裂音がしたけど。
よく見ると、タコ足の1本がちぎれて暴れている。
「よくやった。後は任せろ」
それは懐かしい姿だった。
たった4日会ってないだけなのに、すごく久しぶりな感じがする。
「ぱとら…」
そこでおれは限界と安心感から意識が切れた。
ひとり旅 5日目
気が付くと知らない部屋の布団の上だった。
「目が覚めたみたいだな。飯でも行くか」
そうパトラが言ったので、昨日の食堂に行く事になった。
カラン、カラン
「いらっしゃい!好きなとこに…お座りください。」
昨日のおばちゃんが緊張しているのは、魔王がいるからだろう。
本日もカウンターに座るが、ウエイトレスのお姉さんも昨日の感じはどこへやら。
「定食2つ。」
パトラが注文をするとお姉さんは走って厨房に伝えに行った。
昨日は叫んでたのに。
料理が来た。今日のメインは白身のお魚。玄米と付け合わせがあり、やはり『和』って感じだった。
丈夫な身体のおかげで玄米も消化可能。食べ物に制限はないので、思う存分に楽しませてもらう。
いざ、実食!
相変わらずうまい。
お魚は塩焼きだが、身がふっくらして最高。米が白米なら文句無しだったな。
「うまいか?」
おれの食べっぷりに驚きながら、パトラが聞いてくる。
「めちゃうま」
それだけ伝えておれは食事に戻る。
温かい間に頂かなければ、作った人に失礼である。
ごちそうさまでした。
哺乳瓶を本から取り出し、デザートミルクタイム。
「本の様子が変わったな」
初日しか見てないのに、よく気が付いたな。そう変わったのである。
おれはここまでの道中のことを手短に話した。
ちなみに昨日のタコはパトラが倒したそうだが、そもそもパトラがここに来た理由は、噴水の魔力調整らしい。
ここにも定期的にくるそうだ。
「そろそろ帰るか。」
「もう?」
「森で1週間耐えてもらうつもりだったが、この短期間に自力で抜けたならもういいだろう。」
一緒に帰るってことみたいだけど、それはできない。
まだここに来たもう1つの目的が達成されていない。
「しおもってかえる」
「それなら好きにしろ。先に城に戻る」
待ってはくれんのかい。まあいいか。
パトラは街の門を出て、ドラゴンに乗って帰っていった。それを見送って街の中に戻る。
(ズルいな。 おれも塩をもらったらすぐ帰ろう)
「おーーい!つかさって言ったっけー?こっちこいよー!」
暑苦しい声の方を見てみるとハイテンション領主が両手を振っているので、片手で小さく手を振り返してお食事処に足を向けた。
すると叫びながらダッシュでこっちに向かってくる。
「無視するなんて、ひどいじゃないかー」
おれのところに着くと、すぐにおれを抱えて海へ向かって走った。
そう思ったのも束の間、トモンが待っている海に着いた。
「協力はする。欲しいものを言ってくれ」
マモンと比べてトモンは肌が青白く、元気もあまりない。
近くに魔人が数人見えるが、みんな青白くトモンと似た雰囲気を感じる。
森側の西は褐色ハイテンションで、海側の東は青白ローテンション、なのだろうな。
「しおがほしい。」
「『しお』ってなーに?おいしいの?」
マモン… こいつ うぜぇ。なんかうぜぇわ。
というか、塩知らんってどういうこと。料理には塩味が感じられておいしかったけど。
まあいいか、知らんのなら海から採取すればいいし。
「さもん、らぱん。みずをたくさんためるうけざらをよういして」
魔方陣からうさぎが出てきたけど、おれの知ってるラパンではなかった。
手乗りサイズの小さなうさぎだったはずなのに、大きくなって2足で立ってる。
そのうさぎはおれの想像した通りの浅い受け皿を用意してくれた。
「つかさ様、ありがとうございます。お陰様で存在進化しまして、称号を獲得しました。今後もよりお役に立てるようがんばります。」
存在進化とかするんだ。
ラパンってそんなに何かしたっけ?めでたいことのはずなのに、驚きすぎて喜べない。条件でもあるのかな。
聞いた方が早いか。
「なんで、しんかしたの?」
「つかさ様の経験が起因しております。つかさ様もレベルが上がって、新しく召喚獣の契約を行うことができます。」
おぉ!!戦闘であまり勝った記憶はないけど、レベルが上がったなら結果よし。
2人の領主を放置してるけど、このまま新しい召喚獣の契約をしちゃおう。
おれ個人が弱すぎるから、召喚獣を頼りにしていかねば。