目玉商品
episode4になります。
記者視点です。
アメリカで行われる国際的にも注目の集まるオークション。
このオークションには各国から金持ち達が押し寄せる。
今回の目玉は絵画だ。
アレは1千万ドルは下らない逸品だろう。
俺は金持ちじゃない、ただの記者だ。
このオークション会場にはスクープ目当てで来た。
今回の注目は、あの絵画を一体誰がものにするのかといったところだ。
「続いてこちら!」
どんどんと美術品が紹介されていく。
アクセサリーに陶芸品、俺には何がいいのか全く分からん代物ばかりだ。
そしてそれを金持ち達が落札していく。
この金持ち達も、本当に価値が分かって落札しているものは、一体何人いるんだろうか?
俺にはただの財力自慢にしか見えないな。
「続きまして、こちら!」
今度出てきたのはイヤリングだった。
「こちらは細部まで丁寧な細工がしてあり、各所に宝石があしらわれています。使われている宝石は、ルビー、サファイア、そしてダイヤモンドです! 1番大きな飾りは宝石ではなく人造石かと思われますが、そちらも宝石に見劣りしない美しさです!」
確かに綺麗なイヤリングだが、それだけだ。
誰が有名人が着けていた物だとか、何か曰くがあるという訳でもない。
「1つしかございませんので、両耳に着けていただく事は出来ませんが、観賞用としていただいても十分に豪華な品物です!」
イヤリングなのに片方だけの出品とか……
その理由も言わないとなると、若干曰く付きの代物かとも思うが、おそらく単純に、もう片方は壊れたから要らないないと思った持ち主が売ったというところだろう。
「今回こちらを出品して下さった方は、匿名とさせて頂いておりますので、ご紹介は出来ませんが、このイヤリングは我々の鑑定済みですので、ご安心下さい!」
匿名出品とまでなれば、間違いない。
片方を壊したから出品したんだ。
アレも特に記事にする必要もないイヤリングだな。
「ねぇ、私アレ欲しいわぁ」
「では私が買って、君にプレゼントしようじゃないか」
「わぁ! 素敵っ!」
俺の前にいる金持ちのオッサンと若い女がそんな話をしていた。
そのオッサンをよく見ると、世界的も有名な金持ちだった。
こりゃあのイヤリングはコイツらが買って終わりだな。
そんなもんより目玉だ。
あの絵を誰がものにするかが今回の注目だ。
「では1万ドルからスタートです!」
「2万ドル!」
「3万ドル!」
「4万ドル!」
「4万5千ドル!」
「5万ドル!」
イヤリングの金額が順調につり上がっていく。
まぁ、何か特別なものという訳でもないが、なかなかいいデザインのようだし、俺の前にいるオッサン達以外にも普通に欲しいと思う奴はいるんだろう。
正直こんなのはどうでもいいので、早く目玉の絵画を出して欲しいな……
「10万ドル!」
ついにオッサンがあげた。
それも腹のたつ程に余裕な態度だ。
どうせその隣の女だって、奥さんとかじゃないんだろ?
家族でもないその辺の女へのプレゼント用に、簡単に10万ドルを出せるとか、本当にイカれたヤバイオッサンだな。
元の10倍の金額だし、さすがに決まりだろうと思った時、
「20万ドル」
という凛とした声が聞こえた。
声のした方を向くとまだ若い女性だ。
しかも一気に倍につり上げてきた。
誰だ? 見覚えがあるような気もするが……
「30万ドル!」
前にいる金持ちオッサンは、もう決まった物だと思っていたんだろう。
予想外の声に少し驚いた様子ではあったが、大して気にすることもなくまた金額をつり上げた。
30万ドルになろうがこのオッサンの気にする金額ではないんだろう。
しかし女性はそれを気にする様子もなく、
「50万ドル」
と、冷静な態度でまた金額を上げた。
「お、おい誰だ? あの女は?」
「見覚えねぇよな」
「ここの常連じゃないな」
流石にこれには会場も無視できないようで、少しざわめき始めた。
何より、金持ちで有名なオッサンに張り合おうとしているのだから、誰もが気になるだろう。
「70万ドル!」
少し苛立った様子で、オッサンも負けじと金額をあげた。
いくら金持ちとはいえ、予定外の買い物にこんな金額を使うと思ってなかったんだろうな。
それにこれは、このオッサンにとっては横にいる女へのプレゼントだ。
ここで手に入れれないのは格好が悪い。
「100万ドル」
冷静な女性は変わらず金額をあげる。
おいおい、100万ドルとか……
本当に何者だ? あの女性……
「なぁ、アレ……桜野じゃないか?」
「あぁ、本当だ桜野奏海だ!」
「何っ? 桜野奏海だって? あの桜野グループの若き会長のか?」
「あぁ、間違いねぇよ。この間、あの赤い羊の時に顔が公表されたんだから」
会場からそんな会話が響いた。
そうか、どこかで見たことあると思ったが、あれが桜野奏海だったのか。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




