仲間とは、尊敬の上に築かれる関係のこと。――4
「魔力ブースト、発動!」
まずはいつも通り、MPを得るカードを使用する。枚数は四枚。
背後にいる天原さんが、「カード?」と訝しんだ。カードはゴミアイテム扱いされているのだから自然な反応だろう。
MPを得た俺は、一体のクリーチャーを喚び出す。
「『スパークリングキャット』、召喚!」
カードが消滅して、赤い毛色をした、シャム猫みたいなクリーチャーが現れる。その体は帯電しており、パチパチと火花を発生させていた。
こいつが今回の主役だ。
・スパークリングキャット
カードタイプ:クリーチャー
消費MP:30
【ステータス】
HP:22/22
MP:8/8
攻撃力:6
防御力:4
魔法力:7
魔法耐性:4
敏捷性:9
精密性:8
【スキル】
雷魔法:雷属性の魔法を扱える。
臨界点突破:スパークリングキャットを対象として使用するカードの、消費MPを0にする。このスキルは、スパークリングキャットを対象に15枚以上のカードを使用している場合に限り、1回のみ発動できる。
物理・魔法ともに攻撃性能が高く、防御性能が低い。敏捷性と精密性の高さも踏まえると、軽戦士と魔法使いの特徴を併せ持っていると言える。
しかし、カードから喚び出されたということで、やはり総合的なステータスは低い。Eランクダンジョンのモンスターにすら負けるだろう。
いまのところは、だけどね。
心のなかで呟き、俺はさらに一八枚のカードを実体化させた。
「『力の加護』、発動!」
そのうちの三枚を一度に使用する。同じ名前のカードだ。
・力の加護
カードタイプ:ソーサリー
消費MP:5
効果:クリーチャー1体の攻撃力を2上げる。
ステータス上昇効果――いわゆるバフ。
スパークリングキャットの体が、三回、赤いオーラに包まれて、攻撃力が6上げられた。
それでも、この程度の強化では雀の涙。グリーントロールにはとてもじゃないが敵わない。
大丈夫。いまはそれでいい。これは布石なのだから。
俺は残りの一五枚も使用する。
「『守りの加護』、『叡智の加護』、『精神の加護』、『疾風の加護』、『匠の加護』、発動!」
いずれも力の加護と同じく、バフ系統のカードだ。
・守りの加護
カードタイプ:ソーサリー
消費MP:5
効果:クリーチャー1体の防御力を2上げる。
・叡智の加護
カードタイプ:ソーサリー
消費MP:5
効果:クリーチャー1体の魔法力を2上げる。
・精神の加護
カードタイプ:ソーサリー
消費MP:5
効果:クリーチャー1体の魔法耐性を2上げる。
・疾風の加護
カードタイプ:ソーサリー
消費MP:5
効果:クリーチャー1体の敏捷性を2上げる。
・匠の加護
カードタイプ:ソーサリー
消費MP:5
効果:クリーチャー1体の精密性を2上げる。
黄色、青、緑、水色、オレンジの光が、三回ずつスパークリングキャットを包み、そのたびにスパークリングキャットのステータスが上昇する。
HP・MP以外の全ステータスが上昇したが、それでもまだ、スパークリングキャットはグリーントロールの足元にも及ばない。
そのグリーントロールはどんどん近づいてくる。もはや、その表情がわかる位置まで来ていた。
『ウウォオオオオオオ!』
グリーントロールの右腕が、ボコンッ! と一回り大きく膨らんだ。あれがグリーントロールのスキル『パンプアップ』の効果なのだろう。
俺とスパークリングキャットをまとめて叩き潰そうと、グリーントロールが巨大化した右腕を振りかぶる。
「勝地くん!」
危険と見なしたのか、天原さんが俺に駆け寄ろうと地面を蹴る。
「大丈夫だよ、天原さん」
慌てることなく、俺は一枚のカードを実体化させた。
「次で決まりだから」




