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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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言葉の組

創太視点です。

♪♪♪♪♪


 昨日充電させてもらった、僕の携帯のアラームの音で目が覚めた。

 予定していた時間通り、朝の6時だ。


「おはよう、創太。今日は早いのね」


 布団を片付けて部屋を出ると、ななさんがいた。

 今日はいつもと違い、パソコンとカタカタはやっておらず、分厚い本をパラパラとめくっていた。


「おはようございます、ななさん。何時から起きてるんですか? ちゃんと寝ました?」

「寝たわよ。少し前に起きた所」

「寝貯めたからもう大丈夫。とか、思ってませんよね?」

「…………」


 無言で目を逸らされた。

 やっぱり寝貯めたとか思ってるみたいだ。


「ダメですからね。今日もゆっくり休んで下さいよ」

「はいはい」


 そんな雑な会話をしつつ、朝の支度を済ませて、学校の制服を着る。

 荷物も準備し終えてから、まだ少し早いけど朝食を作った。

 もうお馴染みの四角い物体ご飯だ。


「ななさん、少し早いですけど朝ご飯です」

「手慣れたものね」

「そうですね。今日はお昼は作れませんから、ちゃんと自分で用意して、食べて下さいね」


 多分ななさんは、誰かがご飯とか用意しないと食べる事を忘れるんだろう。

 寝もしずに働いてたりするし、自己管理意識が低すぎる。

 だから真さんの仕事に、ななさんの生存確認なんてものがあるんだろうな。

 お昼をちゃんと食べるか心配だ……


「そうだ、はい創太」

「なんですか?」


 渡されたのは鍵だった。


「このマンションの入り口、開けれらないでしょ? 誰かが出たタイミングで侵入してたら、怪しまれるわ」

「ありがとうございます」

「この部屋は外からは鍵がかかってないから、好きに入れるわ。出るのは難しいけどね」


 そんな変な家、普通ないけどな……今更か。

ってか、外から好きに入れるって無用心過ぎないか?


「あの、外に鍵はかかってないんですか? 大丈夫ですか?」

「基本的にいるのは私だし、よっぽど大丈夫よ。私強いし」

「昨日倒れたじゃないですかっ!」

「あれは、たまたま……」

「たまたまでも何でも、もっと気をつけて下さい」

「分かったわよ」


 本当に分かってるのか?

 ななさんは自分の強さとかを過信してないか?

 もっと自分の体を大切にしてほしい。


「まぁでもこの部屋は基本私がいるけど、皆が使う部屋だからね、鍵は開いてる方が都合がいいのよ」

「皆……ですか?」

「えぇ。もちろん創太も好きに使っていいわ」

「はい……」


 ここには大抵の物は何でも揃ってる。

 何も持たずに適当に来たとしても、普通に何日間か過ごせるだろう。

 ななさんのいう皆ってのが誰なのかなんて分からないけど、僕もその1人に入れてもらえてるようで少し嬉しかった。


 でも嬉しい反面、少しもやっとした。

 独占欲かな……?

 そう思う辺り、僕も自分で自分の気持ちをちゃんと自覚したんだろうな。

 これは真さんのお陰だ。


 そんな話をしていたら、朝ご飯も食べ終わっていた。

 朝ご飯の食器等を片付けて、自分の荷物を持って、


「学校の前に家にも寄りたいので、もう行きますね」


と、ななさんに声をかけた。


「分かったわ」


 ななさんは玄関の鍵を開けてくれた。

 そのまま戸も開けてくれて、後はもう僕が歩いて行くだけだ。

 いざ出ると思うと、足が竦んで動かし辛い……

 それでも行くって決めたんだから……

 今度はこの部屋に、無理矢理連れてこられるんじゃなくて、この渡してもらった鍵を使って自分から入って来るんだ!


 僕は鍵を握りしめて、勇気を持って、外へ出た。

 閉じ込められていた部屋からやっと出れた……みたいな感覚は欠片もなかった。


「創太、"行ってらっしゃい"には組になってる言葉があるのよ。私、組が壊されるのは嫌いだから」


 出たところでななさんにそう言われた。

 組になってる言葉か……


「知ってますよ。"行ってきます"にもありますよね。ちゃんと組に戻してみせますから」


 今の僕はもう、このマンションに来た時の僕とは違う。

 自分が世界に必要かどうかなんてどうでもいいし、変な所に旅立とうとも思ってない。

 僕は僕の為にこの世界を必要としてるし、自分の目指すべき夢もある。


「そう。それなら気をつけて、行ってらっしゃい」

「はいっ! 行ってきます」


 ななさんは笑顔で手を振りながら送り出してくれて、僕はこのマンションを後にした。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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