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人情とは、苦悩を知る者が持ち得るもの。――2

 夕方になり、探索者協会に戻ってきた俺は、現場の職員から受け取った攻略証明書を柳さんに渡した。


 攻略証明書を確認した柳さんは、ニッコリ笑って封筒を取り出す。


「ダンジョン攻略おめでとうございます。こちらは報酬になります」

「ありがとうございます」


 柳さんから封筒を受け取り、中身を確認する。


 封筒には、Eランクダンジョンの攻略報酬よりも五割も多いお金が納められていた。


「こ、こんなにもらえるんですか!?」


 今日はじめてDランクダンジョンに挑戦した俺は、目を丸くする。


 驚く俺に、柳さんがクスクスと笑みを漏らした。


「ランクが上がれば危険度も上がりますからね。命を賭けていただいているのですから、相応の対価を払わなければ罰が当たりますよ」

「なるほど。言われてみればたしかに」

「勝地さんは、ダンジョンという人類の脅威(きょうい)を、命懸(いのちが)けで打ち破ってくださったのです。どうぞ、胸を張ってお受け取りください」


 柳さんの穏やかな言葉が染みこんでくる。


 ジン、と胸が熱くなるのを感じながら、俺はもう一度「ありがとうございます」とお礼を口にした。


「Dランクダンジョンさえも攻略してしまうなんて、本当に大活躍(だいかつやく)ですね。もしよろしければ、勝地さんをDランク探索者に推薦(すいせん)させていただきたいと思うのですが、大丈夫でしょうか?」


 続く柳さんの提案に、俺は「えっ!?」と驚きの()を上げる。


「いいんですか!?」


 俺が身を乗り出すと、「はい」と柳さんは目を細めた。


 ダンジョンと探索者は、SS~Eまでの七段階にランク分けされている。その判別基準は、ダンジョンなら攻略難易度、探索者なら、実力と実績だ。


 探索者は、自分のランク以下、またはひとつ上のランクのダンジョンに挑戦することができる。


 つまり、ランクが上がれば、挑戦できるダンジョンの数が増えるわけだ。


 高ランクのダンジョンほど攻略報酬が上がる。報酬が上がれば、母さんや優衣の生活が楽になる。


 出現するアイテムも、高ランクのダンジョンほど強力だ。もちろんカードも同じで、高ランク(たい)で手に入るカードほど、(俺から見たら)優秀な効果を持っている。


 収入が増え、カードの質と量も向上する。ランク昇格の話は、まさに願ったり叶ったりだ。この提案を断るなんてありえない。


 一も二もなく、俺は柳さんの提案に飛びついた。


「ありがとうございます、柳さん! 是非(ぜひ)ともお願いします!」

「いえいえ。探索者協会としても、活躍している勝地さんをEランクのままにしておくのはもったいないですからね」


 柳さんがパチリとウインクをする。意外とお茶目(ちゃめ)仕草(しぐさ)もするようだ。


「それにしても、Eランク五つ、Dランクひとつ、計六つのダンジョンを半月で攻略。しかも、いずれもソロでの挑戦なんて、とんでもない成果です。失礼ながら、勝地さんのステータスでこれだけの実績を()げられるとは予想だにしませんでした。反省しないといけませんね」


 柳さんが眉を下げて苦笑する。


 しかたないだろう。俺のステータスは最弱クラス。Eランクダンジョンへの挑戦すら危ぶまれるくらいなのだから。


 実を言うと、一番驚いてるのは俺なんだよね。まさか、カードがここまで優秀だなんて思いもしなかったし。


 とはいえ、『カードを使ってみたら想像以上に強かったんです』と言っても信じてはもらえないだろう。なにしろカードはゴミアイテム。ガチャでたとえれば、(ノーマル)以下のハズレアイテムなのだから。


 だから俺は、頬をポリポリと()きながら話を(にご)した。


「秘密兵器を見つけたんです。そのおかげですよ」

「秘密兵器?」


 柳さんが小首を(かし)げる。


 年上のお姉さんにしては可愛らしい仕草だった。

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