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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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組み直し

創太視点です。

 午後の授業も終わり、放課後。

 まだ懲りずにアイツ等は僕の所に寄ってくる。

 でも相手をしてる時間がもったいない。

 放課後になってすぐ、僕は走って教室を飛び出した。

 まさかそんな事をするとは思っていなかったようで、アイツ等も呆気に取られていた。


 誰がどう見ても奇行以外のなんでもない行動だ。

 でも今更教室の皆にどう思われようとどうでもいいし、気にしない。

 そんな事より"早くななさんに会いたい"という、その思いだけで走って帰る。


「おう、創太! 廊下の全力疾走は危ないぜ」

「あ、駿介……はぁ、うん。それは分かってるんだけどね……急いで帰りたいんだ……」

「そうか、気ぃつけてなー」

「ありがとう、()()()()ー!」


 走ってる途中、駿介が声を掛けてくれた。

 まさか自分が学校で"また明日"なんて言葉を使う日が来るとは……驚きだ。


 自分でも驚くくらいの全力疾走で、ななさんのマンションまで帰ってきた。

 今度は不法侵入せずに、借りた鍵でオートロックのエントランスを開ける。

 エレベーターを使って7階の部屋の前に来た。


 鍵が開いてるからとは言われたけど、いきなり入るのは流石に失礼だと思い、ドア前のインターホン鳴らす。

 けれど返事はなかった……


 もしかしたら、昨日みたいに倒れてるのかも知れないっ!

 そもそもが昨日倒れたばかりなのに、気にもしないで動いてるような人なんだから!

 悠長にインターホンなんて鳴らしてる場合じゃなかった。


 僕は急いで玄関のドアを開け、中に入ってみた。

 でもそこは電気も消えた、暗い部屋だった。

 若干の夕日が窓から差し込んではいるけど、薄暗くてよく見えない。


「ななさん? 居ないんですか?」


 電気をつけて奥の部屋まで行ってみても、ななさんの姿はなかった。

 朝は出しっぱなしになっていたホワイトボードや、僕が使わせてもらっていた教科書等も全て片付けられていた。

 そして何より、ななさんがいつもカタカタとやっていたパソコンもなくなっていた……


 何で……何で居ないんだ……?

 好きに使っていいっていうのは、もう自分は使わないからって事だったのか?

 出掛けたりとかはしない人の筈なのに、いないなんて……

 そういえば真さんが海外の仕事に行くとか言ってたけど、まさかななさんも海外に行ったのか?


 急に訳がわからなくなって、その場に崩れ落ちた。

 ななさんに会いたい一心で、このマンションに来たのに……

 こんな、ななさんがいない部屋……僕にとっては何の意味もない……

 僕は何の為に……


「創太? あら、思ったより早かったのね。そんなとこで座り込んで何してるの?」


と、急に後ろから声がした。

 振り返って見ると、ななさんが玄関に立っていた……


「な、なな……さん?」

「ん? 何?」

「ど、どこに……どこに行ってたんですか?」

「え? 買い物と図書館と、あと何か色々ね」


 何でも無い事の様に、平然とそう返してきたななさん……


 そうか、何で僕は勝手にななさんが出掛けない人だと思っていたんだろう。

 僕と一緒にいた間は確かに一度も出掛けなかったし、真さんが定期的に生存確認してるとかは言っていたけど、よくよく考えたら僕とななさんが最初に出会った時、ななさんは出掛けてたから僕に気付けたんじゃないか。


 今まで出掛けたりしなかったのは、僕の為だろう。

 自殺なんて事をしようとしていた高校生を1人残して出掛ける人なんて、いる訳がない。

 ななさんは元々、普通に出掛ける人だったんだ。

 つまり今ななさんが居なかったのは、ただ単に出掛けていただけの事だ。


「はああぁぁぁ……」


 焦った……本当に焦った。

 ななさんが居なかっただけでこんなに焦るとは……

 安心したからなのか、自分でも驚くくらいの深いため息が出た。


「ちょっと何よ創太、そんなに大きなため息ついて」

「あ、いえ……すみません……」


 座り込んでいても不審なので、慌てて立った。

 ななさんからしたら、今の僕は謎でしょうがないだろう。

 何もない床で座り込んで、盛大な溜め息をついてくるんだから……


「何か気になるけど……まぁ、いいわ。それにしても逆になってしまったわね」

「逆ですか?」


 何が逆なんだろうか?

 僕がそう思っていると、ななさんは、


「創太、ただいま。あと、おかえりなさい」


と、言ってくれた。

 そうだ、ちゃんと組みに戻すって約束だったんだ。


「ななさん、おかえりなさい。ただいまですっ!」


 そう返した僕に、ななさんは笑ってくれた。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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