パラサイト
ケヴィン視点です。
生放送の特番で、桜野奏海は俺の名前を言いやがった。
しかもどこに住んでるかまでもバラされ、俺が匿名で出品した意味はなくなった。
あのガキ、あの時の俺の態度に腹が立ったんだろうが、こんな風に仕返しをしてくるとは……
なんてたちの悪いガキだ。
確かに同じイヤリングを見せながら、大事なものだ、返してほしいとは言っていたが、それしか言わなかった。
金持ちの知り合いがいるとも言わなかったし、俺がオークションに出すと言ったら、諦めたように帰って行ったくせに……
「お、おいっ! ここだ、ここだよケヴィン・グリーンの家!」
「マジかよ……」
「こんな偶然あるんだな……いいよなぁ、拾いもんで大金ゲットとか」
「なぁ、ちょっとインターホン押してみようぜ!」
「それでケヴィン・グリーンが出てきたら、どうするんだよ?」
「そりゃ、インタビューするに決まってんだろ!」
外の男達が、俺が匿名出品のケヴィン・グリーンだと気づきやがった。
何がインタビューだ。
俺はインターホンがなっても、絶対に出てやる気なんてないからな! と、思っていると、
♪♪♪♪♪
インターホンではなく、俺の携帯がなった。
5年前に別れた彼女からだ……
「何の用だ?」
「あっ! ケヴィン、久しぶりね。ねぇ、少し話したい事があるんだけど、会えないかしら?」
「はぁ? お前とは終わったんだ、会う気なんてないぞ」
「そう言わないでよ。あの頃の事は謝るから」
急になんだ? アイツらしくないな……
いつも高飛車なアイツが、俺に謝るなんてあり得ないだろう。
まさかっ! アイツ、この生放送を見てたんじゃないか?
それで俺だと気づいて、俺の金を狙ってかけてきたんだな。
「お前とはもう会わん!」
「あっ! ちょ……」
電話は切ってやった。
だがアイツなら、諦めずに家にまで押し掛けて来るかもしれないな……と、思っていると、
♪♪♪♪♪
と、また携帯がなった。
全くしつこいな、またアイツか? と思うと、今度は学生時代の友人からだった。
でも向こうは結婚して子供も出来て忙しいとかで、もう10年以上は会ってない。
そんな奴が今、このタイミングでかけてくるか?
「久しぶりだな、どうした?」
「いやー、本当に久しぶりだよな! なぁ、久しぶりに会わないか? お互い最近の話と聞きたいし」
前に俺が遊びに誘った時、お前は拒否したじゃないか。
その時に言われた言葉を送り返してやる!
「悪いが俺は忙しくてな、お前の為の時間はとれそうにない」
俺があの時どれだけ腹がたったか、お前に分かるか?
という思いで、俺は言い返したのに、
「そうか……なら、俺が遊びに行くよ! わざわざ来てもらうのも悪いし、今度の休みに行くから」
と、勝手に会いに来るつもりでいやがる。
せめてあの時の事を謝るんだったら、少しは奢ってやってもいいかと思ったが、必要ないな。
今までなんの連絡もなかったくせに、俺に金が入ったと分かった途端に友人面とかウザすぎるだろ!
「悪いがその日、俺は出掛けてる。忙しいから切るぞ」
「おい……」
どいつもこいつも……本当にいい加減にしろってんだ。
1億ドルは全て俺の物だ!
絶対に誰からの誘いでも断ってやる!
♪♪♪♪♪
今度は家の固定電話が鳴った。
友人や、元カノなら携帯にかけてくるし、固定電話ならこの生放送に関係ない、本当に俺に用事がある奴だろう……
「はい」
「あぁ、ケヴィン君、久しぶりだねぇ」
「すいませんが、どちら様で?」
「ん? ほら、君のお爺さんのお兄さんのとこの方の……まぁ、前にあっただろう? 昔から君のお父さんとは仲が良くてねぇ。ケヴィン君ともよく遊んだじゃないか」
「はぁ、そうでしたか?」
誰かと思ったら、遠い親戚の誰かだった。
本当に誰だかも覚えてない……
「いや、実は今日電話したのは、うちの母親の病気がちょっと重くてねぇ。手術費用が結構かかりそうなんだ」
「そうですか、大変ですね」
「何だ? まるで他人事みたいに言うなぁ」
「全然覚えてないんで……」
「そう冷たい事を言うもんじゃないよ」
プップッ プップッ
ん? キャッチホンがなってるな……
「まぁ、なんだ……久しぶりに会いに来ないか? 母さんも会いたがってるんだ。母さんは本当にケヴィン君の事を大切に思ってるんだよ」
「俺、金ないんで」
「はぁ? 何で? だって君……」
「じゃ、失礼します」
よく分からん親戚からの電話も切る。
さっきキャッチホンがなってたのも、どうせ今の感じだろう。
♪♪♪♪♪
また携帯がなってるな……
もう電源を切っておくか。
ったく、桜野奏海……とんでもなく迷惑な事をしてくれたもんだ……
こりゃ金が入ったら早々に引っ越して、セキュリティの強化をした方がいいか?
いや、そんなのに金使ってたら例え1億ドルといえど、すぐに無くなっちまうじゃねぇーか!
どうしたもんか……
「もう絶対に間違いねぇよ!」
「そうだな! さっきから滅茶苦茶電話が鳴ってたしな!」
ピンポーン! ピンポーン!
窓から聞こえる外の男達の声が聞こえたと思ったら、インターホンを鳴らして来やがった。
誰が出てやるか!
「おい、出ねぇぞ」
「でも絶対に中にいるはずだろ?」
「ってか、そこから入れるじゃん」
「本当だ。ここから入ったら、庭からケヴィンに会えるんじゃねぇか?」
「そうかもな!」
はぁ!?
あの男達、なに考えてんだ! 不法侵入だぞっ!
兎に角、警察に電話か……
携帯はさっき電源を切っちまったし……
♪♪♪♪♪
固定電話から警察にかけようとすると、逆に固定電話がなった。
俺はこの電話地獄のせいで、警察に電話をかける事も出来なくなっていた……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




