いっしょに、
「素敵!」
アカリさんの言葉が響いた。
「なんなん! 最高! もう! そんなことなら早く教えてよ!」
アカリさんはそう言いながら俺の肩を興奮気味に何度も叩いた。
「痛っ、痛たたたっ」と痛がる俺を見て、「あっ、ごめんっ」と少し冷静になったアカリさんだったが依然冷めやらない表情で「じゃあ、そのお話を創る為に今回応募してくれたの?」と俺に聞いてきた。
「うん、まぁ、それも無意識にあったのかなぁと……」
俺は手元のコーヒーに視線を落としながら応えた。
あからさまに恥ずかしがっている俺を見て、アカリさんは満足そうに頷き言った。
「オッケー! 合格!」
「え?」
「ケン君、合格だよっ! DMで言ってたやん。サンタさんになるための条件って。それはね、サンタさんになりたい理由を言える事だったんよね」
そこまで言った後、アカリさんはわざとらしく肩をすくめ呆れた様子で続けて言った。
「ほらっ、この活動ってクリスマスに予定空いてるのが条件だからさ、チャラい大学生とかが出会い目的で応募してきたりしてくることがあったの。だから、説明と称してこうやって面談も兼ねてたんだけど……」
突然、アカリさんはパッと笑顔になったかと思うと、俺の手を握り「ケン君なら大丈夫。夢のためだもん。ぜっっっっったいに良いサンタさんになれるよ!」と言い、その握った俺の手を何度も何度も上下に振ってきた。
予想外の反応に慌てた俺は「あっ、いやっ、どうも」と応えるのが精いっぱいだった。
笑われると思っていた。
どうしようもないこの俺の『夢』の話なんて、キモがられたり、ドン引かれたりと言った嘲笑の的になるのが関の山だと思っていた。
だが、違った。
確かに目の前のアカリさんは笑っている。しかしそれは嘲笑とは全く別の、尊敬や親愛、よもするともっと特別な何かが、その視線には込められていたような、はたまたそれはただ俺がそう思いたかっただけなのか、兎にも角にもアカリさんは笑ってくれた、笑ってくれたのだ。
「あっ!」
アカリさんは腕を振っていた表紙に見えた俺の腕時計を見て、小さく叫んだ。
「そろそろ研修会に向かった方がいいかも。ケン君、今日早速行ってみる?」
アカリさんはそう言いながら急いで机の上に広げた資料をバッグにしまい始めた。
「よろしくお願いします」
俺がそう言いながら、片付けを手伝うとアカリさんは本当に嬉しそうに笑い返してくれた。