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31 最終話 どうやら女王は普通ではないようです


1


 翌朝、数人の迎えの人間が現れ、彼等と共に謁見のため女王旗艦ディズィールへと向かう事になった。


 自分が面倒を見ている少年少女達も連れて来て良いとの事だったが、それを彼等に伝えたところ、一同皆顔を強張らせてしまう。


 結局だれも着いてこなかった。こうなるとまるで自分だけが貧乏くじを引いてしまったような気分になってしまう。


 連絡艇はそんな自分の心情とはお構いなしに上空へと昇って行き、目的地は見る間に近づいてくる。


 改めて見ると、全長2400メートルを誇るそれは途方もなく巨大だった。


 純白の船体は普段自分が抱く悪魔めいた死霊達の兵器の印象とは程遠い。


 超高空の藍色の空に、巨大な光の羽を広げ『それ』が在る姿は、神々しさすらも感じた。


2


「昔はこんなに広い通路は無かったのよ。何故かはこれを見れば分かると思うけど」


 不意にアイリスがそんな事を言い始めた。


 視界にウィンドウが開き、艦内マップが表示される。そして気付いた。この船には殆ど空間が存在しない。高密度の機械の塊である。


「肉体を持つ人間が運用する船じゃない。だから通路とかも必要がなかったって事か」

「そう。けど、この船が女王旗艦として改修されて、肉体持ちのためのスペースが増えた。謁見の間が物理エリアに設けられるなんて、思ってもみなかったことだわ」

「物理エリアって?」

「艦内の現実空間を私達はそう呼んでるの。逆に艦のサーバー内に構築された仮想空間を理論エリアと呼んでるわ」

「へぇ……」

「着いたわ」


 アイリスが足を止めた。目の前には荘厳極まりないデザインの大扉がある。


 流石に緊張してきた。


 大扉が音もなく開かれると、中には広い空間があった。その玉座に誰もいない事に気付き、ほっと胸を撫でおろす。


 中に入ると、両側には同じ服装をした者達が整列していた。


 その内の二人は見知った顔だ。ナイツ・オブ・クイーンの隊長と副隊長だ。ってことは彼等はその隊員たちなのであろう。


 そして気付いた。その構成員の殆どが銀髪に赤い瞳を持っている事に。例外は副隊長ともう一人、褐色の肌を持つ女性だけだ。


「ナイツ・オブ・クイーンのメンバーは創成十二氏族からなるの。こう言うとまるで昔の『貴族の義務』みたいに聞こえるけど、どちらかと言うと十二氏族の方が強引に各家から一人選出して、隊員に入れさせて貰ってる感じね。陛下は別に誰でも良いみたい。現に例外が貴方も含め3人いるわ」

「へぇ……」


 これしか出てこない。


「我が申し出を受けてもらい感謝する」


 そう言って頭を下げたのは隊長であった。


「いや、まぁ……」


 先から中途半端な返事ばかりである。こういった場が場違い過ぎてどういった態度でいるのが正解なのか分からない。


「時間だな。陛下の到着はまだか?」

「何分忙しいお方ですからな……あ、到着なされたようです」


 随分と和やかな雰囲気である。彼等にとって女王は近い存在という事なのだろうか。


 以前、ウィンドウの中に見た女王の姿は、年頃の小娘と言った感じだった。アイリス曰くそれは女王の別の側面らしい。


 けど、この雰囲気を見ている限り、女王に謁見と言ってもさほど肩に力を入れなくても良いのかもしれない。


 などと思っていると。無人の玉座に光が走り抜けた。その次の瞬間、場の空気が一変した。両側に控えていた隊員たちが一斉に片膝を突く。


 光の粒子を纏い玉座の前へと降り立ったのは、紛れもなく以前ウィンドウの中に見た少女だった。


 ウィンドウ越しに見るより遥かに整った容姿をしている。それは何処か人間離れしてすらあった。


 彼女が此処に現れた事によって、まるで空間そのものが霊気を帯びるかの如く変質して行く。


 特徴的なシルバーブルーの長い髪が僅かな光を纏い、まるで重力を感じていないかの如く舞っていた。


 床や壁、空間を走り抜ける光が彼女へと集まり、その皮膚の上を幾何学的な模様を描き駆け上がる。


 閉じられていた瞳がゆっくりと開かれた。


 そして露わになったこの世の全てを統べるが如き強い光を宿した瞳に、凍り付いたが如く動けなくなる。


 目の前に存在しているのはヒトの領分を遥かに超えた『何か』だと感じた。


――そんなに怖がらないでください。これは『因子保持者』が持つ特有の情報圧によるものです。私には貴方からも同じ波動が伝わっていますよ――


 あまりに方向感が無く、頭に直接流れ込んで来たかの如き声に更に身体が委縮した。


――美玲、艦とのリンクを切って宜しいですか?――


「仕方ありませんね」

 

 隊長が首を横に振った。


「では、副長ザイールにこの艦の全権限を一時的に移管すると伝えてください」

「はい」


 次の瞬間、彼女に集まっていた光がフッと消えた。僅かな光を宿して宙に舞っていた長い髪が背中へと流れ落ちる。


「これでどうでしょう? 少しは話しやすくなりましたか?」


 そう言って微笑んだ女王。先まで感じていた圧力から解放されるのを感じ、その場にヘタり込んでしまいそうになる。


「すみません。脅かすつもりは無かったのです。この船にいる間は管理権限が自動的に私になってしまうので、『因子能力』を解放しないといけなくて。ですが、これは貴方にも出来る事ですし、恐らくユニットを纏った貴方は先の私に近い雰囲気があるはずですよ」

「そ、そうなのか?」


 思わずアイリスの顔を見る。


「ええ。だから、貴方に対峙したレジスタンスは逃げ出したでしょう?」

「そりゃ、あんなもん装備してりゃあ」

「違うわよ。ユニットを操る時の貴方の気配が既に尋常じゃないの。気付いてなかった?」

「そ、そうなのか……」

「陛下の御前である!」


 隊長が咳払いをした。


「固くならなくて良いですよ。そうですね。私もプライベートのノリで行きましょうか。ナイツ・オブ・クイーンの皆さまは家族みたいなものですし」

「しかし……」

「良いのですよ。私が彼を強引に招いてしまったのですから。用があったのは私であり、しかもお礼を伝えたいというのが趣旨なので、本来なら私が彼の元に出向くべきところ。女王という身分は自由が無くていけませんね」


 そこで言葉を止めた女王は、不意に此方の顔を覗き込んだ。思わずそれに固まる。


「貴方、王をやってみます?」

「はい!?」

「陛下!!」

「資質はあるのです。因子保持者でしかも『肉体持ち』である彼であれば、私よりも更に現実世界にも寄り添った政治が出来る可能性があります」

「か、勘弁してくれ……」

「そうですか」

「陛下、お願いですからそういった事を簡単に口走らないでください。周りの者が肝を冷します」

「簡単に言ったつもりは無いのですが……」

「陛下!」

「分かっています。ただ、これだけは知っておいてください。貴方にはそれだけの力があるという事を」


 それからは、あまりに他愛も無い事を話した。その殆どが現実世界に纏わる話だ。女王はそれに相づちを打ちながら興味深そうに聞いていた。


 その中で女王はアイリスに新たな専用義体を提案する。だが、なんとアイリスはこの話を断ってしまった。


 ナイツ・オブ・クイーンの入隊式については、女王から勲章入りの制服を手渡され、簡易的な入隊式となった。勲章は先の暴走殲滅艦の排除の功績に対するものらしい。


 貰ってはみたものの、正直これに袖を通す日が来るとは思えなかった。


3


「お疲れ様」

「全くだ」


 アイリスの言葉にそう答え、深い溜め息を吐く。


「にしても、女王の提案断ってよかったのか?」

「提案って?」

「いや、ほら新しい専用機体の話」

「良いのよ。だってそれを手に入れちゃったら、通常任務に戻らなきゃ行けなくなるじゃない」

「まぁ、そうだろうけど」

「言ったでしょう? 私は貴方がどんな答えを出そうと傍にいると。で、答えは決まったの?」

「ああ」

「そう」

「旅を続ける」

「そう言うと思ったわ」


 アイリスは若干大げさでは無いかという程の呆れ顔をした。


「ただ、旅の趣向は少し変えるかな。管理自治区、良い街だと思う。ああいった雰囲気の街が増えるように、旅をしながらちょっとずつ問題を取り除けたらと言うか」

「ふーん……少し進歩したかしら? でも随分と地道なのね」

「俺らしいだろ?」

「そうね」


 そう言ってアイリスは柔らかく微笑んだ。


 旅は輸送艇に乗せられた所から、続きをやるつもりだった。


 少年少女、イルカ一匹と共に出発の準備をする。ロジャーだけは飼い主が無事見つかり、お別れとなった。


 集落の人々は管理自治区が気に入ったようだ。


「「またよろしくお願いします」」


 かえで紅葉もみじが屈託のない笑顔を浮かべ言う。


「オッサンまたよろしくな。飯は取って来てやるからよ」


 とビリー。その後ろではボブとマイクがニヤニヤしていた。


「誰がオッサンだ。じゃあ、行くか」

「ええ」


 返事をしながらさり気なくアイリスが手を出して来る。


 それに気恥ずかしさを感じながらも、その手をしっかりと握った。


4


「何故だああぁぁぁぁ!?」


 精鋭部隊隊長ことゴンザレスは叫んだ。


 そこは、はやてに爆弾を抱えさせ送り込んだ死霊共の収容施設だった。


 何故自分がこの様な所に居なければならないのか。


「うるさいっすね。もう」

「もとはと言えば貴様が立てた作戦がずさんだったからこうなったんだ!」

「隊長が立てる作戦よりはマシっす」

「何だとぉ!?」

「黙って歩け!」


 鋼鉄製の看守に怒鳴られ一同が沈黙する。


 そして辿り着いた先は、死霊達に捕まったレジスタンスの人間でごった返していた。


 そして知る。その殆どの人間に見覚えがあった。それは自分達が成り上がる過程で、あらゆる方法を使って蹴落として来た人間たちだ。


 ある時は罠にはめ、またある時はわざと救出に行かず。そうやって、まんまと排除してきた者達が目の前にいる。


 彼等の視線が一斉に此方へと向けられた。


「お前等、新入りだ。仲良くしてやってくれ」

「ああ、勿論でさぁ」


 男達がニヤニヤしながら近寄ってくる。


「何故だあぁぁぁぁぁ!」


 施設にゴンザレスの叫び声が木霊した。



END



最終話まで読んで頂きありがとうございました!! 感謝しかありません!


この作品で長らく空想科学で1位に居させて頂きましただけに思入れの深い作品となりました。

こうして無事最終話を迎えられたのは一重に応援して下さいました読者様のおかげです。本当に有難う御座いました。


ここで重大発表です。本作品の完結と入れ替えに新作を始めました! 少しだけこの物語と関りがある話になっていますので是非見に来てください!!


『俺について来れないダメ機体のせいで精鋭部隊を追放されたけど、資産家の訳あり令嬢に惚れられ異次元性能なテスト機のパイロットになったら潜在能力が開花、いつのまにか『大国殺しの悪魔』と怖がられているようです』

https://ncode.syosetu.com/n4631gi/


また、同世界を死霊視点で描いた此方よりもハード目の作品もありますので、もしよかったら此方も覗いて見てくださいね


※テンプレ要素:主人公とヒロインのダブル覚醒型チート(覚醒遅め)。ハーレム展開。

 こちらの作品で登場した女王が、女王になり上がるまでの物語です。


『Spirit of the Darkness あの日、僕は妹の命と引き換えに世界を滅ぼした』

https://ncode.syosetu.com/n0684dg/


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― 新着の感想 ―
[一言] お疲れ様です。本編の主人公であってもおかしくないような資質を持ったまま、どこへ行くのか、その後について語られるのも待っています。
2020/06/29 17:17 退会済み
管理
[一言] 本作が「Spirit of the Darkness」の第3部かと思ってたら違ったんですねw これまでと違い、このちょっと明るめのノリが良かったんで、これはこれでアリだなと思っていました。…
[良い点] 面白かったです
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