表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/65

変化とは、常に勇気を必要とするもの。――9

 その後も俺は、モンスターを倒しながらダンジョンを進んだ。


 コンボで使ったときのカードの効果は(すさ)まじく、遭遇(そうぐう)したモンスターはすべて呆気(あっけ)ないくらい簡単に倒すことができた。いままで怖がっていたのが馬鹿(ばか)らしくなるくらいの快勝っぷりだ。


 そして二時間後、ついに俺は、ロードモンスターがいる最奥(さいおう)にたどり着いた。


 Eランクダンジョンの最奥は、円形の広間になっていた。


 ここにいるロードモンスターを倒せばダンジョン攻略は成功。ゲートをくぐって外に出れば、めでたくダンジョンは消滅することになる。


 広間の入り口からそっと顔を覗かせて、俺はロードモンスターを確認する。


 広間の中央にいたのは、ずんぐりむっくりとした、二メートルほどの巨体だ。


 豚に似た顔。鈍色(にびいろ)の肌。手にしているのは巨大な鉄槌(てっつい)


 俺は顔をしかめた。


「『ハンマーオーク』か……厄介(やっかい)な相手だな」


 ハンマーオークは、攻撃力と防御力が高く、魔法力、魔法耐性、敏捷性が低い、いわゆる重戦士系のモンスターだ。


 魔法耐性が低いため魔法で大ダメージを与えられるわけだが、とあるスキルを持っているため、ハンマーオークに魔法を放つ際は細心(さいしん)の注意を払わなくてはならない。


 ハンマーオークが持っているスキルは『打ち返し』。その効果は、『鉄槌で殴った魔法を跳ね返す』というもの。


 弱点だからと不用意に魔法を放つと、打ち返しで反射されて、逆にこちらが痛手(いたで)()う羽目になるわけだ。


 そのため、ハンマーオークとの戦闘において大切なのは、『いかにして打ち返しを使えない状況を作り、魔法を当てるか』になる。


 前衛(ぜんえい)の物理アタッカーが打ち返しを使えない状況を作り、後衛(こうえい)の魔法アタッカーが魔法で仕留(しと)めるという流れが、ハンマーオークと戦う際のセオリーだ。


 しかし、ソロでダンジョンに挑んだ俺には、打ち返しを使えない状況を作ってくれる仲間がいない。


 だからこそ厄介だった。


「こっちの必殺技は怨恨破だけど、あれは魔法攻撃だ。迂闊(うかつ)に放ったら打ち返しで反射されてしまう。そうなると目も当てられない。一瞬でこちらがおだぶつだ」


 なにか(さく)を練らないといけない。


 俺はストレージを開き、所持しているカードを確認する。


 ひととおり眺め、俺は一枚のカードに目を留めた。


「……今回はこいつに頼るか」


 戦いの(じく)となるカードを決めた俺は、頭のなかで勝利への道筋を組み立てる。


 しばらく考えてから、俺は「うん」と頷いた。


 行ける。この作戦なら行けるはずだ。


 あとは覚悟を決めるだけ。


 俺は合掌(がっしょう)と深呼吸をして、ルーティンで緊張を鎮める。


 行くぞ、勝地真。人生を変えるための、一世一代(いっせいちだい)の大勝負だ!


 心のなかで自分を励まし、俺は最奥の広間に踏み入った。


 ハンマーオークが俺の姿を捉える。


『グウゥオオオオオオオオオオオオオオッ!!』


 鉄槌を肩に(かつ)ぎ、ハンマーオークが()えた。


 ハンマーオークの咆哮(ほうこう)が広間を震撼(しんかん)させる。腹の底にまで響いてくる。


 恐怖ですくみそうになるも、俺は歯を食いしばって耐えた。


 (ひる)むな! 戦え! 勝つぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ