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調査8-2 ギルドマスターからの試練

 俺たちは今、頭の上に大きなコブが出来た偉大なギルドマスター様とご対面している。なぜでっかいコブが出来ているのかは容易に想像ができるだろう。


「あの..ギルドマスター? お聞きしたい事があるのですが..」

「なんじゃ?」

「S級冒険者になればキングアーサー様に会えると聞いたのですが、本当なのでしょうか?」

「そうじゃな、わしが許可すれば宴会への参加は可能じゃよ」


 やはりマックスの言っていた事は本当だったらしい。しかしこんな器の小さいじいさんでもそんな権力があるのは少々癪に触る。


「でもお主らには無理じゃよ?」

「..え?」


 その時、突拍子もなくじいさんが言った。もしかしてこの人、まださっきのこと根に持ってんの?


「だってそこの爆乳姉ちゃん、デストロイじゃん」


 おっと? どうやらそういう事では無かったらしい。


「デストロイだとダメなんですか?」

「A級までは昇格できるがSに上がるのは無理じゃ。S級になれる冒険者は高貴で勇ましくなければならないとギルド協会で決まっておる。デストロイは本来魔人の持つ力じゃからどれだけ人が良くともS級にはなれないね」


 嘘だろ..なんだよそれ聞いてねえよ! なんならデストロイじゃなくても無理だろ! あんな高貴なのとは無縁の女! じゃあもう無理じゃんゲームオーバーじゃん..


「ギルドマスター!! この女はデストロイで性格も尖ったやつですが根は悪いやつではありません! 勝手を言っているのも重々承知です! 何とかならないでしょうか!!」


 その時、マックスがギルドマスターに深く頭を下げ言った。それを見たストレガも一緒に頭を下げて。


「わ..私からもよろしくお願いします!」


 こいつら..めちゃくちゃ良い奴らじゃねえかよ!! 問題児のくせに泣かせんじゃねえよ! そして俺もギルドマスターに深々と頭を下げた。


「どうか宜しくお願いします!」

「よ..宜しくおなしゃす..」


 リサも不本意ではあるっぽいが頭を下げた。ギルドマスターはトコトコと歩き近くのベンチに腰掛け一呼吸して。


「まあお主らがそこまで言うなら仕方ないのぉ..その代わり、わしの試練に合格したらじゃがな」


 ほお、このじいさん意外とそれらしい事言うじゃん! なんかアニメとかでもこういう展開は見たことあるぞ!


「試練..というと?」


 俺が聞くと、ギルドマスターはリサ、ストレガ、マックスの3人を見て。


「じゃあまずは..1人ずつ今日履いている下着の色を言うのじゃ」


 マジで期待を裏切る天才だなこのじいさん..言うまでもなく、リサは拳を爪が食い込むくらい握りしめ俺の耳元で。


「やっぱりこいつ殴っていいよな..?」

「気持ちはすごく分かるけど絶対やめて..ここまで我慢できたなら堪えよ?」


 リサは軽く舌打ちしたが何とか我慢してくれた。でもこの子達だって女の子だしさすがにこの質問には答えられないだろ。


「私は白だ!!」


 マックスは躊躇する事なくどでかい声で叫んだ。周りの男冒険者たちがざわついている。


「おいマックス、堂々と答えなくていいんだよ! 女の恥じらいとかないのかよ!!」


 ギルドマスターは驚いた顔をしながら。


「ほお..白か..というか本当に答えるんじゃなお主」


 俺はやっぱりこのじいさんが嫌いだ。でもマックスは意外と清楚な下着を履くんだな..じゃない! このじいさんにのまれるな俺!


「冗談はこれくらいにして本題に入ろうかの、お主らに与える試練は島に眠るお宝を見つけ出すことじゃ」


 ようやく本題に入ってくれたギルドマスターは真剣な顔つきで話し始めた。


「街の港から船が出ておる。お主らはそれに乗って呪われた島、デスカース島に行ってもらう」

「デ..デスカース島..?」


 何!! そのめちゃくちゃ怖い名前!! しかも何? 呪われてる? いや絶対無理だから! 絶対お化け出るじゃん!


「ギルドマスター! 本気で言ってるんすか?! 」


 すると盗み聞きしていた冒険者がギルドマスターに言った。その言い方は絶対ダメなやつなのよ!


「本気じゃよ? この試練がクリアできなければお主らのS級冒険者への道はパーじゃ、どーする?」


 俺は3人を集めて会議を開くことにした。


「おい..俺は行きたくないぞ」

「はぁ?! S級になれねぇとキングなんとかに会えないんだろ? それになんか面白そうじゃん!」


 リサは既にワクワクしている。お次はストレガが。


「呪い..いいじゃないですか!!」


 あーだよねぇ..この子はもうそっち系の子だもんね..お次はマックスが。


「島の噂は何度か聞いたことがあるぞ! あそこに行って帰ってきた冒険者はいないらしい! まあ、私たちなら大丈夫だろう!」


 はいもう絶対やだ! ていうかなんでみんな行く気満々なんだよ! その時、リサが俺の肩をぐっと掴みにこりと笑って。


「行くよなぁ..? けんたく〜ん..?」

「はい..」


 そして俺はギルドマスターにうなづいた。周りの冒険者達は俺の肩を優しく叩くと悲しい顔をして。


「お前と過ごした日々は忘れねえよ..」

「ケンタの分まで頑張るよ俺..」

「俺が代わりにS級に..グスッ..だめだ..! かける言葉が見つからねぇ..!」


 そして俺たちは冒険者たちにとっても暖かく見送られ港へ向かった。俺たち..絶対に死ぬと思われてるじゃん..こんな事なら遺書でも書いておけば良かった..


「なんかインディージョーンズみたいでワクワクすんなぁ!」


 港へ向かう途中、リサがビール瓶片手にソワソワしながら言った。これから呪われた島に行くというのに何故そんなに前向きな事が言えるのか知りたい。しかし気分が舞い上がっているのはリサだけではなかった..


「これもS級昇格の資格を得るため! クエストに行きたい所だが仕方がないだろう!」

「いやマックス、その背負ってるパンパンの鞄の中には夢と希望でも詰まってんのか?」


 そしてストレガは国語辞典くらい太い本を持って何か呟いている。


「どんな呪いなんでしょうかねぇ..入った瞬間に体内爆発するとかなんでしょうかねぇ..」


 聞かなかった事にしよう。しかし行くからにはあのじいさんが言っていた伝説のお宝ってやつを手に入れたいところだ。宝の地図に記されていたのは、これから行く島を記した海図と『男のロマンここに眠る』という一文のみ。なんだ男のロマンって、伝説の剣とかか..?


「なあなあ、おやつ買ってこうぜ!」

「何言ってんの君? 遠足じゃねえんだぞ? これから呪われに行くんだぞ?」


 この状況でそんな事が言えるリサに尊敬すらある。そして気がつけば吹く風の香りも潮の匂いになってきた。大きな荷物を持った商人たちが沿岸沿いで出店を開いている。ヨーロッパのお洒落な港町っぽい雰囲気には感動すら覚えるほどだ。


「着いたぞ! ここがラグジュアリーデジャブの港町!アザール港だ! この街は貿易が盛んなので商人が多いんだ!!」

「うおぉぉ! すっげぇ!!」


 リサが防波堤の柵から身を乗り出して感動している。確かにこれはテンションが上がる。景色に見入っていると、マックスが知らないおじさんに声をかけはじめていた。


「船長! 船を出してもらいたいのだが!!」

「あ? なんだマックスか、また1人でクエストか?w」


 このガタイの良いスキンヘッドの強面なおっさんはどうやらマックスが遠い所のクエストに行く時、この船長に船を出してもらうそうで顔見知りらしい。


「いや! 私はもう1人ではない!」

「へぇ..物好きもいるもんだなぁ..んで? どこ行きてえんだ?」


 俺はおっさんの言葉に苦笑いで会釈した。


「デスカース島に行きたいんだが!!」


 マックスの一言でおっさんの表情は一変し険しい顔に変わった。その顔はまるでVシネのそれだ。


「正気かあんたら..帰ってこれねぇぞ?」

「ああ!頼む!」


 もはや帰って来れないと断定されたじゃん。おっさんは俺たちを見ると、鼻で笑い言った。


「ったく..これだから命知らずの冒険者は..乗りな」


 そして俺たちは船に乗り込む。操縦席に着いたおっさんが窓から顔を出して俺たちに。


「じゃあ出港するぞ? 覚悟はできてるな..?」


 正直に言えば全然出来てない。今すぐ暖かい暖炉のある家に帰りたい、しかしここまできたらもう後には退けない! 呪われた島だかなんだか知らんが伝説のお宝を見つけ出してギルドマスターの試練をクリアしてみせる! と意気込んでみたが、俺は気の抜けた声で船長に。


「よ..宜しくお願いします..」


 俺の一言で船長が大きな音を立て汽笛を鳴らした。それと同時に船がゆっくりと動き出す。向かうは呪われた島デスカース島。船酔いしたくないなぁ..







 







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