あなたが、 2-2
なんとなく予感はしていた。
文章の端々に女性らしさがあったし、もっと言えばこの文章をおっさんが打っているっていうのは想像したくねぇよなぁ、という願望でもあった。
でもまさかこんなに綺麗な女性とは思っていなかった。
小柄でショートヘアーがよく似合ってて、それでいて芯の強さを感じさせる真っ直ぐな瞳。
隣に俺なんかが立っていいのだろうか。自分にないものばかり持っていそうなアカリさんを前にして俺はどこか卑屈になってしまっていた。
そんな俺の気を知ってか知らずかアカリさんは「じゃあ取り敢えずどこか座れるところに行きましょうか」といいズンズンと一人で出口まで歩き出したので俺は慌てて追いかけた。
歩きながらお互い自己紹介している内に分かったことがある。
アカリさんは22歳で俺と同い年だった。
「てっきり俺より年上かと思ってました」
俺がそう言うと、アカリさんは「それって私が老けて見えるってことですか~?」と言いおどけ気味に小さく頬を膨らませた。
「いやっ、ごめん。そういうことじゃなくて……」
俺が焦って否定していると、アカリさんは堪えきれないように「あははっ、ごめんなさい。からかっただけです」と笑い続けて言った。
「私、高校卒業して直ぐに働き始めたから、多分ケンさんの周りにいる女子大生の子たちと比べたらどうしても地味なんですよ」
アカリさんはまるで気にしていないというように笑う。
俺が「大人びてて素敵だと思います」だったり「アカリさんこそ可愛いですよ」とか返すべきなのだろうかと考えているうちに、アカリさんは足を止め「もうここでいいかな?」と俺に聞いてきた。
駅前直ぐのスターバックス。「寒いし、もうここにしませんか?」アカリさんはマフラーに顔をうずめながら俺に聞いてきた。
「そうですね。ここにしましょう」
あまりアカリさんの方を見ずに返事をした。
自分の顔がそれこそアカリさんのトートバッグみたいなサンタ色に染まっていないか心配で堪らなかった。