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面接の待合室で開始時間まで待っていると、開始直前で滑り込む様に一人の女性が入ってくる。
この世界では珍しい黒髪をたなびかせ、壁にもたれて息を整えている。
回復魔法でも掛けてやろうかと思ったら、一番最初に呼ばれたので、それができずに別室に行く事になった。
部屋に入ると5人の大人が椅子に座り待機していたが、5人以上の視線を感じる。
しかしやる事は一つ、質問された事にちゃんと対応するだけだ。
当たり障りのない質問の後、最後にと筆記での質問がくる。
「最後の問題なのだがね、あれはついこないだ発表された魔法論文の一部だ、最新の情報を身につけているか、それをどう思うかを問う問題だったのだがね、君は全く違う、いや、逆と言っていい事柄を書いていた。 理由を話してくれないか?」
ああ、あの問題か、論文自体はもちろん読んでいる。
というか知り合いが書いたもので意見を聞きたいと半無理やり送りつけてきた物だ。
しかし、俺のあるチート能力の一つがそれを否定したので、文書を送ったはずなのだが、それが届く前に発表されて驚いた記憶が新しい。
「問題はありません、あの論文は途中で勘違いから間違った答えになっているので、数日後には修正されると思います」
俺のその言葉に全員が苦笑いをする。
そして、そのまま面接は終わり俺は確実に落ちたなと、確信して学園を出た。
ーーー
面接が終わり、試験官達と学園長がある一室で話し合いが行われた。
「いやはや、今年の新任候補は優秀者ばかりですな」
「実技に2人採用するつもりでしたが、あの勘違い男はどうしましょうか、オールラウンダーは教師として向いてはいますが最後のがね」
「確かショウという輩か、間違った知識は生徒にも影響がでますぞ」
こうして話し合いの結果、ショウは不合格の印を押されそうになるが、その一室に慌てて入ってきた者が現れた。
「皆さん大変です! 試験にも出した論文が間違っていた事が分かりました!」
新聞を片手に部屋に入ってきた教員が試験官達にそれを広げて見せる。
それには論文をある者が盗み出して代わりに発表したと書かれた内容だったが、その論文は間違っていたらしく、書いた本人がその後に再発表したというものだった。
しかもその論文はショウが書いていた内容と酷似しており、試験官達はざわつきを隠せないでいた。
「貴様! この新聞はいつ発行された物だ!」
試験官の1人が新聞を持ってきた教師に問いただすと、その教師は横に首を振り答える。
「まだ世には出ていません。 発行前の物を入手しました。 私の知り合いが関係者なのでたまたま知る事となりまして」
再び試験官達は騒つくと、自然とある1人の合否書に目が行く。
会議をやり直しと言わんばかりに議論が飛び交い、学園長が提案を持ちかける。
「例の新しく作るクラスの担任に就任させるのはどうだ。 さすれば自ずと答えは出ましょうぞ」
その学園長の意見に試験官たち満場一致で帰結する。
そんな事が起きているとは知らずのショウは不合格だろうと腹を括っており、次の仕事を探そうとしていたのだった。