仲間とは、尊敬の上に築かれる関係のこと。――7
・連立式複製装置
カードタイプ:アイテム
消費MP:80
効果:連立式複製装置は、名前が異なるソーサリータイプのカードを1枚ずつ、最大2枚まで取り込める。連立式複製装置に取り込んだカードはなくならない。連立式複製装置に取り込まれたカードの一方と同じ名前のカードを使用したとき、連立式複製装置は取り込まれたカードのもう一方を発動する(この効果は連立式複製装置により使用されたカードでは誘発しない)。取り込まれたカードと違う名前のカードを使用したとき、連立式複製装置は消滅する。
隣からカードをのぞき込んできた天原さんが、眉をひそめる。
「なにやらややこしい説明が書かれていますが、どういう意味なのですか?」
「ようするに、連立式複製装置にAとBってカードを取り込ませた場合、Aと同じ名前のカードを使ったときにBが自動的に発動するってこと。ただし、連立式複製装置を実体化させている限り、AとB以外のカードは使えなくなるんだ」
「変わったカードですね。これまで勝地くんが使ってきたカードと比べて」
天原さんの眉はいまだにひそめられたままだ。俺の説明を聞いてもピンとこなかったらしい。
たしかに、『相手を攻撃する』や『味方を強化する』と比べると、連立式複製装置の効果は複雑と言えるだろう。
だが、俺は連立式複製装置に興味津々だった。
なぜならば、連立式複製装置に取り込んだカードはなくならないから――『一度の戦闘で、同じ名前のカードは四枚しか使用できない』というルールを破壊するカードだから。
そして、ルールを破壊するカードは悪用しやすい。カードをコンボで用いる俺にとって、うってつけのカードなのだ。
素晴らしいカードが手に入った。さて、どう活用しようかな?
鼻歌を奏でたい気分で頭を回転させる。
連立式複製装置の使い道を模索していると、不意に、天原さんがクスクスと笑い声を漏らした。
「どうしたの、天原さん?」
「いえ、勝地くんがあまりにも瞳を輝かせていたものですから。本当にカードがお好きなのですね」
天原さんに指摘されて、俺はハッとする。
う、うわあ! 恥ずかしい! カードに夢中になりすぎてた!
急速に襲ってくる羞恥心。頬がカアッと熱を帯びる。
「ご、ごめんね、天原さん! 子どもっぽかったよね!」
「はい。とても子どもっぽかったです」
「その通りだけど、できれば否定してほしかった!」
天原さんが迷いなく頷き、俺は頭を抱える。漫画ならば『ガーン!』という擬音が描かれていることだろう。
『穴があったら入りたい』ってこういう心境なんだろうなあ。うっかり泣いちゃいそうなくらい恥ずかしいよ。
がっくりと肩を落として溜息をつく。
そんな俺に、天原さんが不思議そうな声色で尋ねてきた。
「どうして落ち込まれるのですか?」
「いや、子どもっぽいところを見られて恥ずかしいといいますか、いますぐ消えてなくなりたいといいますか……」
天原さんはなおも不思議そうに小首を傾げ、やがて、ポン、と手を打った。
「なるほど。勝地くんは、『子どもっぽい』を悪いことと捉えているのですね?」
「え? 違うの?」
聞き返すと、「はい」と天原さんが頭を縦に揺らす。
「わたしが言った『子どもっぽい』は『イキイキしている』という意味です。少なくともわたしは、カードに夢中になっている勝地くんが好きですよ」
「へぁっ!?」
変な声が漏れた。
いいいいま、天原さんはなんて言った!? 好き!? 好きって言ったのか!? 俺を!?
瞬間湯沸かし器みたいに頭が茹だる。
脳みそがオーバーヒートするなか、俺は必死で自分に言い聞かせた。
いやいやいやいや! そういう意味じゃないって! 『Love』じゃないって! いまの話の流れだと『Like』の『好き』に決まってるって! なに動揺してるんだ、俺は! 天原さんは褒めてくれただけだよ! 勘違いしたら気持ち悪いって!
頭ではわかっている。天原さんは、純粋に俺を褒めただけということくらい。
それでも、彼女いない歴=年齢の俺にとって、家族以外の女性から『好き』と言われたのははじめてで、うろたえずにはいられなかった。
俺はますます顔を熱くして、プルプルと身悶える。
「勝地くん? 具合でも悪いのですか?」
そんな俺を無垢な目で見ながら、天原さんがまたしても小首を傾げた。




