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調査2 ギルドってなんぞ

「ここがギルドだよ! 酒屋と併設しているからクエスト前の腹ごしらえも出来るんだ! 便利だろ!」

「へぇ、思ってたより広いんですねぇ」


 これだ..! これだよ! 鎧を着た男達が肩を組み高らかに賛歌を歌っていたり、冒険者達が酒を呑み交わし宴を開いていたり、クエストに備え武具を準備している人がいたり、俺が思っていた異世界はここにあったんだ! 俺は感動のあまり涙を流す。それを見たリサが引き気味に言った。


「泣くほどかよ..つーか私たちは何すれば地球に帰れんだ?」

「グスッ..それを説明してなかったな。俺たちに課せられた使命は2つ。1つは異世界に人間が住めるのか..そしてもう1つは俺たち人間が共存してもいいか異世界の偉い人に許可を貰う。以上だ」

「なんそれ、めんど..」

「簡単なことさ、装置が動くまでここで無事に暮らせばいい話だ。まあお偉いさんに許可貰えるかどうかは知らんけど」


 そうか。大事な事を忘れていた。異世界ライフをエンジョイすると共に、地球で課せられた任務も遂行しなければならなかった。まあでもそっちはもうちょっと先でも大丈夫でしょ。どうせまだ装置は使えないんだし。


「2人とも、話を続けていいかい?」


 危ない、インフェルナスさんの存在を若干忘れかけていた。俺たちはインフェルナスさんに連れられとあるカウンターの前に着いた。美人な受付嬢の後ろの看板には『特性診断』と書かれている。


「ここは特性診断と言って、自分のジョブを確認することが出来る。ここで診断をすれば、自分に合ったパーティーやクエストが分かるからギルドに入る前にやっておいた方がいいよ」


 待ってました特性診断。これがよくアニメとかで見る自分の特殊能力が分かるやつだろう。多分このギルド内のやつらが腰を抜かすんだろうなw 俺は自信満々にキメ顔で受付嬢に言った。


「俺の名はケンタ。好きなものは愛と平和。嫌いなものは悪党。以上だっ」


 受付嬢は引き攣った笑顔で言う。


「で..ではケンタさん..こちらに手をかざしてください」

「ていうかケンタってw 普通すぎてウケるw」


 ちょいちょい煽ってくるリサを黙らせたい。そして、受付嬢に言われ俺はカウンター横にある魔法陣のようなものが描かれた台に手をかざした。すると魔法陣は青白く光りだし、俺の目の前に無数の文字が浮かび上がった。受付嬢は笑いを堪えながら俺に言う。


「ステータスはどれも平均よりっw ゴホンッ..平均よりちょっと下ですね。強いて言うなら回復魔法とかならレベルアップ次第でいい線までいけるかと..もうだめw..笑えて話せw..話せない..w」


 受付嬢は笑いながらも話を続ける。


「ていうかw..散々カッコつけといて..w 普通以下って..w 悲し過ぎでしょ..あーだめ..w 腹筋崩壊しそうw」


 なんだろう。この受付嬢をすごい殴りたい。落ち込む俺にリサがたたみかけるように言った。


「クスクスw 待ってまじウケw 好きなものは愛と平和?w ちゃうちゃうw 回復と平凡でしょw 」


 そう言ってリサと受付嬢はケタケタと笑っている。マジでなんなのこいつら..馬小屋帰ったらリサの寝てるとこに敷いてある藁に馬糞詰めとこ..


「何もおかしくないぞ! 回復魔法は必要不可欠な存在だ。ケンタはきっといいヒーラーになれるぞ!」

「インフェルナスさん..」


 俺は涙目でインフェルナスさんを見つめる。


「じゃあ次は隣の君の番だな! ケンタはっw ..ケンタはヒーラーだったが君はなんだろうな!」

「インフェルナスさん?! ちょっと笑ってたよね?!」


 そして次はリサの番だ。しょうもないジョブだったら大爆笑してやるからな。


「ではリサさん、こちらに手をかざしてください」

「ほいっ」


 再び魔法陣は青白く光りだす。そしてリサの前に無数の文字が浮かび上がった。受付嬢は青ざめた顔で呟いた。


「嘘..これって..」


 リサは俺の方を見てニヤリと笑いながら言った。


「おいケンタ見てみろよ、ヤバすぎて言葉失ってるぜ? こりゃ相当すげぇジョブなんじゃね?」


 くそ、ムカつく..このパターンはどうせリサがチート級の力を持っているんだろう。受付嬢がリサに言った。


「デストロイです..」

「デストロイ..? なんそれ?」


 RPGにそんなジョブあるか? さすがの俺もこれは聞いたことがない。相当すごいんだろうか。インフェルナスさんがさっきまでの元気な声と裏腹に小さな声でリサに言った。


「デストロイ..いわば破壊に特化したジョブだ。魔人が持ってるって話はよく耳にするが、並の人間が持ってるなんて初めて聞いたぞ..」


 いや、それ完全に悪党側の奴が持つジョブって事じゃん。こいつあれじゃん、悪役じゃん。リサは間違いじゃないか受付嬢を問いただした。


「なあ、もっかいやってみてくれよ..なんかの間違いだろ?」


 リサがそう言って手を差し出すと、受付嬢は恐怖のあまりバックヤードに逃げ込んだ。俺は笑いを堪えながらリサの肩をトンと叩き言った。


「まぁそういう時も..w そういう時もあるって! 闇堕ちとか勘弁してなw」


 言うと、リサが俺を鋭い眼光で睨みつけ殴りかかってきた。リサご自慢の左ストレートは俺の右頬に直撃、反対の壁まで吹き飛んだ。俺はもがき苦しみながら言った。


「ずみまぜん..も..もう言いまぜん..」


 ジョブが分かったので次はギルドについての説明だ。俺とリサはまず冒険者登録を済ませ、併設している酒屋のテーブルに座っていた。ギルドカードなるものを貰ったが、俺たちの世界でいう所の免許証みたいなものだろう。俺はそれをリサに見せ言った。


「おい、俺の冒険者情報の写真見ろよ、顔面ボコボコじゃねえか、イケメンが台無しだろ」

「自業自得だろ?! 私なんて写真の右上になんか赤色で『危』って文字のシール貼ってあんだぞ?」


 ていうか思ってたのと全然違うじゃん。俺はどこにでもいる普通のヒーラーと変わらないし、リサは半分魔人みたいなもんだし、これからどうなっちゃうんだろう..


「よし、登録は終わったみたいだね! じゃあここから詳しい説明に入るよ!」


 インフェルナスさんの丁寧な説明で一通りギルドの仕組みを理解した。基本的にはドラクエとかモンハンと同じだと思えばいいだろう。冒険者には5つのランクがあり、下からDランクで始まり、1番上がSランクらしい。特性診断の基本ステータスからランクが決まるらしいが、言うまでもなく俺たちはDランク。でも悲しむ事はない。どうやらクエストにもランクがあるらしく、自分のランクに適したクエストもあるので初心者でも心配はないそうだ。クエストをこなしレベルを上げていけばSランクも夢じゃない! 何はともあれ始まるんだ、異世界ライフが!!


「色々ありがとうインフェルナスさん! じゃあ!」

「サンキューな!!」

「ちょっと待ちなお二人さん」


 何事も無かったかのように早々とその場を立ち去ろうとしたその時、インフェルナスさんがすごい強い力で俺とリサの肩を掴んだ。俺たちがゆっくりとインフェルナスさんの方を見ると怖いくらいの笑顔で言った。


「特性診断代に冒険者登録料、その他諸々込みで2人合わせて20000ゴージャス..とりあえず立て替えとくから早めに返してな?」


 俺たちは震えた声で揃って言った。


「はい..きっちりお返しします..」


 気のいい冒険者も金が絡むと怖い。どの世界もそこは共通のようだ。こうして俺たちはマイナス20000ゴージャスからのスタートだ。そうだ、とりあえずクエストに行こう。




 


 




 


読んでいただきありがとうございます。

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