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リーゼントの男はモヒカンの男に応えます。
「ま、まあ、そ、そういうことになるなあ?・・・」
「なんでオレたち、そんなことまで忘れちまってるんだ?・・・」
リーゼントの男は懐から小さな双眼鏡を取り出し、
「あの2人を直に見れば、何があったのか、きっと思い出すはずだ!」
モヒカンの男も小さな双眼鏡を取り出しました。
「ああ!」
2人が双眼鏡を向けた先は2人の少女、日向隊員と明石悠。
「さーて、どんな顔してるんやら、あの2人?・・・」
双眼鏡が日向隊員と明石悠の顔を捉えました。その瞬間、2人の頭部を何かが突き抜けました。
「うっ!?」
モヒカンの男は両手で頭を押さえ、突然うずくまりました。
「な、なんだよ、これ!? いてーっ!」
リーゼントの男はのたうち回ってます。
「うおーっ、いってーっ! 頭が割れそうにいってーっ!」
実はこの2人+啓一は公安7課に2つの催眠術をかけられてました。
1つは明石悠と日向愛に関するすべての記憶の消去。隊長が予測した通りの催眠術です。
もう1つは明石悠または日向愛の顔を見たら、その途端ひどい頭痛に襲われる。そう、たった今その2つ目の催眠術が発動したのです。
モヒカンの男とリーゼントの男は歩道橋を這いずります。
「くそーっ、いったい何がどうなってんだよう?・・・」
2人はなんとか階段を下り始めました。2人とも頭を抱えたままです。そのまま2人は姿を消しました。
さて、群衆に囲まれてる日向隊員と明石悠ですが、今日も警官に化けた橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員が警備することになってました。
が、思った以上の群衆・・・ マスコミやネット民が大量に押し寄せてしまい、畑違いの3人の手には負えなくなってしまいました。そこで地元の警官が代わりに警備することになったのです。
かなりの数の警官が2人をガードしてます。女の子2人のストリートライヴとは思えない異様な光景。ただ、これだけの警官がいないと2人は演奏できないのも確か。現にライヴが始まる前、話を聞かせろと大騒ぎしたネット民もいました。
群衆の中、ギターを弾いてる日向隊員。この姿がふつーの家屋の中に設置されたパソコンのモニターに大映しになってます。どうやらネット民の誰かがストリーミング中継をやってるようです。
日向隊員と明石悠の映像は、スマホでも見られてました。街角を歩く人、電車の座席に座ってる人、トイレの便器に坐ってる人・・・ もう日本中に2人の姿がばら撒かれてます。注目の的になってました。
明石悠は1億円以上恐喝されたうえに毎日レイプされてました。その事実は日本中に知れ渡ってます。どう考えても生配信はよくないのですが、日向隊員の考えは逆。
今明石悠の素性には価値がある。なら、これを利用してしまおう!
唯一反対しそうな人物といえば明石悠の父親ですが、彼は例の事件が露見した次の日も、我が娘を通学させてました。そっちの問題もないはず。
はたして日向隊員の考えは吉と出るか? 凶と出るか?
ストリーミング中継を見てる人の中には、こんな人もいました。
豪華な住宅。その中の一室。机に座ってパソコンのモニターを見てる女子がいます。顔を見ると、日向隊員や明石悠が通う中学校の生徒会長でした。
ちなみに、この時点ではまだ生徒会長の職はクビになってません。学校もいろいろと忙しいようです。
彼女が見てるパソコンのモニターにも、日向隊員と明石悠が映ってました。
生徒会長はマウスを操作しながらぽつり。
「ふっ、いい気なものね・・・」




