表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/65

仲間とは、尊敬の上に築かれる関係のこと。――11

「……へ?」


 予想外の提案に、俺は目を点にする。


「えっと……ヴァルキュリアの再建まで時間がかかるから、俺に代わりを務めてほしいってこと?」


 天原さんが首を横に振る。


 白銀(はくぎん)の髪が舞い、陽光を浴びて(きら)めいた。


「いえ。もちろんわたしは、いままで通りヴァルキュリアに所属しますし、再建(さいけん)も目指します。ただ、わたし個人のお願いとして、勝地くんと一緒にダンジョン探索をしていきたいのです」


 サファイアの瞳が、真剣な色を(たた)えて俺を見つめる。


「わたしは、あなたとパートナーになりたいのです」


『パートナー』という単語にドキリとしながら、俺は尋ねた。


「俺でいいの? 俺のステータスは最弱だよ?」

「わたしは言いましたよ? 『勝地くんには、ステータスを凌駕(りょうが)する()()()があるように思える』と」


 天原さんが、俺と協力関係を結んだ日に口にした言葉を持ち出す。


「わたしの予想は当たっていました。勝地くんの実力はステータスでは(はか)れません。客観的に判定しても、勝地くんはわたしと並ぶ実力者です」

「そ、そこまでかな? とても天原さんには(かな)わないと思うけど……」

「自分で自分のことはわからないものですよ」


 嬉しさとくすぐったさと戸惑(とまど)いを同時に感じる俺に、天原さんは柔らかく微笑む。


 姿勢を正し、天原さんが深く腰を折った。


「勝地くん。どうか、わたしのパートナーになってください」


 白銀の髪がさらりと流れるのを見ながら、俺は今日の探索を振り返る。


 ――わたしは勝地くんを守ります。盾役の誇りに懸けて、モンスターには指一本触れさせません。


 確固(かっこ)たる決意とともに、天原さんは約束してくれた。


 ――カードにこのような使い道があるなんて知りませんでした。それを編み出した勝地くんはスゴいです。


 温かい微笑みで、天原さんは俺を認めてくれた。


 ――わたしが言った『子どもっぽい』は『イキイキしている』という意味です。少なくともわたしは、カードに夢中になっている勝地くんが好きですよ。


 変な勘違いをしそうになったこともあったけど。


 ――やったね、天原さん!

 ――はい。お疲れ様でした。


 天原さんとのダンジョン探索は――


「――俺さ? 誰かとダンジョン探索するの、楽しいって感じたことがなかったんだ」


 俺は呟くように打ち明ける。


 天原さんが顔を上げる。どこか戸惑ったような表情をしていた。


「なにか(いや)なことがあったのですか?」

「そんなところ」


 肩をすくめ、俺は続ける。


「だから、これからはソロでダンジョンに挑んでいこうって考えてた。もう、あんな思いはしたくないから」


 だけど、


「天原さんとのダンジョン探索は、楽しかったんだ」


 天原さんが目を見開く。


 俺は天原さんに手を差し出した。


「だから、俺からもお願いするよ。俺のパートナーになってください」


 差し出された俺の手を見て、天原さんがパチパチとまばたきをする。


 やがて天原さんは、花弁(かべん)がほころぶように笑った。


「はい。よろしくお願いします」


 天原さんが俺の手をとる。


 天原さんの笑顔は、見とれてしまうくらい可憐(かれん)だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ