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第1話 チトセ ボウカンシャ(傍観者)

 男子生徒が教室で右斜め前に座っている女生徒を数秒間だけ眺める。決して彼女に気付かれないように細心さいしんの注意を払いながらだ。それが彼の日課となっている。言わば彼はボウカンシャ(傍観者)だ。


 彼の名前はチトセで、早生まれの彼女の名前はチアキだ。彼らは高校生だ。


 彼らは会話をわしたことはない。と言えば、語弊ごへいがあるのかもしれない。彼女から事務的な言葉を交わしてくることはあった。それでも彼は嬉しかった。


 己に課したおきてみずから話しかけることを禁じている。破ってしまえば、明日にでも彼女と会えなくなってしまう気がするからだ。


 特に己に言い聞かせている掟がある。それは彼が自分から彼女に触れることだ。それをひたすら彼は守り続けている。


 彼女が早く彼の元から消えてしまわないかという極度の恐れからだ。彼女が、そうならない様にとの切に祈っている。必ず訪れてしまうその日を迎えるまで、一秒でも長く彼女の存在を感じ続けたい一心いっしんからだ。


 彼は移動教室や体育の授業、手洗い以外は椅子から離れることなく過ごしている。それは一秒でも長く彼女の存在を感じていたいからだ。


 彼には友人と呼べるような人間は、この世のどこにも存在しない。そういう場合はイジメられていると思われがちだが、決してそういう訳ではない。顔立ちは中性的で高身長だ。成績も上位層である。


 クラスメートに壁を作り拒絶する様なことはない。喋りかけられたら気さく受け答えする。なので、男女両方からの評判は悪くはない。


 入学当初は女生徒から人気があったが、二つの理由であっという間に急落していった。彼は自分が憧れの対象だったことにすら気づいてない。というか、ある一点を除いて興味が全くないのだ。それはチアキが18歳の誕生日を迎えられるかだ。


 帰りのホームルームの時間、高度が落ちてきた太陽の光が彼女に当たり、彼女の肩にはかからない黒髪を赤みがかった茶色に変える時が稀にある。その時の彼女の奥二重の目の横顔の表情は、うれいを帯びてるように見えことがある。その瞬間、彼は目を奪われるのだ。この時ばかりは、彼が必要以上に彼女を見ない為に課している掟の数秒ルールを破ってしまう。





 ホームルームが終り彼は教室を出る。チアキは先に友人と出て行った。彼は彼女の後を追うかのように校門まで来た。帰路は彼女と同じ方向だ。しかし、彼はえて逆の方へと歩き出す。彼は振り向く。そして彼の肩くらいの身長の彼女の後ろ姿を見る。彼女が横を向く。彼女は笑顔を浮かべ友人と楽しそうに話している。数秒後、彼は向き直り歩き出す。そして彼は少し遠回りして家へと帰る。





 数日後の夕暮れ時、彼はあるモノを廃工場まで追い詰めた。それと対峙する。


ばくについてもらいますよ。いい加減、もう終わりにしましょう」


 そう言い放った彼は、攻防の末にそのモノを確保する。といっても彼の一方的だった。彼の目の前には男性が倒れている。彼は男性の生存を確認する。どうやら無事のようだ。


「遅れました! すみません!!」


「かまわないさ。今、終わったとこさ」


「以後、気をつけます!!!」


「ああっ、彼を頼む」


「はっ!!!」


 チアキは相棒、いや腐れ縁の男にそう言うと現場を後にする。

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