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すごいね、

 研修で俺のサンタは皆に褒められた。自分では分からないが演技力もといアドリブ力がそれなりに高いらしい。

 毎年、サンタ役として参加しているという42歳の萩岡さんに「君のサンタって屈んだ後、グッて立ち上がってから、腰をトントンと叩いてるやん? あれええなぁ。めっちゃサンタっぽいもん」と言われた。まぁ、おじさん感を出すために半分大袈裟にやってはいたがもう半分は運動不足からくる結構マジなやつであることは黙っておいた。

 今年で二回目だという女子大生の佐藤さんからは「ケンさんって台本にない事も言ってきたりするからちょっと緊張するんですけど」と釘を刺された。俺から言わせてもらえば、じゃああんたはそのA4用紙持ったまま子供の前に行くのかよという話なのだが。研修の時俺が子供役としてトナカイ役の佐藤さんに「今日はどこから来たの?」とアドリブで聞いた時佐藤さんは「えっ、山科からですけど……」と答えやがった、一生忘れねぇぞ。

 何というか俺は拍子抜けだった。ボランティアサンタの入り口がアカリさんだったので幾分覚悟していたのだが、どうにも他の人はあくまで片手間にやっている印象というか何というか、それなりに頑張ろうと思っている俺が馬鹿を見ているようだった。ある参加者は街中でこのサンタの恰好見られるのが恥ずかしいから現地で着替えるようにしないかとアカリさんに提案していた。

 困り笑いで受け流していたアカリさんよりも隣でそれを聞いていた俺の方がイライラしてしまった。

 俺はいつだったかアカリさんに不満を漏らすと、アカリさんはまた困り笑いを浮かべながら「まぁ、あくまでボランティアだからね。仕方ないよ」と言っていた。アカリさんは管理人としてどこか団体に対して一歩線を引いているような節があった。団体の限界を悟っているようなそんな一面がアカリさんにはあった。

その一方で俺にだけこっそり「ケン君のサンタがやっぱりダントツでクオリティ高いから、当日の訪問数、他の人よりだいぶ多くしちゃった。ごめんね? その分私も一緒にサポートするから」と言ってきたり、あくまでサンタに対して真摯な所は変わらなかった。

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