仲間とは、尊敬の上に築かれる関係のこと。――12
翌日の放課後。俺は鼻歌を奏でながら、校庭を外に向かって歩いていた。
鼻歌を奏でたくなるのも無理はない。天原さんが、俺をBランク探索者に推薦してくれたのだから。
天原さんが言うには――
「Sランク探索者が一緒にいたといえど、勝地くんはAランクダンジョンで、Dランク探索者ではあり得ないほどの活躍をしました。わたしが証人となり探索者協会にそのことを伝えておきますので、二段階の昇格になりますが、Bランク探索者になれる可能性は充分にあるかと」
――とのことだ。
Bランクに昇格できるかもしれないことはもちろん、Sランクである天原さんから認めてもらえたことも、たまらなく嬉しい。
天原さんとは今日もダンジョン探索する約束をしている。楽しみだなあ。
ウキウキ気分で歩きながら、ふと思った。
バスタードにいた頃は、ダンジョンに向かうのが億劫でならなかったのに、天原さんと一緒に探索するのは楽しみでしかたない。ダンジョン探索するのは同じなのに、ここまで気分が変わるんだから不思議だよね。
そんなことを考えて俺は苦笑する。
そのときだった。
「随分とご機嫌だなあ、勝地」
背後から、忌々しげな声が聞こえたのは。
せっかくいい気分だったのに、水を差されちゃったな。
ひとつ溜息をついて、俺は振り返る。
「なにか用でもあるの? 五十嵐くん」
そこにいたのは、五十嵐くん、宝条さん、赤井くん、萩野さん――バスタードのメンバーたちだ。
無愛想な俺の態度に眉をひそめ、しかし、すぐに五十嵐くんは顔つきを変えて、嗜虐的に口端をつり上げた。
「ちょっと面貸せ。話があんだよ」
ほかの三人もニヤニヤ笑いを浮かべている。
面倒事の予感しかしなかった。
俺が連れていかれたのは校舎裏だった。
明らかに不穏な空気がしていたが、周りの生徒たちに迷惑をかけたくなかったので、俺は黙ってついてきた。
「それで、話ってなに?」
「お前、最近活躍してるみてぇだなあ。聞いたぜ? Aランクダンジョンを攻略したそうじゃねぇか」
尋ねる俺に、五十嵐くんがいまだにニヤニヤ笑いを貼り付けながら言う。
言葉では俺を称えているけど、五十嵐くんの本心は真逆だろう。このひとが素直に俺を褒めるなんてあり得ない。明らかに俺を見下す態度をしていることだし。
「けどよ? お前がAランクダンジョンを攻略できるわけねぇよな? 役立たずでカスのお前なんかがよ」
俺の予想は当たっていた。五十嵐くんが嘲笑するように口端をつり上げ、俺を貶してくる。
俺が眉をひそめると、五十嵐くんは獲物をいたぶる蛇みたいな目をしながら続けた。
「俺たちは知ってんだよ。お前の秘密をな」
「秘密?」
「綺蘭が見たんだよ。お前が天原と一緒にダンジョンへ向かうところを」
「なあ?」と五十嵐くんが振り返り、萩野さんが勝ち誇るような顔で頷く。
「つまりさー? カッツーがAランクダンジョンを攻略できたのって、天原さんがいたからでしょ? カッツーはなにもできないもんねー? 雑魚だもんねー?」
「そうそう。あんたはほかのやつに取り入るしか能のない寄生虫なんだから」
萩野さんと宝条さんも、五十嵐くんと同じく俺をなじってきた。
悪口を並べ立てるバスタードのメンバーたち。いままでの俺ならば、彼らを恐れて身をすくめることしかできなかっただろう。
けど、なんでだろう? あれほど怖かった彼らが、いまは小者にしか見えない。
罵り続けるバスタードのメンバーたちを無味乾燥な気分で眺め、俺は気づいた。
ああ、そうか。彼らが嫉妬しているだけだからだ。
五十嵐くんたちは、自分たちが追放した者が――俺が活躍しているのが許せないのだ。認められないのだ。だから、こんなふうに群がって、汚い言葉を浴びせて、マウントを取ろうとしているのだ。
なんていうか、かわいそうなひとたちだな。
呆れを通り越して憐れな気持ちになる。そんな俺の内心に気づくことなく、五十嵐くんが醜悪に歪めた顔を近づけてきた。
「そもそも、天原がお前ごときを相手にするはずがねえ。お前、天原の弱みでも握ってんだろ? 秘密をばらされたくなかったら教えろよ」
五十嵐くんが汚い取引を持ちかけてくる。
俺は即座に答えた。
「いやだ」




