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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode4 オークション編

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時間稼ぎ

記者視点です。

 拒否されると思っていたのに、俺の質問を許可した奏海。

 正直驚きだ。

 

 奏海の会社スノーフレークは、少し前に囮作戦で殺し屋を捕まえたという噂が流れた。

 あの噂でスノーフレークの印象は、若干悪くなっているともいえる。

 そんな状況だからこそ、おそらく奏海はスノーフレークのイメージアップをしたいのだろう。

 時間がない中でも、取材陣の質問に最後まで答えようとすることで、世界に好印象を与えようとしているのかもしれないな。


 だが、俺が聞きたいのはイヤリングについてだ。

 結局変なデザインのイヤリングは何なのかが分かっていない。

 奏海だって、おそらくはこのまま語らず終わりにしたかったはずだ。

 俺の質問を許したことを後悔するんじゃないか?


「そのイヤリングに使われている一番大きな飾りは、人造石との事でしたが、それは一体何なんですか?」


 奏海は俺の質問に対し、動揺することもなく、


「これは、ただの人造石ですよ」


と言ってきた。

 当然、そんな答えでは納得できない。


「では何故、高価な宝石よりも、そのただの人造石の方が大きいデザインなのですか?」


 そんな変なデザインは普通存在しない。

 あの人造石は何か特別な物のはずだ。

 それを公表もしないで、ただの友人のイヤリングですと言われて、誰が納得するってんだ。


「確かにこれはただの人造石ですが、友人の思い出の石なんです」

「思い出?」

「友人の父親が、こういった人造石を生成する仕事をしておりまして、この人造石は偶々出来た失敗作だったそうです」

「失敗作?」

「ですが、その失敗作の人造石がとても綺麗だと友人の母親が気に入り、イヤリングにしたそうなんです」

「ではこのイヤリングは、ご友人のお母様が作られたのですか?」

「はい。とても器用な方だったと聞いています。ですから、私達には周りの宝石位にしか価値のない、ただの人造石のイヤリングに過ぎませんが、友人にとっては両親との思い出の詰まった、とても大切な宝物なんです」


 だから変なデザインだったのか。

 そもそもが売り物でなく、家族の思い出の品として作ったものなら、万人受けするデザインじゃない事にも合点がいく。

 だがそこまで面白い回答でもなかったな……


「あのー、こっちも質問いいですか?」


 俺の質問への答えももらったところで、今度は別の取材陣が手をあげた。

 司会者が一度奏海の方を見ると、奏海頷いた。

 質問OKという事だろう。


「はい、そこのあなた、どうぞ」

「そのご友人とは、どこで知り合われたのですか?」


 いい質問だな。

 人造石を作る仕事の父親に、オークションに出ていてもおかしくないレベルのイヤリングが作れる母親を持つ、奏海の友人。

 奏海がここまで協力している事から考えても、かなりの権力者のはずだ。


「そうですね……仕事の関係で知り合った友人です」

「ご友人の年齢は?」

「そういった友人のプライベート情報は控えさせていただきます……」


 やっぱり友人については語らないか……

 まぁ、そうだろうな。

 奏海は、ケヴィンの名前はうっかりで言ったくせに、友人の名前は一度も言っていないんだから。


「次、こっちの質問いいですかー?」


 俺の質問を皮切りに、他の取材陣達もどんどん質問し始めた。

 まぁ奏海に好きなだけ質問ができる機会なんてそうはないし、誰もが聞き出せるだけ聞き出そうとしているんだろう。


 何処の国の奴かも、何語かもよく分からん質問もあったが、奏海は全てに言語を合わせて答えていた。

 一体何ヵ国話せるんだか……


 そんな質問だらけで大騒ぎになっていた会場に、突然、


「た、大変です!」


と、慌てた様子で乱入してきたのは、オークション側のスタッフだ。

 全員が何事なのかと、そのスタッフの方を見た。


「たっ、たった今、このイヤリングの出品者であるミスターケヴィン・グリーンから、連絡が入りました!」


 スタッフは慌てながらそう言った。

 匿名で出品していたっていうのに、何の連絡をしてきたんだ?


「な、なんと! それで、ミスターグリーンは何と?」


 司会者がスタッフに続きを話すように促すと、かなり動揺した様子で、


「そ、それが……同じイヤリングを見せられただけでは信用出来なくて、申し訳なかった。そんなに大切な物とも知らなかった。金は受け取らないから、早急にイヤリングを持ち主に返して欲しい……との事です」


と、メモの紙を読み上げた。


「な、なんという展開……」

「まぁ!」


 突然の連絡に、会場も静まり返っていた。

 司会者も言葉を失っているし、奏海は口を空け、その口元を手で隠している。

 まるで驚いているみたいじゃないか。


 その、どちらかと言えばわざとらしいような驚いた演技を見せられた俺は、ようやく分かった。

 奏海が何を狙い、何の為に来たのかという事が……

 俺や他の取材陣達からの質問を許したのは、時間稼ぎをしていたに過ぎなかったんだ。

 俺達は利用されたんだ……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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