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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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本心

創太視点です。

「うぅ……うん……」


 19時を少し過ぎた頃、ななさんが目を覚ました。


「あ、ななさん。おはようございます。気分はどうですか?」

「ん? そーたぁ?」


 若干寝ぼけているみたいだ。

 ずっと寝てなくて、一気に寝たんだ。

 そりゃすぐには起きれないか。


「ななさん、どうぞ」

「んー」


 とりあえず持ってきておいたお茶を渡したら、普通に飲んでくれた。

 いつもと雰囲気も違い、無防備な感じで……なんか、可愛い……


「あぁ、そっか……私、寝たんだっけ?」

「はい。急に倒れたのでビックリしましたよ」

「それは驚かせて悪かったわね。まぁでも、よくあることだから」

「ありませんよ」


 いつもの調子に戻ってきたな。

 やっぱり倒れた事を悪いとは思っていないようだ。


「あの真さんからの伝言です」

「え、真? 来てたの?」

「はい。ななさんが倒れてすぐにみえましたよ。あと、"これはボスにもしっかり報告しておくからな"って言ってました」

「あちゃー……本当にいつもタイミング悪いのよねー。あと10分、耐えとけばよかった」


 確かにあと10分耐えてたら、真さんが来た時にななさんは倒れてなかっただろう。

 つまりボスって人にも報告はされなかったはずだ。

 でもそういう事じゃない。

 ななさんは、気づかれなければ倒れてもいいみたいな発想をしている。


「そういう問題じゃないです!」

「創太?」

「ななさんは間違ってます! もっと自分の体を大切にして下さいっ!」

「……ごめん。次からは気を付けるから」


 ななさんは僕が大きい声を出したからか、驚いた顔をした。

 それに本当に分かってくれたのかは分からないけど、一応謝ってくれた。

 ななさんは自分が悪いと思ってなければ謝らない人だし、倒れた事は悪いと思ってくれてるんだろう。

 でも無理する人でもあるから、やっぱり心配だ……


 それに真さんだって、これから海外の仕事へ行くとか言ってたし、心配だな。

 あの人もあんまり自己管理できて無さそうだった。

 本当に何なんだ、この変な人達は……

 幼馴染みだとは言ってたけど……


「あの、ななさんにとって、真さんってどんな人ですか?」

「何よ、急に?」

「いえ……その、気になって……」


 真さんはななさんの事を兄弟だと言っていた。

 ななさんにとってはどうなんだろう?


「そうね……口煩い弟って感じかしら?」

「……はははっ」

「何よ創太、聞いといて笑うなんて」

「あー、いえ、すみません。ななさんも真さんもお互いの事、年下だと思ってるんですね」

「年下?」

「真さんも妹って言ってましたよ。生意気な妹だそうです」

「それは腹立つわね」


 ななさんにとっても、真さんは兄弟なのか。

 何か、少し安心した……


「ねぇ、創太?」

「はい?」

「その……どうしてあの日だったの? 遺書まで用意してたって事は、何かあの日に旅立とうと思う切っ掛けがあったんじゃないの?」


 ななさんは僕の方をじっと見つめて聞いてきた。

 今まで僕が自殺しようと思っていた理由とかを、無理に聞き出そうとかはしてこなかったし、興味も無さそうだったのに初めて聞かれた。

 会って最初の頃ならきっと答えなかっただろう。

 でも今は……


「切っ掛けは、赤い羊です……」


 こんな事を言ったら嫌われるかも……という恐怖もあったけど、それ以上にななさんに変な嘘はつきたくなかった。


「赤い羊? この間捕まった、殺し屋の?」

「そうです。あの日の前の日、赤い羊をスノーフレークが捕まえたというニュースを見たんです。会った事はもちろんないですし、メールを送った事すらないんですけど、僕にとって赤い羊は少しの救いだったんです」

「救い?」


 ななさんは僕から目を背けずにちゃんと聞いてくれている。

 だから僕も変に誤魔化さないで、正直に話そう。


「救いというと違う気もするんですけど……僕は学校でその……同級生達に暴言だったり暴力だったり……その、そういう嫌な思いをさせられていました。でも家族には相談もできないし、学校へ行け行け言われるしで、せめてうるさい同級生が消えてくれれば……と思っていたんです」

「それで赤い羊?」

「はい。赤い羊がうるさいアイツらを殺してくれる……そんな想像を何回もしてました。なんならお金さえあれば、本当に頼っていたかもしれません」


 実際にうるさいアイツ等が居なくなってくれる訳じゃないけど、例え想像でもアイツ等を消すことが出来るのが救いだった。

 だから赤い羊の事はヒーローとまでは思わないけど、どこか僕を救ってくれる存在の様に思っていた。

 でも赤い羊は捕まってしまった。


「僕の想像の中で何度もアイツ等を消してくれた赤い羊が捕まった事で、この世界に救いなんてないんだって……そう思ってしまったんですよ……」

「なるほどね……まぁ、他に救いがなかったのなら仕方ないのかもしれないけど、もう少し真面な人に憧れなさい」

「そうですよね……」


 僕の話を聞き終えたななさんは、僕を宥める様にそれだけ言って、僕から視線を離した。

 やっぱり幻滅されて、嫌われたかな……

 でもそれが嘘偽りのない僕の感情だから……


「こんな考えが最低なのは勿論分かってますし、想像とはいえアイツ等を何度も殺した僕は、暴言や暴力を振るうアイツ等とさして変わらないんだと……」

「そこまで自分を責める必要はないんじゃない?」

「え?」

「心の中で何を思おうと、その人の自由よ。自分の心なんだもの、誰かに決められた事を思う方がおかしいでしょ?」

「それは、そうですけど……」


 何てバカな事を考えてたんだって、呆れられてると思ったけど、ななさんは僕を責めたりはしなかった。

 寧ろ想像を肯定してくれている……


「ただ、ちゃんと心の中だけって留めないといけないものだけどね」

「はい」


 どんな事でも想像することは自由……

 それ事態は責められる事ではないけど、誉めれる事でもない。

 ななさんはそういう考えだから、僕を怒りはしないんだろう。


「でも折角なら、もっと楽しい事を考えなさいよ」

「楽しい事、ですか……例えば?」

「そうねぇ……赤い羊をスノーフレークがどうやって捕まえたのかとか、ニュースで言ってた?」

「あぁ、確かスノーフレークがオープンさせたペンギンパークを利用して、囮作戦か何かで捕まえたとか?」

「そうそれ。そのニュース聞いてたんなら、ペンギンパーク行ってみたいなーとか、行ったらどのアトラクションで遊ぼうかなーとか」

「赤い羊、関係ないじゃないですか」

「なら、赤い羊はペンギンパークで遊んだのかなー? とか考えたら楽しいんじゃない?」

「ふっ、何ですかそれ」


 ななさんの言う、アトラクションで遊ぶ殺し屋を想像したら、何かバカらしくて笑えてきた。


「あの、ななさんは……」


 ペンギンパークに一緒に行ってくれますか? と聞こうとした。

 でもそんな事は当然聞けなくて、


「ん? 何?」


と聞くななさんに、


「やっぱりいいです」


と返す事しかできなかった。


 ななさんと2人……ペンギンパークで楽しくアトラクションを楽しむ……

 それぐらいの想像は許されるよな……

 ななさん曰く、自分の心で何を思おうと、その人の自由なんだから……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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