表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/425

面倒事

創太視点です。

 相変わらず憂鬱な通学路を通を、少し早歩きで学校へ向かう。

 いつもなら下を向いてとぼとぼと歩いていた。

 でも今日は、ちゃんと前を向いて歩く。

 今の僕には、下なんて向いている暇はないから。

 遅刻しそうっていう意味も含めて……


 なんとか遅刻せずに学校についた。

 僕の教室に向かう。

 途中、僕と同じクラスの人達が僕を見て何かこそこそと話していたけど気にしない。

 気にするだけ無駄だし。


「おう、創太じゃねーか」

「お前あんなに学校休んでたのに急に何で来たんだよ?」

「心配してたんだぜー?」


 席につくといつもの奴等が絡んできた。

 まぁ来るとは思ってたけど。


「てか、来たんならほら、いつものあれやろーぜ」

「あぁ、そうだな。創太、後でなー」


 もう先生が来るからか、自分の席へと帰って行った。

 アイツ等はうるさいし、僕に絡んで来るけど、成績や授業態度が悪いというほどでもない。

 なんなら成績は僕よりいいだろう。


 さっきのアイツ等のあの騒がしさに対して、クラスメイトは誰一人として何も言わないし、僕の方を見ようともしない。

 ずっと休んでいたのに急に来たんだから、気になって当然なのに誰も見もしないというのは逆に異常だろう。

 でも、これが当たり前だ。

 面倒事になんて、誰も自ら進んで関わりたいとは思わないものだから。


 つまりこのクラスにおいて異常なのは、勉強ばかりしている割には成績も悪く、友達もおらず、話しかけても暗いだけの僕の方なんだ。

 アイツ等は、その異常者の僕に話しかけてあげている人、という扱いになっている。

 だから余計にアイツ等に対して誰も何も言わない。

 明らかに僕に暴力をふるっていても、僕が抵抗していない以上は、"仲良く遊んでいるのだと思ってました"と言えばいいだけの事だから。


「はーい、皆席につけー」


 先生が入ってきて教卓の前に立つ。

 先生は僕の方を一瞬見て、驚いた顔をした。

 だからといって、特に何かを言われる訳でもない。

 先生と言えど面倒事には関わりたくないんだろう。


 先生もクラスメイトも、いつも見て見ぬふりだった。

 でも僕にはそれを咎める事は出来ない。

 仮に立場が逆だった時、僕は絡まれている子を助けにはいけないだろう。

 しかも、その絡まれている子の方がおかしいという状況だ。

 だから先生やクラスメイトが正しいとはいわないけど、僕には咎める資格はない。

 自分だって一緒で、行動出来ないんだから。


 でも僕は、そんな自分はもうやめるって決めたんだ。

 自殺しようとしている少年を引きずり下ろす勢いのななさんは、自ら面倒事突っ込んで行くような人だ。

 そんな人に憧れてるんだから、僕は自分から変わっていかないといけない。

 まず自分が変わらなきゃ、周りなんて変わる訳がない!


「起立、礼、着席」


 朝の連絡事項が終わり、先生は出ていった。

 最初に僕の方を見てからは、一度も僕を見ることはなかった。

 そして始まる次の授業用の準備時間。

 教室の移動も特にないので、教科書を出すくらいだ。

 だから時間がそれなりにある。


「よー、創太」

「で、お前何で来たんだ?」

「逆に何で休んでたんだ?」

「まぁ、何でもいいけどさ、はははっ」


 案の定、騒がしいのが僕の席に来た。


「てか最近創太が来ないせいで、足が鈍ってたんだよな。ちょっとボール借りるぜー」

「嫌だ」

「あ?」

「見て分からない? それはボールじゃなくて、僕の鞄だから」

「創太の鞄は俺等のボールだろ?」

「だよな、創太?」

「鞄は鞄だから。ボールじゃない」


 少ない休み時間でも、いつもコイツ等は僕の鞄を蹴りあって遊んでいた。

 だからもう鞄もボロボロだ。

 教室の後ろの広いところで遊んでいるので、明らかに皆に見えるけど、誰も止めない。

 そりゃもし止めて、代わりに自分の鞄が蹴られるのなんて嫌だから当たり前だ。


 僕もずっと嫌だった。

 だから鞄提供を断った事は前にもある。

 でもそうなると必ず、


「お前、ちょっとトイレに来い」


これだ。

 さすがに暴力は人前でやるのはよろしくないからな。

 すごい顔で睨んでくるし、行かないともっとキツい事をしてきそうって感じで断れなかった。

 今までの僕だったら。


「僕は行かない」

「は?」

「今、お前なんて言った?」

「僕は行かないって言ったんだ。別にトイレに用事ないし」


 今までは、コイツ等に何か言われても、どうせ言ったって無駄だからと、僕は何も言わなかった。

 より面倒になるくらいなら今のままでいいと、面倒事から逃げていた。

 でも、今ならちゃんと断れる。

 朝、父さん達にあれだけ威勢よく言っておいて、ここで逃げてちゃ話にならない。


「何言ってんだよ」

「何? お前俺等に逆らってんの?」

「そうだよ。僕は自分の行きたくない所へは行かない」

「誰がそんな事を許可した?」


 "行きたくないところには、行かなければいいのよ。でもね、行かなければいけないところには、行きなさい"

 ななさんの言葉が僕の中で再生されてる。

 ななさんはこの場にいないけど、僕の味方でいてくれてるから。

 こんなに心強いことはない。


「僕の行動は僕が決める。僕が行きたいと思った場所に行くし、僕が行きたくないと思った場所には行かない」

「は? なら何? お前は学校に来たくて来たのか?」

「学校は僕にとって来るべき場所だから来た。来たくはなかったけど」

「だったら俺等と来るのも来るべきだろーがっ! 何逆らってんだよ!」

「僕は君たちについていく事に対して、それが僕にとって必要だとは思わない。だから行かない」


 僕は僕の意思で生きるんだ!

 コイツ等に従ってやる必要なんかない。


「創太、お前何急にいきがってんだ?」

「久しぶりに学校来たかと思ったら調子に乗りやがって、この無駄ガリ勉がっ!」

「お前は大人しく俺等にボール提供してりゃいいんだよ。俺等のストレス発散になるしな」

「ストレスを発散したいなら、違う方法でした方が効率的だと思うし、ボール位自分達で用意しなよ」

「なっ! お前っ!」

「おいっ! お前達! 何を騒いでるんだ!」


 急に、戻って来た先生にうるさいと怒られた。


「チッ」


と、舌打ちをしながら僕の席から離れて言った。


 僕が反抗することでむきになったアイツ等は、相当大きな声で怒鳴っていた。

 これは流石に周りのクラス等にも響くし、先生や周りの生徒の見て見ぬふりにだって限界があるんだろう。


 でも、先生が怒った理由はあくまでも()()()()()()だけだ。

 僕に対する行動とかを注意した訳じゃない。


 アイツ等も行った事で僕も少し冷静になって、今のこの状況についてを、客観的に考える事ができた。

 つまりこうやって、クラスへの影響力の大きい"先生"という存在が、アイツ等の行動を黙認している事がこのクラスの一番の問題なんだろうな。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ