出会いとは、いつも予測できないもの。――4
「まーた、顔が強張ってるぞー、真」
そんな俺を見て、焔村さんが半眼になる。
「リラックスしろよ。お前の実力なら、すぐに大金稼いで焼き肉三昧できるようになるからよ」
どうやら焔村さんは、俺がまだ高級焼き肉に緊張していると思っているらしい。
「かもしれませんね」と愛想笑いを浮かべると、焔村さんは「おうよ!」と歯を見せて笑った。
「なにしろお前は、あの白姫が選んだ男なんだからな!」
「そうですねー。姫先輩、あたしたちのお見舞いに来るたびに勝地先輩のこと話してましたしねー」
四条さんが焔村さんに同意する。
俺は目をパチクリとさせて、隣で黙々と肉を食べている天原さんに尋ねた。
「そうなの、天原さん?」
「はい。勝地くんは憧れのひとですから話したくなるのですよ」
「い、いつも思うけど、そういうこと、よく平然と言えるよね!」
恥ずかしげもなく答えられて、俺の顔が熱を帯びる。
顔の火照りを鎮めようとお冷やを口に含んでいると、焔村さんがイタズラげに口角を上げた。
「で、白姫と真はどこまで進んでるんだ?」
「んぐぅっ!?」
突拍子もない質問をぶつけられたせいで、のみ込んだお冷やが気管に入り、俺はゲホゲホとむせる。
「ど、どうしてそんな話になるんですか!?」
「白姫が特定の人物と、まして異性とここまで親しくなったことなんてないからだよ。ぶっちゃけ付き合ってんの?」
「つつつ付き合ってません!」
クラスメイトにも付き合ってるって誤解されたけど、どうして俺と天原さんの仲はこんなにも勘違いされるんだ!!
慌てて否定しながら心のなかで叫んでいると、「ふーん」と口元を猫のそれみたいにしながら、焔村さんが天原さんに水を向けた。
「白姫はどう思ってるんだ? 真のこと」
「お慕いしてますよ」
答えながら、天原さんがふわりと微笑んだ。花咲くような微笑みに、俺の心臓が高鳴り、顔の熱がより一層高まる。
「ほうほうほう。これは時間の問題だなー」
「勝地先輩もまんざらじゃないみたいですしねー」
俺の反応を目にして、焔村さんと四条さんがニヨニヨと笑う。渡会さんも「あらあら」と微笑ましいものを見るように目を細め、篠崎さんも口端をかずかに上げていた。
女性は恋バナが大好きって聞いてたけど、本当みたいだね! 恥ずかしくてたまらないよ!
「とととところで皆さんは、俺と天原さんがパートナーになったこと、知ってますか?」
これ以上深掘りされたらたまらないので、俺は話を逸らす。
多分、話を逸らされたことはわかっているだろうけど、焔村さんは俺を弄るのをやめて頷いた。
「ああ、知ってるぞ」
「天原さんは、ヴァルキュリアのメンバーと、俺のパートナーを兼任することになるんですが、大丈夫ですか?」
「全然問題ない」
焔村さんが即答する。
話がこじれることも覚悟していた俺は、あまりにもあっさり認められて拍子抜けした。
ポカンとする俺に、焔村さんがからっとした笑顔を向ける。
「堅苦しく考える必要はないだろ。それぞれの都合を踏まえながら柔軟に行こうぜ? ただでさえ、ダンジョンの出現とモンスターの襲撃で、いままでできたことができなくなってるんだ。これ以上、自分たちで息苦しくしてどうするんだよ」
「わたしも娘の都合でダンジョン探索できない日があるけど、そういうときは融通を利かせてくれるの。自由なパーティーなのよぉ、ヴァルキュリアは」
渡会さんがおっとりと頬に手を当て、四条さんと篠崎さんも頷く。
メチャクチャなところはあるけれど、意外と焔村さんって懐が深いんだなあ。
つられて口元を緩めながら、俺は頭を下げた。
「ありがとうございます、焔村さん」
「いいっていいって。楽に行こうぜ」
相変わらず、焔村さんは明るく笑っていた。




