質問と回答
創太視点です。
「ななさん、僕も1つ聞いてもいいですか?」
「何かしら?」
ななさんの笑顔は反則的に可愛かったので、そんなものを向けられて正直かなり照れた。
なのでその照れを誤魔化すように、僕も質問をすることにした。
本当は、聞きたい事は1つどころじゃないんだけど……
「あの……何で最初、自分の携帯から婆ちゃんにかけて、自分の携帯の番号を教えたんですか?」
「あら、そんなことをまだ気にしていたの?」
「だってあの時ななさんが言った、人のものを勝手に充電しようと思わないからって、嘘ですよね? 僕の荷物は平然と漁ってましたし」
ずっと気になっていた。
僕にバレずに家族と連絡をとりたかった訳でもないなら、夜中にわざわざ婆ちゃんにかける必要もない。
僕の携帯だって、隠してあった訳でも、ロックがしてあった訳でもないんだから、勝手に充電して使えばいい。
なのに、わざわざ自分の携帯を使ってる。
その理由も、あの時は人の物を勝手に充電しようとは思わないなんて言ってたけど、最初に僕の荷物を平気で漁ってたななさんが、そんな事を気にしているとも思えない。
だから本当にずっと分からなかった。
あの時は、どれだけ聞いても適当に返事をされるだけだったから聞くのをやめたけど、今はななさんの行動の真意が知りたい。
「別に嘘を言ったつもりはないわ。本当に人の物を勝手に充電しようとは思わないの。荷物を漁ってたのは、漁る必要があったからよ。もし危険物を持ってたら危ないでしょ?」
「それは確かにそうですが……」
なら本当にななさんは、人の物だから勝手に使わなかっただけなのか?
いや、それだったらわざわざ夜中に婆ちゃんにかける意味が分からない。
「でもそれだけが理由で、自分の携帯を使った訳じゃないんですよね?」
「まぁ、そうね」
「わざわざ夜中に自分の携帯から婆ちゃんにかけたりして、僕に知られないように僕の家族と連絡を取りたかったのなら分かりますが、そうでもないみたいですし……他の理由はなんなんですか?」
僕がそう聞くと、ななさんはクスッと笑って、
「そもそも、創太が悩んでいる問題は1つじゃないのよ。1つづつ分解して考えないと」
と、答えられた。
正直、よく分からない……
「どういう意味ですか?」
「まず1つは、私が夜中にお婆様に電話をかけたのは何故か。そして、2つ目に私の携帯を使用したのは何故か。それと最後に、私が創太の家族と連絡がとれているという事を知られたくなかった相手は、創太じゃないわ」
「全部答えが違うんですか?」
「そうね」
僕は3つの問題を1つの答えにしようとしていたのか……
「1つ目の夜中に婆ちゃんに電話をかけたのは、僕に電話を知られないようにするためですか?」
「そうね。創太に聞かれないように電話をするために、失礼を承知で電話をかけたわ」
分解して考えたのなら、夜中にかけたのが僕に聞かれないように僕の様子を伝える為だったのは分かる。
この問題に、なんでななさんの携帯を使ったのかは関係ないんだ。
僕の携帯を使うにしろ、自分のにしろ、僕がいるところで家族に僕の様子を伝えるのは、僕がどんな奴なのかも分かってない状況では、危ない行動だ。
何をし出すかも分からないから……
これで、1つ目の問題は解決している。
後は2つだ。
ななさんが自分の携帯をあえて使った理由と、僕の家族と連絡がとれるということを知られたくなかった相手……
そもそもななさんは、次の電話は婆ちゃんからかけさせて、スピーカーにまでして僕が気付くようにしている。
婆ちゃんがななさんの電話番号を知っていた時点で、もう既に1回は電話をしていたという事が僕に知られてしまう。
それにさっきななさんは、電話を僕に気付かれないようにではなく、聞かれないようにと言っていたし、それなら、内容を聞いていなければ、電話をしたという事実は知られてもよかったという事になる。
それはそれでその時の電話内容が気になるけど、それは後で婆ちゃんに教えてもらえばいい。
婆ちゃんがななさんを信用する切っ掛けになった電話な訳だし、流石に覚えているだろう。
つまり僕には最初から、婆ちゃんと連絡がとれるという事を隠すつもりがなかったということだ。
わざわざ自分の携帯を使って夜中にかけて、なのに隠してない……
だから僕は余計に悩んでいた訳だけど、そもそもその問題の答えが違うのなら、一緒に考えてはいけなかったんだ。
分解して考えないと……
「じゃあ結局の所、ななさんがあえて自分の携帯を使った理由はなんなんですか?」
「私が創太の家族関係に介入する為よ」
「介入?」
「ふふっ、順を追って説明していきましょうか?」
「お願いします」
僕がななさんの言葉に悩んでいると、何処か楽しそうなななさんが説明を始めてくれた。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




