表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/65

仲間とは、尊敬の上に築かれる関係のこと。――12

 翌日の放課後。俺は鼻歌を奏でながら、校庭を外に向かって歩いていた。


 鼻歌を奏でたくなるのも無理はない。天原さんが、俺をBランク探索者に推薦(すいせん)してくれたのだから。


 天原さんが言うには――


Sランク探索者(わたし)が一緒にいたといえど、勝地くんはAランクダンジョンで、Dランク探索者ではあり得ないほどの活躍をしました。わたしが証人(しょうにん)となり探索者協会にそのことを伝えておきますので、二段階の昇格になりますが、Bランク探索者になれる可能性は充分にあるかと」


 ――とのことだ。


 Bランクに昇格できるかもしれないことはもちろん、Sランクである天原さんから認めてもらえたことも、たまらなく嬉しい。


 天原さんとは今日もダンジョン探索する約束をしている。楽しみだなあ。


 ウキウキ気分で歩きながら、ふと思った。


 バスタードにいた(ころ)は、ダンジョンに向かうのが億劫(おっくう)でならなかったのに、天原さんと一緒に探索するのは楽しみでしかたない。ダンジョン探索するのは同じなのに、ここまで気分が変わるんだから不思議だよね。


 そんなことを考えて俺は苦笑する。


 そのときだった。


随分(ずいぶん)とご機嫌(きげん)だなあ、勝地」


 背後から、忌々(いまいま)しげな声が聞こえたのは。


 せっかくいい気分だったのに、水を差されちゃったな。


 ひとつ溜息をついて、俺は振り返る。


「なにか用でもあるの? 五十嵐くん」


 そこにいたのは、五十嵐(いがらし)くん、宝条(ほうじょう)さん、赤井(あかい)くん、萩野(はぎの)さん――バスタードのメンバーたちだ。


 無愛想(ぶあいそう)な俺の態度に眉をひそめ、しかし、すぐに五十嵐くんは顔つきを変えて、嗜虐的(しぎゃくてき)口端(くちはし)をつり上げた。


「ちょっと(つら)貸せ。話があんだよ」


 ほかの三人もニヤニヤ笑いを浮かべている。


 面倒事(めんどうごと)の予感しかしなかった。





 俺が連れていかれたのは校舎裏(こうしゃうら)だった。


 明らかに不穏(ふおん)な空気がしていたが、周りの生徒たちに迷惑(めいわく)をかけたくなかったので、俺は黙ってついてきた。


「それで、話ってなに?」

「お前、最近活躍(かつやく)してるみてぇだなあ。聞いたぜ? Aランクダンジョンを攻略したそうじゃねぇか」


 尋ねる俺に、五十嵐くんがいまだにニヤニヤ笑いを()り付けながら言う。


 言葉では俺を(たた)えているけど、五十嵐くんの本心は真逆(まぎゃく)だろう。このひとが素直に俺を褒めるなんてあり得ない。明らかに俺を見下す態度をしていることだし。


「けどよ? お前がAランクダンジョンを攻略できるわけねぇよな? 役立たずでカスのお前なんかがよ」


 俺の予想は当たっていた。五十嵐くんが嘲笑(ちょうしょう)するように口端をつり上げ、俺を(けな)してくる。


 俺が眉をひそめると、五十嵐くんは獲物(えもの)をいたぶる(へび)みたいな目をしながら続けた。


「俺たちは知ってんだよ。お前の秘密をな」

「秘密?」

綺蘭(きらん)が見たんだよ。お前が天原と一緒にダンジョンへ向かうところを」


「なあ?」と五十嵐くんが振り返り、萩野さんが勝ち誇るような顔で頷く。


「つまりさー? カッツーがAランクダンジョンを攻略できたのって、天原さんがいたからでしょ? カッツーはなにもできないもんねー? 雑魚(ざこ)だもんねー?」

「そうそう。あんたはほかのやつに取り入るしか(のう)のない寄生虫(きせいちゅう)なんだから」


 萩野さんと宝条さんも、五十嵐くんと同じく俺をなじってきた。


 悪口を並べ立てるバスタードのメンバーたち。いままでの俺ならば、彼らを恐れて身をすくめることしかできなかっただろう。


 けど、なんでだろう? あれほど怖かった彼らが、いまは小者にしか見えない。


 (ののし)り続けるバスタードのメンバーたちを無味乾燥(むみかんそう)な気分で(なが)め、俺は気づいた。


 ああ、そうか。彼らが嫉妬(しっと)しているだけだからだ。


 五十嵐くんたちは、自分たちが追放した者が――俺が活躍しているのが許せないのだ。認められないのだ。だから、こんなふうに群がって、汚い言葉を浴びせて、マウントを取ろうとしているのだ。


 なんていうか、かわいそうなひとたちだな。


 (あき)れを通り越して(あわ)れな気持ちになる。そんな俺の内心(ないしん)に気づくことなく、五十嵐くんが醜悪(しゅうあく)(ゆが)めた顔を近づけてきた。


「そもそも、天原がお前ごときを相手にするはずがねえ。お前、天原の弱みでも握ってんだろ? 秘密をばらされたくなかったら教えろよ」


 五十嵐くんが汚い取引を持ちかけてくる。


 俺は即座に答えた。


「いやだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ