教えて、 2-2
話がひと段落し、アカリさんは珈琲を一口啜った。
ふと訪れた沈黙の間に「本当にサンタクロースが好きなんですね」と思わず口をついて出た俺の一言に、アカリさんは少し恥ずかしそうに苦笑いを浮かべた後、ポツリと呟いた。
「……まぁ、私の夢なんですよね」
「夢?」
俺が訊き返すとアカリさんは「あっ、言っちゃった」とバツ悪そうに舌を出した。
「サンタさんが、アカリさんの夢なんですか?」
俺の言葉にアカリさんは「バカにしてるでしょ~大の大人がサンタさんなんて」とアカリさんは気恥ずかしそうに顔を手で隠した。
俺は反射的に「バカになんかしてないですよ!」と応えた後、少し考えて「………………なんかちょっと羨ましくて」と言い加えた。
「……羨ましい?」
アカリさんは困ったように「そんな風に言われたの初めて」と言い、笑った。
『羨ましい』正直な気持ちだった。
『夢』なんて言葉、ここしばらく言った事も聞いたことも無かった。
俺はずっと胸の中にあった惨めな気持ちの正体に気付いた。
俺は周りの人の声が聞こえなくなるほど、自分の夢を話したことがない。
俺は最近夢中で何かを成し遂げたことが無い。
アカリさんに出会ってそれを痛感した。
この人は俺にないものを持っている。
それが、本当に、胸が痛くなるほど『羨ましかった』。
「もし良かったら、夢の話、聞かせてくれませんか?」
気付くと俺は口にしていた。
俺の反応に少し驚いた様子のアカリさんも、「昔話になっちゃうけど……」と前置きした後、ゆっくりと話し始めた。