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調査3 装備は大事

「はぁ..これでやっと武器と防具が揃えられる..」

「そんなんいらねえから呑み行こうぜぇ?」

「バカ言うんじゃねえ! クエストでボロ儲けして早期リタイアすんだよ! そうすれば装置が直るまで引きこもれる!!」

「S級冒険者になるとか散々ほざいといてこれかよ..聞いて呆れるわ..」

「そりゃ俺だって一度はなりたいと思ったさ? でもあれじゃん..よくよく考えたら死ぬの嫌じゃん?」


 実はあの後クエストに行こうと意気込んでいたのだが、俺たちは肝心なことを忘れていた。そう、武器も防具も装備していなかったのだ。そんなんでクエストに行くなんて自殺行為なので、俺たちは日払いのポーション配達をして資金を調達したのである。そして俺たちは武具屋に来ていた。中に入ると、やたらと声のでかいガタイのいいおじさんがお出迎えしてくれた。


「らっしゃあいい!! 何をお探しで?!」


 リサは耳を塞ぎながら気だるそうに。


「うわぁ..このおっさん声でか..鼓膜破れるっつーの」


 俺は巾着袋から全ゴージャスを取り出し店のおっさんに見せた。


「とりあえずこれだけで買える武器と防具をください」

「これだけじゃあまともなもん揃えらんねえけどでえじょうぶか?!」


 リサはクスクスと笑いながらなんか呟いている。


「ww でえじょうぶってww 今時そんな喋り方する奴いたのかよw まじウケw」


 これはいつもの事なのでどうでもいいけど、やっぱりこれだけじゃ強い武具は揃えられないのか..まあ無いよりはマシだろう。そんなことを考えていると店のおっさんが裏から武具を持ってきてくれた。どれもボロい。


「まあここにあるやつなら一律で1000ゴージャスだ!! 中古品だけどな!!」


 仕方ないだろうと割り切って俺はゴミの山みたいな所を手でかき分けまともそうなやつを探した。


「ちなみになんですけど、回復魔法とかに向いてる武器とかってあります?」

「そうだなぁ、これなんて軽くて使いやすいぞ!!」


 おっさんはそう言ってただの木の棒みたいなものを手渡してくれた。例えて言うならあれだ、小学生とかが下校中に拾って伝説の剣とか言って遊ぶくらいの太さの木の棒だ。俺はしぶしぶおっさんに言った。


「じゃあ..これで..」


 俺がリサの方をチラ見すると、案の定ケタケタと笑っていやがる。


「その杖その辺に落ちてるやつ拾ってきたんじゃねえの?w」

「るせぇ! 実は伝説の魔法樹から作った杖かもしれないだろ?!」


 今度はリサが店のおっさんに聞いた。


「なあおっさん、私デストロイなんだけど向いてる武器とかある?」


 おっさんは数秒真顔をしてから大笑いして言った。


「だっはっはっ!! 冗談言っちゃいけねえよ姉ちゃん! そりゃ冒険者がなれるジョブじゃねえよ!」

「いやマジだから!」

 

 おっさんはリサの話を信じる様子はなく、笑いながら。


「そうだなぁ、仮にデストロイだったとしたら、人間が使う武器は使えねえな! 持った瞬間に壊れちまうよ!」

「はぁ?! 嘘だろ?!」

「大マジさ! 俺たちが作る武器には微量の魔力が入ってんだけど、デストロイなんかが持ったら魔力が拒否反応起こしてぶっ壊れちまうぞ!」


 ざまあみやがれ魔人の出来損ないめ。俺はバレないように腹を抱えて笑い呟く。


「破壊に特化したってw そっちの意味かよw」

「ゴフッ!!」


 どうやらバレていたらしい。リサはおっさんを睨みながら俺にゲンコツをかましてきた。俺は頭を抑えながら言う。


「いってぇ..! 俺の頭蓋骨まで破壊されたらどうすんだよ!!」

「まーだ言うんか?あ? クソ童貞..??」

「はい..もう言いません..」


 結局リサは渋々武器を諦め装備を買うことにした。しかしどうやらリサさんお好みの装備は無いようで、なにかぶつぶつ言いながら装備を漁っている。


「この世界の服はこんなだせえのしかねえのかよ! オフショルダーとかニットセーターとかねえのかよ!!」

「あるわけないじゃん、もう諦めなよ、ほらそこにある装備なんてスカートにヒラヒラが付いてて可愛いじゃん、女の子ヒラヒラ好きでしょ?」


 そして悩んだ結果、リサは無難なザ・女冒険者と言わんばかりの装備を一式買った。インナーとスカートは紅色を基調とした大人の女性を漂わせるなんとも品のある作りで、そこにプラスされる黒いロングブーツがさらにセクシーさを演出、数年か前に流行った装備だと店のおっさんが事細かに説明してくれた。顔とスタイルがイケてるから様になっているのがムカつく。


「なんか所々縫い目ほつれてんじゃねえかよ!」

「仕方ないだろ中古なんだから、それもまた味なんだよ知らんけど」


 そして次は俺の番だ。ボロくても良いからとりあえずこのスウェットをどうにかしたい。しかし、店のおっさんは残りのゴージャスを見るなりボロボロの布切れみたいなマントを持ってきて言った。


「そんだけで買えるのっつったらこの冒険者マントくらいだな! 防御力はねぇけど寒さは凌げるぜ!」


 俺は無表情でリサを手招きして呼び止めた。


「リサさん、ちょっと」

「んだよ」

「その装備は諦めようか、違うのにしてよ」

「は? やだよ、1番まともなのがこれしかねえんだ」


 じゃあなんだ? 俺は上下スウェットにこのボロい冒険者マントを羽織ってクエストに行けと言うのか? こんな俺にだってプライドくらいはある、もっと重厚感のある鎧とか着たい。しかしリサは頑なに諦める気は無い。


「もうそれでいいじゃん、男がぶつくさ言ってんじゃねえよ」


 俺は駄々をこねる小学生のように両手をバタバタをさせる。


「嫌だ嫌だ! もっとかっこいいのがいい! シルバーに輝く鎧とかさぁ!」

「そもそもお前には似合わねえよw ほら行くぞ」


 リサに抵抗できるわけもなく、俺は襟を掴まれ引きずられながらギルド内のクエストボードの前で放り投げられた。ボードを見るなりリサが。


「簡単なクエストがいいよなぁ」


 俺はゆっくりと立ち上がりボードに貼られている一枚の依頼書を指差して言った。


「これでいいじゃん、D級だし」

「スライム5匹の討伐..あー、ここに転送された時に追いかけてきたあれか」


 スライムなんてゲームで言えば雑魚モンスターも良いとこだ。この前は大群だったから怖かっただけで5匹なんてちょろいでしょ。俺はボードからその依頼書を剥がし受付に持って行った。


「スライム5匹の討伐でよろしいですね、愛と平和が好きなケンタさん」

「はい! ....ん?」


 リサをチラ見するとクスクス笑っている。この前の特性診断の受付嬢..みんなにちくりやがって。俺は少々ムカつきながらも受付を済ませた。


「では! 冒険者ケンタさんとリサさん、ご武運を!」


 そして俺たちはクエストに向けて街を出た。なんだろうこのワクワク感。この感情は久しく感じていなかった、いつぶりになるだろう、そうだあの時だ、放課後マックに集まってみんなでモンハンをやってたあの時だ。懐かしさと高揚感による感動で俺は涙を流しながら大地を踏みしめた。


「グスッ..! これだよ..この気持ちだよ!! 俺が久しく忘れていたこの感情..! 久しぶり学生時代の俺! こんにちわ異世界!!」


 リサはしらけた顔で俺を見つめ言う。


「黙って歩けねえの? ていうかお前絶対学生時代ぼっちだったろ?w」


 俺は口を尖らせながら少し遠くを見て。


「そ..そんな訳ないじゃん? 休み時間体育館裏で弁当なんて食ってねえし? イけてるグループだったし?」

「うわ分かりやす..」


 俺がぼっちだったことなんて今はどうでもいい。散々枕元を濡らしたからな。だが今の俺はあの頃とは違う! 俺は赴くんだ! クエストに! 俺はさっき買った木の杖を天に掲げ腹の底から声を出し叫んだ。


「いざゆかん!! スライム討伐!!」

「あー..酒呑みてぇ..」


 







読んでいただきありがとうございます!

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