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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編

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シェアハウス(仮)

愛依視点です。

 また休み時間になる度に、私への質問は続いた。

 家族構成に血液型に家の住所、好きな動物や嫌いな食べ物……

 そんな事まで知ってどうするっていう事ばかりだ。

 それでもなんとか全部やり過ごして、放課後になった。


「早瀬さん、途中までだけど一緒に帰ろう!」

「ありがとう高坂さん。でもごめんね、私今日は学校の見学をしてから帰るから……」

「なら、私が案内するよ!」

「いいの? ありがとう!」


 高坂さんの好きなレンとかいうのをほめただけなのに、ずいぶんと優しくしてくれる。

 これで高坂さんが金持ちだったら最高なんだけど……


「高坂さん、帰るの遅くなっちゃうんじゃない? 大丈夫?」

「うん。私の家、お父さんもお母さんも働いてるから、いつも帰っても私1人なの。だから大丈夫!」


 共働きって事は、あんまり金持ちじゃなさそうだ。

 それはちょっと残念だけど、まぁ金持ちじゃなくても仲良くしとくにこしたことはない。

 クラスの金持ち情報とか教えてくれるかもしれないし。


「あっちが音楽室で、こっちが図書室。あそこが科学室だね。私達がよく使うのはそのくらいかな?」

「へぇー、結構分かりやすいね!」

「あ、それからここの掲示板は右側が生徒用だから、何かお知らせしたい事があったら、勝手に張って大丈夫だよ」

「掲示板? 生徒が勝手に使えるの?」

「うん」


 今までの学校にはそういうのなかったな……

 じゃあここにお金を下さいって書けばいいのか……って違うか。


「生徒がそんなお知らせする事ある?」

「あるよー。ほら、今も読書会を開きますって」

「これ、生徒が勝手に開くの?」

「もちろん先生の許可はもらってるよ。でも読書会の許可っていうより、図書室の使用許可だね。他にも試食会の開催もよくあるし、ペットの里親募集中とかもあるね」

「そうなんだ」


 少し変わった学校みたいだ。

 生徒の自主性を大切にしてるのかな?


「そろそろ帰ろう」

「うん」


 高坂さんと一緒に帰る。

 新しい家だけど、帰り道はちゃんと覚えているので問題ない。

 私は記憶力もそこまで悪い方じゃないし。


「早瀬さんの家、こっちなんだね。どんなところ?」


 どんなところって……

 マンションというか、でもどっちかっていうとシェアハウスだよね……

 シェアハウス(仮)ってことにしておこう。

 でも流石にシェアハウス(仮)に住んでるとは言えないな。


「うーん、ちょっと狭いマンションかな?」

「へぇ、私はね、3階建ての家なの」


 3階建て!?

 金持ちじゃん!


「す、凄いね!」

「今度遊びに来てね! レンのグッズも沢山あるから!」

「うん!」


 これはラッキーだ!

 高坂さんから家によんでもらえた。

 次までにレンの事をもう少し知っておく必要があるけど……


「じゃあ私、こっちだから。また明日ー!」

「うん。ありがとうー!」


 高坂さんと別れてシェアハウス(仮)に帰ってきた。

 狭い部屋に荷物をおいて……勉強でもするか。

 いや、お父さんが帰って来てすぐに食べれるようにご飯を……

 でもやっぱり、温かいのを食べて欲しいし、先にお風呂に入りにいこう。

 転校初日で色々あったし、ちょっと休みたい……


 お風呂へ行って脱衣所で服を脱いでいたら、女の人が入ってきた。

 中学生位のお姉さんだ。

 昨日のお風呂の時は誰にも会わなかったけど、この人もこのシェアハウス(仮)に住んでる人かな?

 こんな安くていい物件はそうそう見つからないし、ご近所付き合いは大切にしないと!


「あの……私、新しくここに住む事になった早瀬愛依です。小学3年生です」

「そう……」

「よろしくお願いします!」

「……」


って、無視? 無視なの? なんなの?

 クールな感じとかっていうよりは、暗くて人付き合いとか嫌ってそうな印象だ。

 美人なのにもったいない……

 でもまぁ、今のはご近所付き合い的にも、私は何も悪くないはず。

 特に気にしないでいよう。


 昨日はちょっとバタバタしていて、お風呂もゆっくりは入れなかった。

 折角大きいお風呂なんだし、今日はゆっくり入ろう。

 ボディソープやシャンプーも使い放題だし、そういう所は本当に最高だと思う。


「痛っ!」


 髪を洗っていたら、シャンプーが目に入っちゃった……

 シャワー……シャワー……シャワー、どこぉ?

 こういう時、慣れてないから困るな……


「シャワーが欲しいの?」

「え? はい……」

「はい」


 空中をさ迷う私の手に、シャワーが渡された。

 急いで流してみると、さっきのお姉さんだった。

 私のためにシャワーをとってくれたみたいだ。


「ありがとうございます」

「……」


って、これは無視なんだね……

 よく分かんないけど、優しい人みたいだ。

 結局そのあともお姉さんとは全く会話をしないまま、お風呂から上がった。


 お風呂も終わったので、調理室へ行って今日の夜ご飯を作っていると、


「おや? 初めてお見掛けしますね?」


と、声がした。

 振り返ってみると、スーツ姿のお姉さんが立っていた。

 最初にこのシェアハウス(仮)に案内してくれたお姉さんと、同じスーツだ。


「はじめまして。私は、新しくここに住む事になった早瀬愛依です」

「そうなんですかー。私は綾瀬久実といいます。ここには住んでないですけど、隣の社員寮に住んでます」

「社員寮?」

「はい。この調理室は、あっちの社員寮とも繋がってるんですよ。私みたいなのがたまに来ると思いますので、今後ともよろしくお願いしますね」

「はい」


 私みたいな子供にも、丁寧に話してくれる人だった。

 それに明るいし、話しやすい。

 さっきのお姉さんとは全く逆のタイプって感じだ。


「愛依さんは小学生何年生ですか?」

「あ、3年生です」

「学校は楽しいですか?」

「うーん? まだ今日が転校してからの初登校だったので……」

「そうなんですね。お友達、沢山出来るといいですね」

「はい!」


 私としてはお友達沢山より、金持ちと友達になることの方がいい事だけどね。


「って愛依さん? 夕食はこれだけですか?」

「はい! モヤシが安かったので」

「育ち盛りがダメですよ。これも使って下さい」


 綾瀬さんは私がモヤシを炒めていたフライパンに、鶏肉を入れてくれた。


「え? あの……」

「お近づきのしるしにもらっておいて下さい」

「でも……」

「私は綾瀬、愛依は早瀬で"瀬"仲間ですからね! では私はお先に失礼しますね」

「あ、ありがとうございます!」


 綾瀬さんは自分のご飯を作ったようで、そのまま調理室から出て行ってしまった。

 また会えるといいな……

 それにしても、よく分からない人が多いな。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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