調査7-2 激闘! ジャイアントトロール!
というわけでこれからあのデカブツを討伐しなきゃいけない訳だがどうやって倒そうか。まあ1番手っ取り早いのはあれか..!
「ストレガ! 黒魔術だ!!」
「任せてください! 黒魔術..アブダ・ケダブラ!!」
ストレガが杖を構え呪文を唱える。どうだデカブツ! こっちにはチート級の術を持った魔法使いというか魔女がいるん..だ..?
「ストレガ〜! なんかお前が唱えた途端にマックスが倒れたぞ〜?」
リサの言った通り、突然マックスがその場で倒れた。即座にストレガの方を見ると、顔を伏せて視線を逸らしている。俺は一旦冷静になりストレガを呼び止めた。
「ストレガさんちょっと」
「は..はい..?」
ストレガは何事も無かったかのような顔をしてこちらに来る。
「とりあえず説明してみようか」
「実は..アブダ・ケダブラはまだ不完全なので..強いモンスターだと対象がうまく定まらないんです..ケンタさんが頼ってくれたので思わず..」
という事はどういう事だ? もしかしてマックスは..?
「じゃあもしかしてマックスは..?」
「お亡くなりになりました..」
「お亡くなりになりました..で済むか!! なんでそういう事は先に言わねえんだよ! どうすんだよマックス死んじまったじゃねえか! 立派な犯罪者だよ貴方!!」
どうすんだよマジ! 首謀者俺だから真っ先に裁かれるの俺じゃん! ん..? いや..待てよ..そうだ!! あれがある!
「おいケンタ!! このデカブツを1人で相手すんのはきちぃって!!」
「わりぃ! もう少しだけ時間稼いでてくれ! ほら! ストレガもリサのサポート行ってきて!」
そうだ、俺にはとっておきの技があった! こんな時のためにスキルポイントを全振りしておいて良かった!! 俺は木の杖をマックスに向け唱えた。
「ザオリク!!」
頼む..頼む..! 生き返ってくれ! こんな所で捕まりたくねえ!!
「....ハッ..! 何が起きた..?!」
「マックス復活したぁ!!」
良かったぁ! 無事にマックスを蘇生すること成功した。俺は何も知らずに起き上がったマックスを涙目で見つめ。
「いやぁ..ほんと良かったよ..君はトロールに頭を握りつぶされたんだ..俺の決死の救出とザオリクが無かったら今頃君は..グスッ..」
「なに?! そうだったのか!! 助かったぞケンタ! では仕切り直しだ!」
そう言ってマックスは再び立ち上がりトロールに向かっていった。とてつもない罪悪感を感じるがこれは致し方ない! しかしストレガの黒魔術はもう頼れない..となればもう力でゴリ押すしか!
「頑張れみんなぁ!!」
「おめえも戦えや!!」
戦いの真っ最中でもリサの鋭いツッコミはバリバリに冴えている..なんて言ってる場合じゃないだろ! リサとは言え体力が無限にあるわけじゃないし、マックスは勢いだけだし、ストレガは殺人兵器だし、もうこれ詰みだろ!
「くそっ..! 何回殴っても全然効いてねぇじゃん!」
「2人とも! 手を貸すぞ!」
「お前気合いだけじゃねえか!」
リサとマックスはいがみ合いながらもかなり頑張ってくれている。しかしなんだろうこの妙な違和感..だって強いとは言えC級レベルだろ? リサだって一応デストロイでパワーは割とあるはずだし、マックスも勢いだけとは言えなかなかの実力はある。その割には全然弱ってない..ん..? 弱る..?そうか!
「ストレガ! アブダなんとかって技まだ使えるか?」
「あと1発くらいならなんとか..どうかしましたか?」
「さっきストレガが言ってた事って、反対に言えば弱いモンスターほど成功率は上がるって事だろ?」
という事はあのデカブツを弱らせればなんとかなるかもしれん! あの鋼みてえなガードさえ緩ませられればリサたちがなんとかしてくれる! 考えろ俺!
「ケンタさん..非常に言いにくいんですけど屁しました?」
「..は?」
「いや..してないならあれなんですけど..なんか硫黄みたいな匂いしますよね..?」
こんな時に何言ってんのこいつ?! 俺がポンコツだからってこんな一大事に屁こくわけないだろ! ふざけるのも..ん..? 確かに言われてみればそんな匂いもしない事はない..
「オナラ..硫黄..まさか..!!」
ある事を思い出した俺は辺りを見回した。
「もしかしてこの辺に....あった! あれだ!」
俺は岩壁の隅に生えていた草を数本むしりとり、みんなに叫んでトロールに投げつけた。
「リサ! マックス! トロールから離れろ! それからストレガ! 黒魔術の準備!!」
リサとマックスがトロールから離れたのを見計らい俺は申し訳なさ程度にしか出ないファイアーボールを繰り出した。すると、激しい轟音と共にトロールの周辺が大爆発する。
「しゃあっ!! トロールのガードが緩んだ! 今だ! リサ! マックス!」
そう。俺が投げつけた草はカヤクソウ。以前暇つぶし程度に異世界の植物調査をした時にたまたま書いてあったのさ! カヤクソウは花粉のようにガスを放つ事から取り扱いには注意しろってな! ストレガの言っていた硫黄の匂いってのは亜硫酸ガスの匂いだったわけだ! そりゃ充満するガスにファイアボールを放ったらどうなるかは言うまでもない!
「何したか分かんねえけどナイスだぜケンタ! おぉうりゃぁぁぁ!!」
怯むトロールの脳天にリサがぶちかました魔人の鉄槌がクリーンヒット、デカブツはその場で膝をつく。
「次は私の番だな! 今度こそ!! はぁぁぁ..! ライトニングセイバー!!」
そして稲妻をまとったマックスの斬撃がトロールに直撃した。次でチェックメイトだ!!
「ストレガ!!」
「はい..!! 黒魔術..アブダ・ケダブラ!!」
俺の華麗な爆撃からのリサたちの攻撃コンボでかなり弱ったトロールは、ストレガのトドメの黒魔術で断末魔を上げながら倒れた。
「はぁ..やった....勝ったぞぉぉぉ!!」
俺の勝利の雄叫びで全員が歓声をあげる。するとリサがマックスの所に近づいて拳を差し出した。
「おい! 最高の一撃だったな! グー出せって!」
「お前こそ..いいゲンコツだった!!」
そして2人は力強くグータッチをした。なんとかジャイアントトロールを倒した俺たちはギルドに帰還した。
「クエストクリアです!! お疲れ様でした!あ! 実は 今回倒したジャイアントトロールの生体を調べた所、魔獣化していた事が発覚しました! 依頼書を作る前に生体調査をした時は魔獣化していなかったんですが..こちらの情報不足です! 大変申し訳ありませんでした!」
「魔獣化..? そうなるとヤバいの?」
「はい..全てのステータスが数倍に膨れ上がり、そのモンスターが持てる最大の力を遥かに上回ります。ですので今回のクエストは本来C級の冒険者でどうにかなるレベルなんですが..恐らくB級の高難度レベルのクエストになっていました..」
おいなんだよそれ! 逆にそれで勝てた俺たちもうB級でいいだろ! ていうかこんなの向こうの世界なら労働基準法とかひっかかるレベルだろ!
「お前たち! 本当にありがとう! 感謝する!!」
その時、マックスが自慢の声量で俺たちに頭を下げた。
「まあとりあえずクリアできて良かったよ」
「ああ! お前たちと戦えて本当に良かった! 困った時は言ってくれ!」
「おう!」
そのまま別れる流れかと思ったがマックスはその場から動こうとしない。
「ま..まぁあれだな! お前たちも頑張れよ! パラディンを持つ冒険者はなかなかいないからな! そのぉ..なんだ..探すのには苦労するかもしれんな!」
「う..うん」
また話し始めたぞこの人..もう俺たちが行こう..
「あ..! ちょっと待て!! C級に上がりたいなら強い騎士を仲間にした方がいいかもしれんぞ!」
「うん..」
あーそういうことね..もう何となく分かったわ。多分リサとストレガもおんなじ事思ってるような顔してるし..
「えっと..うちのパーティー来る?」
「なに?! ケンタのパーティーに?! この私が?!」
分かりやすすぎだろこの女騎士..まあでも悪い奴ではないしな。するとリサが呆れた顔で俺を見て少し笑いながら。
「お前ほんとお人好しよな..w まあそういうとこは案外嫌いじゃねえよ?w」
「からかってんのかぁ?」
今度はストレガが微笑を浮かべてマックスに何か言っている。
「ケンタさんに色気使ったら呪い殺しますから..気をつけてくださいね?」
「ストレガ? ネタなのかマジなのか分かんないからやめて?」
まあそんな感じで新しい仲間がパーティーに加わった。そうとなれば歓迎会だ! 俺はギルド内の冒険者に叫んだ。
「っしゃあ!! 野郎ども!! 今日は宴ダァ!! 俺が好きなだけおご..」
「おい..次はねえって言ったよな?」
「はい..すいません..姉さん..」
読んでいただきありがとうございます!よろしければ評価、ブックマークお願いします!