仲間とは、尊敬の上に築かれる関係のこと。――11
「……へ?」
予想外の提案に、俺は目を点にする。
「えっと……ヴァルキュリアの再建まで時間がかかるから、俺に代わりを務めてほしいってこと?」
天原さんが首を横に振る。
白銀の髪が舞い、陽光を浴びて煌めいた。
「いえ。もちろんわたしは、いままで通りヴァルキュリアに所属しますし、再建も目指します。ただ、わたし個人のお願いとして、勝地くんと一緒にダンジョン探索をしていきたいのです」
サファイアの瞳が、真剣な色を湛えて俺を見つめる。
「わたしは、あなたとパートナーになりたいのです」
『パートナー』という単語にドキリとしながら、俺は尋ねた。
「俺でいいの? 俺のステータスは最弱だよ?」
「わたしは言いましたよ? 『勝地くんには、ステータスを凌駕するなにかがあるように思える』と」
天原さんが、俺と協力関係を結んだ日に口にした言葉を持ち出す。
「わたしの予想は当たっていました。勝地くんの実力はステータスでは測れません。客観的に判定しても、勝地くんはわたしと並ぶ実力者です」
「そ、そこまでかな? とても天原さんには敵わないと思うけど……」
「自分で自分のことはわからないものですよ」
嬉しさとくすぐったさと戸惑いを同時に感じる俺に、天原さんは柔らかく微笑む。
姿勢を正し、天原さんが深く腰を折った。
「勝地くん。どうか、わたしのパートナーになってください」
白銀の髪がさらりと流れるのを見ながら、俺は今日の探索を振り返る。
――わたしは勝地くんを守ります。盾役の誇りに懸けて、モンスターには指一本触れさせません。
確固たる決意とともに、天原さんは約束してくれた。
――カードにこのような使い道があるなんて知りませんでした。それを編み出した勝地くんはスゴいです。
温かい微笑みで、天原さんは俺を認めてくれた。
――わたしが言った『子どもっぽい』は『イキイキしている』という意味です。少なくともわたしは、カードに夢中になっている勝地くんが好きですよ。
変な勘違いをしそうになったこともあったけど。
――やったね、天原さん!
――はい。お疲れ様でした。
天原さんとのダンジョン探索は――
「――俺さ? 誰かとダンジョン探索するの、楽しいって感じたことがなかったんだ」
俺は呟くように打ち明ける。
天原さんが顔を上げる。どこか戸惑ったような表情をしていた。
「なにか嫌なことがあったのですか?」
「そんなところ」
肩をすくめ、俺は続ける。
「だから、これからはソロでダンジョンに挑んでいこうって考えてた。もう、あんな思いはしたくないから」
だけど、
「天原さんとのダンジョン探索は、楽しかったんだ」
天原さんが目を見開く。
俺は天原さんに手を差し出した。
「だから、俺からもお願いするよ。俺のパートナーになってください」
差し出された俺の手を見て、天原さんがパチパチとまばたきをする。
やがて天原さんは、花弁がほころぶように笑った。
「はい。よろしくお願いします」
天原さんが俺の手をとる。
天原さんの笑顔は、見とれてしまうくらい可憐だった。




