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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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ご自愛

創太視点です。

 真さんは、ななさんの様子を確認し終えると、ななさんがいつもカタカタやっていたパソコンの方へと行った。


「おぉ、終わってるな。なるほどな、達成感から気が緩んじまったか」


 そういえばななさんがパソコンから離れなくなったのは、真さんが"仕事"を渡してからだった。

 今の発言から考えても、ななさんは相当大変な仕事をやりきってから倒れたんだろう。


「なぁ、創太」

「はい?」

「これからもみーの事、よろしくな」

「えっ……」


 急に呼ばれて、びっくりしてたら、更にびっくりさせられた。

 これからもななさんの事をよろしく?


 あぁそうか、真さんは勘違いしてるんだ。

 あれだけ凄いななさんが、自分の助手だと僕を紹介したんだ。

 凄い人の助手は凄い人に決まってる。

 だから僕の事を凄い人だと思ってるんだろう。

 ななさんに認めてもらえる程の人だと……


 これはちゃんと訂正しなければ……


「あの、真さん」

「ん?」

「僕はただの、自殺志願者ですよ……」

「へぇー、そうなのか」


 真さんは驚きもせず、とても軽い感じの返しをしてきた。

 勘違いを正す、結構驚きのカミングアウトだったと思うんだけど……


「あの、えっと……だから、全然助手とかじゃなくて……ななさんに自殺を止められて、ここに閉じ込められてるだけで……」

「じゃあ、そいつの事嫌いなのか?」


 ななさんを指差しながら聞いてくる。


「いえ、嫌いでは……」

「だよなっ! 好きだよな!」


 何なんだろう?

 テンションがよく分からない……

 真さんは凄く楽しそうに、喋ってくる。

 僕がななさんの事を好きだと嬉しいみたいな感じ……


「いや、その……分かんないです」

「ふーん、そっか。で、創太は今も死にたいの?」

「それも、分かんないです……」

「なら、生きてな。創太がみーの事見ててくれれば、俺もみーの生存確認をしなくて済むし。仕事が1個減って楽」

「そうなんですか……」


 仮にも自殺しようとしてた人に対して、軽すぎないか?

 ななさんもそうだけど、真さんも普通とは感覚が違い過ぎる。

 この人達にとっては、これが普通なんだろう。

 ってか生存確認って、仕事なんだな……


「俺さ、今度海外の仕事に行かないといけなくてな、当面ここに来れねぇんだよ。だからみーの事は任せたぜ、創太」

「は、はぁ」

「なんだその返事は! しっかり腹から声を出せっ!」

「はいっ!」

「よしっ!」


 真さんに合わせて大きな声を出してしまったら、


「う……うるさい……」


と、ななさんが少し喋った。

 ななさん……起きたのか?

 確認してみたけど、起きたわけではなかった。


「じゃ、俺は行くわ。みーはさ、ただの睡眠不足だからそんなに心配しなくていいぜ」

「倒れたのにですか?」

「まぁ、あれだ。俺等にとってはよくあることだ」

「そんなのよくない方がいいと思いますけど……」

「だよな。本当にみーには反省が無さすぎるんだよ」

「確かにななさんって、自分が悪いと思わなきゃ反省しなさそうですね」

「よく分かってるじゃん」


 ななさんは一度でも失敗したりして、反省したら絶対にもう失敗なんてしないようにするタイプの人だ。

 なのに前も倒れてて、また倒れたって事は倒れる事をなんら悪いと思ってないんだろう。

 その考えは間違ってるって、正さないといけないな。

 ちゃんと自分の体を大切にしてほしい。


「全然寝てなかったみたいだし、ちょっと寝溜めるまでは起きねぇと思うぞ」

「寝溜めるって……どういう体の仕組みなんですか……全く寝てなかったのを一気に寝たからって、疲れがとれる訳でもないし、その後に寝なくて済む訳でもないですよ」

「それ、みーによく言っといてやってくれ。俺等が言っても聞かねぇから」

「それは真さんも寝溜めてる派だからなんじゃないですか?」

「おう、よくお分かりで」


 やっぱり……

 真さんも多分、仕事をし過ぎてて、ちゃんと休めていないんだろう。

 だから寝溜めるとかいう発想になるんだ。

 どんな仕事なのかは知らないけど……


「ちゃんと寝て下さい」

「俺は、みーよりちゃんと寝てる!」

「下と比較しないで下さい。大体、同じことしてる人に寝ろとか休めとか言われて、素直に聞くわけないじゃないですか」

「そりゃそうだな」

「真さんもちゃんと寝て、ちゃんと休んで下さいよ!」

「肝に命じとく」


 本当に分かってるんだろうか。

 真さんにも自分の体を大事にしてほしい……

 それを自殺なんてしようとしてた僕が言ってるんだから、おかしな話だよな……


「あ、そうだ創太。みーが起きたら伝えてほしいんだけど」

「はい、何ですか?」

「"これはボスにもしっかり報告しておくからな"って言っといてくれ」

「分かりました」

「じゃあなー」


 真さんは帰って行った。

 本当にただ、ななさんの生存確認をしに来ただけだったみたいだ。

 真さんが出ていった玄関のドア。

 それを見送った僕……


 そうだ、僕はとっくの前からちゃんと気がついてる。

 僕はここに閉じこめられてるんじゃない。

 閉じこめられていたいんだ。

 だって、本当に出たいなら、今真さんと一緒に外に出れば良かっただけなんだから。


 でもそれじゃダメなんだ。

 真さんにななさんの事を任せてもらったんだし、いつまでも言い訳して逃げてちゃダメだ。

 ちゃんと自分の意思で出ると決めて、出て行かないと何も変わらない。

 今僕は、ここに閉じこもっている場合じゃないんだ!


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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