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調査6 夜のこと

「ケンタさん! 私も一緒に宿に泊まらせていただいてもよろしいでしょうか!!」


 俺たちがギルド内の酒場で腹ごしらえをしていると突然ストレガが口を開いた。


「でも俺らの宿狭いからやめた方がいいと思うけど..?」

「そーなんだよぉ! 2人が限界ってとこだぜ? つーかストレガは住むとこどうしてんだ?」


 リサがジャッキ片手にあたりめをしゃぶりながらストレガに聞いた。確かにそこは気になるところだ。


「西の都からいろんな街を経てここに来たので..住むとこはありません..1人でクエストに行く勇気もなくてお金もないですから..とりあえず今は街外れにある廃工場でひっそり暮らしています」


 ストレガは下を俯きながら恥ずかしそうに言った。しかしまだ10代の健気な女の子が廃工場に寝泊まりなんて悲しすぎるじゃないか! リサも同情したのかあたりめで俺を指して。


「そりゃあ可哀想だなぁ..ケンタ、一緒に住ませてやろうぜ? 同じパーティーなんだしよ」

「そうしてやりたいのは山々だけど俺らの宿狭いじゃん?」

「んなの、お前が外で寝ればいいだろ?」


 この野郎! 俺の扱いどうなってんだよ! ちょっと胸でかいからって調子に乗りやがって!


「お前そんな事言うなら美肌ポーションも小顔ローラーも全部売っ払ってもらうぞ」

「なっ..! それは卑怯だろ!」


 すると、ストレガが顔を赤くしながら恥ずかしそうに俺をチラッと見て。


「わ..私はケンタさんと同じ部屋でも問題ありませんけど..」


 おいおいなんだ今の! 美少女の恥じらい! この魔法はS級レベルに匹敵するだろ!


「マジで言ってんのか?! こいつがどんな奴か知ってっか? この前なんて私が寝てる間に胸触ろうとしてき」


 俺はリサの口元に人差し指を一本立てて。


「人聞きの悪いこと言うなよ、ジェントルメンの俺がそんな事するわけないだろ?」


 リサは目を細めて俺を睨む。だがそんなの知らん! だって一緒に暮らしているのは女とは言えリサだ! 確かにこの前寝ている時に胸くらい揉んでみようかとか髪の毛の匂い嗅いでやろうとか思ったさ! でも無理だった! なんていうかもうこいつには発情できない! 寝相も悪いしイビキもうるさい!そうと分かった以上頼りの綱はストレガしかいないんだ!



 そして夜、宿に帰った俺たちは風呂を済ませ寝支度をしていた。もちろんストレガも一緒だ。なんかすごくそわそわする。奮発して今回はいつもの宿よりも少し大きめの部屋を借りた。あとは心の準備をするだけ..


「おいケンタ! 風呂上がりのストレガをやらしい目で見てただろ! 妙な事考えてんじゃねえだろうな?」


 リサがテーブルに腰掛け晩酌をしながら言った。お前に分かってたまるかこの気持ちが! 可愛い女の子と一つ屋根の下で(よこしま)な気持ちにならない男がいるわけないだろ!


「やめとけよリサ、この子は未成年だぞ? さすがの俺だって場を弁えてるっての」


 俺は冷静を装いリサに言った。しかし未成年なんだよな、下手なことすればお縄になるよな?


「未成年? 何を仰っているんですか? 私はもう18なので立派な成人ですよ?」


 するとストレガがクスッと笑いながら言った。お? どういうこと? 気になった俺は。


「何歳から成人なの?」

「16歳じゃないですかぁw からかわないで下さいよぉw」

「あは、あはは! そうだよねぇ?! 16に決まってるよね?! ストレガは立派な大人なんだよね!」


 なんだ..異世界って最高じゃん! ありがとう異世界転移装置! ここに来て初めて感謝する事になるとは!


「じゃあとりあえず、寝よっか!」

「はい! おやすみなさい!」

「なんだもう寝るのかぁ? じゃあ私も寝よ」


 俺は率先して布団に潜り込む、つられて2人も布団に入り始めた。隣からシャンプーのいい匂いと共にストレガの寝息が聞こえてくる、距離はかなり近い。


「ケンタさん..起きてますか?」


 その時、隣のストレガが小声で俺を呼んだ。おいおいこの展開はもうそういう展開だろう。俺は心臓をバクバクさせながらも平然を装いキメ顔でストレガを見つめ。


「眠れないのかい子猫ちゃん? 良かったら、俺の腕空いてるよ?」

「よ..よろしいんですか..?」


 そしてストレガが俺の腕元に寄ってくる。マジで来たよ?! もしかしてこの子意外とちょろい子なの?! やばい! 緊張する!! 男ケンタ! 一皮剥きます!!


「ケンタさんには本当に感謝してるんです。こんな私をパーティーに加えてくれて..どう恩返しすればいいか..」


 ストレガの距離はさらに近くなる。あ..耳に息がかかる..!! くそ! こんな事なら赤マムシの一つくらい飲んどけばよかった! 俺の馬鹿! 俺は再び平然を装いキメ顔でストレガを見つめ。


「気にしなくていいんだよ、君だからパーティーに誘っただけのことさ、恩返しなんて強いて言うなら..し..強いて言うなら..」


 俺のヘタレ!! 頑張れよ! こんなチャンス2度来ないんだぞ!? 一回深呼吸だ..吸ってぇ..吐いてぇ..


「やっぱりケンタさんは優しくて素敵な方ですね。私..死ぬまでケンタさんにお使いしますので..」


 ん? なんか急に重い事言い出したぞこの子。しかも顔が結構マジだし..俺は少し笑いながら。


「いやいやそんな事までしてくれなくてもw ほどほどにクエストやってくれれば十分だからさw」


 するとストレガが目は笑ってないけど口元はにこりとさせながら不気味に俺を見つめて言った。


「それはダメですよ? だってケンタさんは私の恩人なんですから..もしケンタさんを傷つける人が現れたのならすぐに呪い殺しますので..」


 ストレガちゃん? どうしたの急に! 怖すぎ!! しかしストレガのサイコパスは止まらなかった。


「あーそうだ..ケンタさんに悪い(おんな)が付かないようにまじないを掛けとかないと..」

「ストレガ..? ちょちょちょっと落ち着いて..??」


 そして俺の耳元でストレガが念仏の如くなんか訳の分からない呪文みたいな事を囁きはじめた。


「εδɤζφεδɤζφεδɤζφεδɤζφεδɤζφεδɤζφεδɤζφ

εδɤζφεδɤζφεδɤζφ..」


 おい! こんな展開期待してないよ?! もしかしてオルカがヤバいって言ってたのってこう言う事か?! 何言ってるか分からんけど怖すぎる! 助けてリサ!!


「グガァ〜..! グガァ〜..!!」


 リサさんは大きないびきを立てて爆睡してらっしゃる! やばい! この呪文聞き続けたらどうなっちゃうの俺?! こうなったら寝たふりだちくしょ!!


「グガァ..! グ..グガァ..!」


 俺は恐怖をひた隠しながらいびきをかいて寝たふりをした。するとストレガの謎の呪文が止まった。


「あれ? 寝てしまわれたのですか..それじゃあまじないは掛けられませんね..おやすみなさい、ケンタさん..」


 こえぇ〜!! はい決定ストレガはヤンデレ女です! まじないじゃねえよ呪いだろあんなの! もうあれだ、うん、やっぱり部屋を分けよう..









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