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調査7 全力女!

「家だ! 一軒家が欲しい!! アイラブ個室!!」


 俺はギルドの酒場で心の底から叫んだ。リサが耳を塞ぎながらだるそうに俺を見る。


「るっせえなぁ.. どうしたってんだ..つーかそんな金どこにあんだよ」


 俺は優雅に茶をしばいているストレガを見ながらリサの耳元で。


「だってだってあの子やばいんだもん超が付くほどのヤンデレなんだもん」

「年頃の女なんてそんなもんだろ?」


 いやいやそんな訳ない! 俺はストレガの本性の片鱗を見てしまったんだ..あの子の隣で寝てたら命がいくつあっても足りない! 何がなんでも一軒家を!


「このクエストを頼む!!」


 その時、クエストカウンターの方からやけにでかい女の声が聞こえてくる。なにか受付嬢と揉めている様子だが朝から何なんだ一体..?


「こちらのクエストは定員が3名からとなっておりますので..単独での受注は出来ません..」

「なに?! 私は1人でも構わないぞ!!」

「ですから1人ではお受け出来ませんので..」


 長身で青髪ポニーテールの騎士のような出立ちのその女は声を張り上げて受付嬢と言い争っている。おいおい受付嬢困ってんじゃん..ああいうのは見ないふりをするに限る..


「ん? (チラッ)」


 やばい..! 今ちょっと目があった!! 俺は瞬時に目を逸らす。だが気のせいだろうか、女騎士はズカズカとこちらに来ているように見える。そして案の定、女騎士は俺の目の前で止まる。俺は下を向いたまま静止した。


「お前! ケンタだな! 噂は聞いているぞ! 魔人もどきと魔女を連れてギルドの転覆を目論んでいるとな!!」


 おいちょっと待て誰だ? そんな根も葉もない噂を流した馬鹿は! しかし当然ながら魔人もどきと言われたらあのお方が黙っていない。


「誰が魔人もどきだって? この青髪クソ女が..」


 ほらやっぱりね..女騎士はリサを睨み。


「なんだと?! お前しかいないだろ! デストロイ!!」

「てめぇ..表出やがれ!! 骨の髄まで破壊し尽くしてやっからよぉ!!」


 リサが怒鳴り散らかして女騎士の胸ぐらを掴んだ。俺はそんなリサをなだめるように肩をトンと叩き。


「まあ落ち着けよリサ..ていうかあなたは俺たちに何の用です? 突拍子もなく絡んできたけど友達いないんですか?」


 俺の一言でリサがクスっと笑う。女騎士は顔を赤くしながらも俺を見て。


「なっ..! そ..そんな事はない! だがしかし挨拶も無かったのは無礼だったな..私の名前はマックス!! 歳は24! ジョブはパラディンだ!! 冒険者ランクはCだ! モットーは常に全力! それから好きな食べ物は」

「あ、もう大丈夫です」


 俺はすごくぐいぐい来るマックスという女の自己紹介を遮った。しかしパラディンと言えば攻守ともに高めのステータスを持ったバランスタイプ。ランクも俺たちより高い..強いパーティなんだろうか..?


「それでマックスさん、要件は?」

「それなんだがな..一緒にクエストに行ってほしいんだ!」

「え?! どっか強いパーティにでも入っているんじゃないんですか?」

「いや! 1人だ!! 誰も私を入れてくれないからな! はっはっはっ! まあしかし! 私は1人でも全く問題ない!!」


 嘘だろこの人..1人でCランクまで行ったのか? というか待てよ..パラディンで尚且つ1人でクエストをこなせる程の人間が誰もパーティに入れてくれないって訳ありだろ絶対..


「でも1人でCランク上がれたならわざわざD級の俺たちと一緒に行く必要ないと思いますけど..」

「私のやりたいクエストの定員が3人以上じゃないと受けれないんだ!」


 だからさっき受付嬢と揉めていた訳か..


「おいケンタ! こんな奴に手貸せるかよ!!」


 その時、リサがマックスを睨み言った。そしてさっきからずっと黙っていたストレガが。


「私はケンタさんにお任せしますよ」

「ストレガ顔が笑ってないぞ..」


 二人は歓迎モードではない様子だが俺はぶっちゃけ強ければなんでも良いしパーティに誘うのもありだと思っている。しかしひとつだけ確認したい。


「ちなみにマックスさん住むとこは?」

「あるぞ!!」


 あれ以上宿が狭くなると色々困るのでこれだけは確認しておきたかった。でもリサとストレガは嫌そうだし俺が勝手に決めるのも良くないだろう。俺はリサとストレガに顔を寄せ小声で言った。


「とりあえず一緒にクエストに行ってあげないか? 実力はあるっぽいし、まともな人だったらパーティに誘ってもいいだろうしさ」


 リサとストレガはマックスを睨みながら答えた。


「あんなメガフォンみたいな声量のやつがまともな訳ねえじゃん..でもまあ報酬金貰えるしとりあえず行くくらいならいいけどさ」

「ケンタさんが言うなら構いませんよ? でもあの方やけにケンタさんに馴れ馴れしいですよね..いっそ呪い」

「それはだめな..じゃあまあとりあえずそういう感じで」


 という訳で俺たちはマックスと一緒にC級のクエストに行く事にした。クエスト内容はジャイアントトロール1頭の討伐なんだがこいつがかなりの強敵らしい。少なくともD級の俺たちが行くようなクエストでは無いそうだ。しかしまあ付いてきてくれるだけで構わないとの事なので俺は安全な所で身を潜めるとしよう。


「では冒険者マックスさん! とその他諸々、ご武運を!!」


 受付嬢も毎日冒険者を送り出すのがしんどいのは分かるけどその他諸々ってなんだ、仕事しろよ。


「いやぁすまないな!! 感謝する!!」


 目的地に向かう途中、マックスが無駄にうるさい声量で言った。やる気のない俺たちの頭にやたらと響く。


「困った時はお互い様ですよ!」


 俺はそれとなく適当に答える。そのまま先へ進んでいくと、巨人みたいな人影が何かを捕食しているのが見えた。俺はみんなに小さく叫ぶ。


「止まれ..! あいつじゃないか..?」


 気づいたリサとストレガも木陰に身を潜めた。俺たちは息を殺しながら様子を伺う。


「ここは慎重に行かないとな..バレたら即死だ..んでマックスさんはどんな作戦を..?」


 あれ? さっきまで隣に居たはずのマックスが居ない! どこ行った?! 恐れをなして逃げたのか?


「おい!! ジャイアントトロールだな!! 私はマックス! お前を倒す物だ!!」


 あいつ何してんの?! 馬鹿なの?! モンスターに自己紹介かます冒険者がどこにいんだよ! 言うまでもなく、ジャイアントトロールはマックスに気づくと高らかに雄叫びをあげマックス目掛けて突進した。


「受けてたとうじゃないか!! うぉぉぉ!!」


 マックスはジャイアントトロールに負けず劣らずの声量で立ち向かっていく。なんか誰もパーティに入れたくない気持ちが分かった気がする..


「はぁぁぁぁ! ライトニングセイ..! ぐはぁっ!!」


 ジャイアントトロールは持っていた電柱みたいな棍棒を振り回しなんらかの技を出そうとしていたマックスを薙ぎ飛ばした。


「くそっ..! やはり一筋縄ではいかないか!」


 マックスはそのまま岩壁にぶち当たる。流石に無茶だろ..俺はマックスに叫んだ。


「無理ですって! 大人しく退散しましょう!!」

「まだだ..! お前たちは遠くへ逃げててくれ!! 私は1人でも戦える!!」


 お言葉に甘えて俺たちはその場から退散する。しかし何故か足が進まない。俺は逃げる途中で足が止まった。


「おい、ケンタ? どうしたんだよ」


 立ち止まった俺を見てリサが言った。そうだよ、どうしたんだ俺..! とっとと逃げろよ! その時、ストレガが。


「ケンタさん! あの人やばいんじゃないですか..?」


 ストレガの指差す方に視線を向けると、マックスがトロールに足を掴まれ宙吊りになっていた。トロールはもう片方の手で持っていた棍棒をマックスに向けて振り回そうとしている。あーちくしょぉ!!


「リサ!! 頼む!!」

「ったく..はいよ..!!」


 俺の叫びにリサが鼻で笑いながらも答えた。そしてそのままトロール目掛けて突撃し、渾身の鉄槌でトロールが振り回していた棍棒をぶん殴った。その衝撃でトロールはマックスを掴んでいた腕を離した。俺は咄嗟に。


「自慢じゃねえけどな! 俺は1人じゃ何にも出来ねえ! ここに来た時だってそうだ..俺1人だったらとっくにモンスターの餌になってたよ! プライドなんて要らねえからこういう時は素直に力を貸してくださいって言えばいいんだよ! 俺はそうやって生きてきた!」


 なんかいい事言った気がしたけど全然そうでもない。なんなら声を大にして言うことではなかった。マックスは地に膝をつきながらこれまでの声量とは違い、小さな声で言った。


「..けてくれ..力を貸してほしい..」


 その言葉で俺は笑みをこぼす。そしてリサとストレガを見て。


「よーしお前ら! 今日はジャイアントトロール倒して宴だ!!」

「っしゃあ! シャンパン開けるぞ!!」

「頑張ります!!」


 リサとストレガも声を上げて士気を高める。そしてマックスは立ち上がってトロールに剣を構え。


「さあ!! 今度は私たちが相手だ!!」


 





 







 





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