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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode4 オークション編

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注目

ケヴィン・グリーン視点です。

 今日はオークションの日だ。

 俺はいつもなら見ないようなその番組を見るため、テレビをつけた。

 このオークションには各国から美術品等が集まり、金持ちがそれを買っていく。

 俺も一度くらいやってみたいもんだ。


「続いてこちら!」


 ネックレスに、皿に、壺に……どんどんと落札が決まっていく。

 今回のオークションには物凄く有名な絵が出るとかで、誰もがそこに注目している事だろう。


「なぁ、今日あのオークションの日じゃね?」

「そういえばそうだな……」

「なんかそこの家からオークションっぽい音聞こえてるし、時間的にもう始まってるって!」

「なら携帯での配信見るか?」

「おぉ、見る見る!」


 窓が開けっ放しだからか、外からそんな会話が聞こえた。

 若い2人の男達が、オークションの配信を見始めたみたいだ。

 あいつ等もあの絵を誰が買うのか、価格はいくらになるのか、そういった事が気になっているんだろう。

 だが、俺の注目は違う。


「続きまして、こちら!」


 次に見せられたのはイヤリングだった。

 来たっ! 来た来た来た来た、待ってました!

 これこそが俺の注目のイヤリングだ!


「こちらは細部まで丁寧な細工がしてあり、各所に宝石があしらわれています。使われている宝石は、ルビー、サファイア、そしてダイヤモンドです! 1番大きな飾りは宝石ではなく人造石かと思われますが、そちらも宝石に見劣りしない美しさです!」


 そうだ、そうだ!

 かなり価値のあるものだぞ、金持ち達よ!


「1つしかございませんので、両耳に着けていただく事は出来ませんが、観賞用としていただいても十分に豪華な品物です!」


 両耳に着けれなくったっていいじゃないか!

 飾ればいい!

 そうだろう?


「今回こちらを出品して下さった方は、匿名とさせて頂いておりますので、ご紹介は出来ませんが、このイヤリングは我々の鑑定済みですので、ご安心下さい!」

「おいおい、匿名出品だってよ」

「怪しいよな。なんか人造石とか言ってたし、こんな怪しいもん、誰が買うんだよな」


 外の男達はそんなことを言っている。

 だがな、買うもんなんだよ、金持ち達ってぇのは。


「では1万ドルからスタートです!」

「2万ドル!」

「3万ドル!」

「4万ドル!」

「4万5千ドル!」

「5万ドル!」


 何故俺がこんなにも興奮しているのかといえば、何を隠そう、俺こそがあのイヤリングを出品したケヴィン・グリーン様だからだ!

 ずっと前から、こういうのに一度出品してみたかったんだ。

 思わぬところで偶々手にいれたもんだし、あのイヤリングに特に思い入れがあるわけでもない。


「10万ドル!」


 おぉっ! 10万ドル!

 テレビに映ってるのは、かなり有名な金持ちのオヤジだ!

 もう決まりだな!

 最高だ、こんな大金が簡単に手に入るなんて……


「20万ドル」


 おっ!?

 もう決まりかと思ったら、若い女が金額を上げた。

 そうだよな、やっぱ女はアクセサリーとか好きだよな。

 にしても見たこともない女だな。


「30万ドル!」


 お、またオヤジの方が上げたぞ!


「50万ドル」


 すると今度は女も上げた!

 ご、50万ドルとか……!


「70万ドル!」


 ちょ、ちょっと待てよオヤジ……

 俺の心臓が持たないって……

 70万ドルかぁ……


「100万ドル」


 ひゃ、ひゃ、ひゃ……100万ドルっ!?

 聞き間違いじゃないよな!?

 100万ドルもあったら相当遊んで暮らせるぜっ!


 それにしてもあの女は何者だ?

 あの有名なオヤジと競うなんて……


「なぁ、アレ……桜野じゃないか?」

「あぁ、本当だ桜野奏海だ!」


 オークション会場の声で、そう言ってるのが聞こえた。

 あの女は、桜野奏海というらしい。

 俺は知らないが、会場がこれだけ騒がしくなるという事は、相当な有名人なんだろう。


「おいっ、桜野奏海だってよ」

「マジかよ……」

「このイヤリング凄いもんなんじゃねぇの?」

「そうだな」

「出品者も匿名とか言ってたし、なんか怪しい裏がありそうだよな」

「絵より面白くなってきたな」


 外の男達もそう言っている。

 そんな凄い人物なのか、あの女は……

 会場もかなりざわついているようだ。

 外の男達と同じように、誰もがあのイヤリングを訳ありだと思っている。

 でも出品者が俺である以上、出品者との関係に裏も何もない。


 このオークションは、目玉であるあの絵は最初から発表されていたが、他の品物の発表は当日だ。

 つまりあの女があのイヤリングの存在を知ったのも、ついさっきって事になる。

 俺にはあの女が、今デザインが気に入ったとかで欲しくなって、落札しようとしているようにしか見えないんだが……


「500万ドル!」


 …………はぁ!?

 ご、ごひゃくまんどる?

 何それ……意味がわからん……

 今度上げたのはなんか博士っぽい奴……


「は、博士……我々の目的はあのイヤリングではありませんよっ!」

「分かっとる。しかし先程のあのイヤリングの説明を思い出してみろ! 1番大きな飾りは人造石だと言ったんだぞ」


 ほら、博士って呼ばれてるし、博士なんだよ……

 ちょっと待ってくれ、思考が追い付かない……

 500万ドルだぞ……

 それが俺のものに……


「ほら、人造石とか言ってんぞ!」

「なんか秘密の宝石なのかもしれねぇなっ!」

「あれじゃね? 光を当てると財宝の在処を示す、地図が現れるとか!」

「ファンタジーな思考回路してんな」

「なんだよ、悪いかよ」

「別に、いいんじゃね。俺も似たこと考えてたしー」

「だよなー」


 外の男達のお気楽な会話が聞こえる。

 全く人の気も知らないで……いや、知らなくて当然だが。

 あのイヤリングはちゃんと鑑定に出した。

 そこでもちろん光も当てているし、あの人造石は何でもないただの石だった。


「600万ドル!」

「700万ドル!」

「800万ドル!」


 会場の金持ち達が、あのイヤリングを手にいれようと動き出した。

 あの女が買おうとしているだけで、この騒ぎ……

 一体何者なんだよ……


「1千万ドル!」


 金額が俺の予想の遥か上を行きすぎて、逆に冷静になってきた……


「に、2千万ドルっ!」


 震えながら手をあげる博士……

 だが博士の事なんて全く相手にしていないオヤジが、


「5千万ドル!」


と、席から立ち上がり女の方を睨みながら金額を上げた。

 俺が出したイヤリングを、あの金持ちオヤジと謎の女が競ってる……

 なんなんだ、これ……

 夢か?


「1億ドル」


 試合終了の合図のような、静な声が響いた。

 落札が決まり、女の顔がアップでテレビに映る。


 何故かテレビに映ってるその女と、目が合った気がした……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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