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7.歓迎会 準備

  帰ってきてくれた皆の為に、

 ささやかながらも歓迎会を開く事になったので、

 侯爵邸内のパーティホールで会場を設営していた。


 私は、会場の隅に用意して貰ったテーブルに座り、

 優雅に紅茶を飲んでいる。

 私の横には目と口元を半月の形にした侍女長のマリーが、

 時折、ケケケと言いながら手にしたボードに何か書き込んでいる。


 怖いです。


 お父様に助けを求めたいが、

 料理長のボーノさんと料理を作りに厨房に行ってしまった。

 ボーノさんと料理の話しをしているお父様は、とてもとても楽しそうだった。

 私もそっちに行きたいです。


「マリー、貴方も座って紅茶を飲まない?」

「とんでもございませんお嬢様、

 侍女が当主と一緒に座って紅茶を飲むなんてありえません」


 マリーに毅然とした態度で断られてしまったので、

 いたたまれなくなった私は紅茶を一口飲んだ。

 先程からこれの繰り返しなので、

 紅茶を飲み過ぎてお腹が少しタポタポして来た。


「それにアイリーンお嬢様、

 今とても面白い喜劇を見ているので楽しくて仕方ありません。

 お金払っても良いくらいです」


 目の前ではあたふたとテーブルの準備や飾りなどに、

 四苦八苦している侍女達がいた。


 義母のエマがパーティ好きで毎月一回以上はパーティを開催していたので、

 私が手伝えば直ぐに終わるのだけど、

 マリーに黙って見てるように進言された。


 今回の会場設営の責任者は昨日までの侍女長なのだけど、

 今にも泣き出しそうな顔でよく分からない指示を出していた。


 今回は外部の貴族を招いている訳ではないので、

 本当に基本的な準備さえすれば良いのだ。

 だけど今までこの手の仕事は私に丸投げだったので、

 手順どころかそもそも設営に必要な小物類が何処にあるかすら知らないのだ。


 使用人達には、新しい役職を通達した。

 前侍女長は、下女待遇にまで落とされた。


 侍女技術専門学校を卒業しているので、通常であれば上級侍女が適切なのだけど、

 長年に渡り未成年の侯爵家後継者に虐待をしていたので、

 出る所に出れば極寒の鉄格子のついた離島に無期でバカンスが決定してしまう。


 更に言えば、一応子爵の三女だったので、

 侯爵家から訴えられたら恐ろしい額の賠償金が発生してしまう。


 当初文句を言っていた前侍女長は、

 その事実を坦々とマリーに聞かされ、

 真っ赤になって怒っていた顔が真っ青になり、

 最終的に真っ白に血の気が引いてしまった。


 ここを辞めようにも侯爵家で問題を出して紹介状も作って貰えない以上は、

 侍女としてどころか、貴族の妾や大手の商家に嫁ぐ事もままならない。

 三女なので実家に戻る事も出来ない。

 まさに行くも地獄戻るも地獄なのである。


 侍女は弱い立場で女性なので下心のある領主に仕えると、

 セクハラまがいの行為を強制される事もしばしばあった。

 昔は泣き寝入りするしか無かったが、

 全国侍女権威向上連合が結成されてからは、

 不当な待遇による脅し等はそうそう出来なくなったのだ。


 だけど今回は不当どころか明らかに侍女に問題があり、

 あまりにも悪質な行為なので侍女連に訴える事も出来ない。


 普通、時期当主になる令嬢に残飯食べさせるとかありえるの?

 

 まぁ私が当主になるなんて思ってもいなかったのだろう。

 聞いた話しによると彼女はお父様の二号さん候補だったみたいだ。

 お父様と義母には肉体関係が無くて、万が一にでも切られない様に、

 彼女はお色気担当として候補に上がっていたらしい。


 ちょっとお父様を今度問い詰めて見ましょうか。

 邸内にお手付きの娘がいると後々厄介だ。

 でも直接聞くのは怖いのでマリーに任せよう、そうしよう。

 実は二、三人ペロッといっちゃってますとか言われたら、

 心痛で寝込んでしまいそうだ。



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