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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode4 オークション編

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繋がり

記者視点です。

 俺の抱いた疑問も解決しないまま、オークションの緊急生放送は進んでいる。

 奏海は落札したイヤリングと、持ってきていた方のイヤリングを並べ、取材陣に見せていた。


「これは間違いなく同じものですね。先程の話だと、ご友人が同じものを見せて自分の物だと主張した、との事でしたが、当オークションに出品されているという事は、ご友人の物だと証明できなかったのですか?」

「はい。やはり、同じ物という事だけでは、証明にはなりませんから……」


 確かに同じイヤリングを持っているというだけでは、所有者であるという証明にはならない。

 単に同じ物を持っていただけという可能性もあるからな。


「ですが何故、当オークションに?」

「何でも、拾って下さった方が、オークションに一度出品してみたかったとの事で……」

「そんな理由で返してもらえなかったのですか?」

「はい。その上、イヤリングはオークションに出品する事にしたから、どうしても欲しいのなら金で買えと言われてしまったそうなんです」

「それは酷い話ですね」


 つまりさっき名前の上がったケヴィンという奴は、拾った落とし物を持ち主に返さず、オークションに出したという事か。

 会場からは、


「ケヴィン、最低な奴だ」


とか


「拾い物で1億ドルとか、ケヴィンの野郎……」


などと声が上がり、ケヴィンに対する盛大なブーイングが起こっていた。


 まぁ、確かに落とし物をオークションに出したというのは最低だと思うが、落とし物を自分の物にする位の事は、この世の中にごまんとある。

 このブーイングを起こしている奴の中にも、そういう経験のある奴はいるだろう。

 それを棚に挙げて、ケヴィンを非難しているんだ。

 これは1億ドルという金額だからこそのブーイングだろうと思うと、どいつもこいつも愚かに思えた。


「えっと……皆様、静粛にお願いします!」


 司会者の声で、会場は静になった。

 奏海は今のブーイングの間も特に表情を変えず、カメラ目線で微笑んでいる。

 一体どういう心境なんだろうな……


「えっと、つまりミス桜野? 貴方は友人のイヤリングを取り返してあげるために、今回のオークションに来られたのですね?」

「はい。このオークションに出品するという話は、友人に聞いておりましたので」


 今回のオークションは、目玉だった絵のみ出品が発表されていて、イヤリングが出品されるという事は、オークション主催者側と出品者側しか知らなかったはずだ。

 それなのに奏海は1億ドルという大金を出してまで、イヤリングを落札した。


 普通初見でそんな大金を出すことはあり得ないし、あの奏海が欲しがっていると言うことは、単にデザインが気に入ったとかではないだろうと、もしかしたら裏で出品者と繋がっているんじゃないかと誰もが思っていた。

 だがまさか、出品者と繋がっている奴と繋がっているとは……

 これはもう繋がっているとは言えないか?


「ですがご友人の為とはいえ、よろしかったのですか? こんな高額になってしまって……」

「私もまさかこんな高額になるとは思っておりませんでしたので、驚いております。ですが私は、どうしても取り返さなければいけなかったのです」

「ご友人に返してあげたいですからね」

「はい。彼女がどれだけこのイヤリングを大切にしていたのかは、私もよく知っています。今はお金の事なんかより、無事にイヤリングを返せるという事に安堵しています」

「そうですよね。ご友人もきっと喜ばれていますね!」

「はい、ありがとうございます」


 奏海はカメラ目線バッチリで笑った。

 どうみても作り笑顔だ。


 いい感じに話がまとまって、お開きという雰囲気になっているが、そうはいかない。

 会場が少し静かになったタイミングで、俺は手を挙げ発言した。


「すみません! 質問をよろしいでしょうか?」

「おっと……申し訳ございませんが、皆様からの質問はお断りさせて頂きます。皆様が質問したいという気持ちも非常に分かるのですが、ミス桜野には時間がありませんので……」


 俺の質問は司会者に断られてしまった。

 でもこれは仕方のない事だ。

 そもそも取材陣個人からの質問や、それによる混乱を防ぐ為に司会者が用意されていると言うことは分かっている。

 だから俺自身でさえ、俺の質問は断られるだろうと思っていたし、俺も諦めないでもう一度攻めようと思っていた。


 それなのに、


「いいえ、私は構いませんよ。まだ時間もありますから。皆様全員からの質問にお答えする事はできませんが、時間の許す限りはお答え致します」


と、奏海は言った。


「おぉ! ありがとうございます。では、最初に手を挙げられたそこのあなた、質問をどうぞ」


 司会者に当ててもらえたので、俺は質問する権利を得た。

 さて、では聞かせてもらおう。

 実は友人のものでしたー! というインパクトの強さで、誰もが忘れてしまっているようだが、そもそもあのイヤリングの人造石とは何なのかを。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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