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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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狂う調子

創太視点です。

カタッカタタッカタカタ


 相変わらずのななさんがパソコンのキーボードをうつ音……

 朝起きるとこの音が一番に聞こえる。

 でも今日はいつもと少し違った。

 いつもは隙間なくカタカタやってるのに、所々手が止まりながらカタカタやっていた。


「おはようございます、ななさん」

「………………」


 ななさんはこっちを見もしないし、挨拶も返してくれない。

 いつもならカタカタしながらでも返してくれるのに……


「あの、ななさん?」

「えっ! あぁ……創太。おはよう」


 僕に気がついてなかっただけみたいだ。

 近づいたらちゃんと気づいて話してくれた。

 よかった……


 今日もいつもと同じで、四角い物体朝食を作る。

 前にあの、ななさんと仲の良さげな運送業者の人が持ってきてくれたので、まだご飯はなくなりそうにない。


「ななさん、朝ご飯です」

「あぁ、ありがと……」


 なんだろう?

 今日のななさんは若干元気が無いような気がする。

 でも左手でパソコンやりながら普通に食べてるし、大丈夫か。

 それを大丈夫と判断するのもどうかとは思うけど……


 朝ご飯の片付けをして、僕もいつも通り昨日のテストの復習や、自主勉強をする。


♪♪♪♪♪


 今日もいつもと同じ位の時間にななさんの携帯が鳴った。

 昨日その前と、父さんが電話に出ていたし、今日も父さんなのかな?

 仕事があるだろうし、流石に今日は違うか?

 でも昨日、あんなにななさんの事気にしてたし……


 僕が色々悩んでいると、ななさんは相変わらずスピーカーにして電話に出た。


「おはようございます」

「あ、おはようございます。ななさん」


 電話に出たのは婆ちゃんだった。

 やっぱり父さんは仕事か。


「お婆様、今創太君と代わりますね」

「ありがとうございます」


 そう言っていつもの流れで僕の所に携帯を持ってきてくれる。


「婆ちゃん、おはよう」

「創ちゃん。今日はね、恵子さんが一緒なの」

「えっ?」

「代わるわね」


 いや、ちょっと待て……

 母さんに代わる?


「創太。その……おはよう。久しぶりね」

「……母さん」


 一番喋りたくなかった。

 婆ちゃんも何を思って電話を代わったんだろう。

 僕が一番母さんを嫌いなのも知ってるはずだし、婆ちゃんだって、母さんは苦手って言ってたのに……


「その……ね、お母さんずっと、創太には勉強、勉強って言ってたじゃない? ◎◎大学へ行くようにって」

「うん」

「今日はそれをちゃんと謝りたくて……」


 謝りたい? 母さんが?

 世間体しか考えてない、あの母さんが?


「本当にごめんね……私、ちゃんと創太の事考えれてなかったわ。創太の人生は創太のものよね。今まで私が勝手に決めつけて、押し付けていた……でもっ! それが創太の為だって思ってた気持ちも嘘じゃないのよ、本当に」


 本当に必死な母さんの声。

 泣いてる……のか?


「創太からしたら、私はただのうるさい女だったわね……」

「そんな事はないけど……」

「いえ、そうだったのよ。ちゃんと自覚してる……本当にごめんなさい……」

「母さん……」


 こんなしおらしい母さんは初めてで、僕もどう接したらいいのか分からない。

 母さんは元々、どう接したらいいのか分からないとか以前に、関わりたくなくて無視してたけど、これは流石に無視できない。


「母さん……その、僕ちゃんと勉強してるから。心配しなくていいよ」

「そ、そう? でも無理のない範囲でね」


 無理のない範囲? これは本当に母さんの言葉か?

 何なんだよ無理のない範囲って……

 今まで隙間時間は全部勉強って言ってたのに……

 こんなんじゃ◎◎大学へ入れない、入ってもおいてかれるって……


 なんか調子狂うな……

 この母さんはもう、僕の知ってる世間体モンスターとは違い過ぎる。


「じゃあ……その、きるから」

「え……うん。創太、体調には気をつけて、ちゃんとご飯食べて、ちゃんと寝るのよ」

「うん。分かってる」


 変に調子狂うし、何を話したらいいのかも分からないので、電話はきった。

 何なんだろう……

 普通の……世の中的に普通のお母さんとかが言いそうな事を言われた。

 僕の母さんの言葉とは思えない……

 本当に僕の事を心配して、謝ってくれてるって感じだった……


「お母様ともちゃんと話せて、よかったわね」

「そう、なんでしょうか?」


 ななさんに電話を返して、少し考える……

 父さんも母さんもらしくない……

 あの2人らしくなさ過ぎる……

 何かあったのか?

 逆に僕が心配になって来ちゃうじゃないか……


 ななさんが何か言ってくれたりしたんだろうか?

 でも、父さんはななさんのことあれだけ怒ってて、僕にななさんの事を聞いてきたりするし、母さんは多分ななさんと喋ってすらいない。

 そんなななさんが2人に何か言った所で、あの2人が何か考えを変えたりする訳がない。

 だからきっとななさんが何か言ったとかじゃなくて、父さん達に何かあったんだろう……


 何故か僕の家族は変わって来ている。

 でもこれを悪い変化だとは思わなかった。


 僕もちゃんと帰って、皆と話した方がいいのかな……

 いやいや、僕は閉じ込められてるんだっ!

 自分じゃこの家を出れないんだ!

 そう、だから帰れない……

 帰れないのは仕方のない事なんだから……


 僕がそんな1人討論をしていると、


「はぁ」


と、ななさんが溜め息をついた。

 珍しいな……普段は仕事中、溜め息とかつきもせずに、永遠とパソコンとカタカタやってるのに。

 一区切りついたのか、ななさんはパソコンから離れ、洗面所の方へ歩いて行った。

 トイレかな? と、僕も特に気にせず勉強の続きをしていたら、


バタッ


というすごい大きな音が聞こえた。

 何事かと慌てて洗面所の方へ行くと、ななさんが倒れていた。


「ななさんっ!」


 急いで駆け寄ったけど、どうしたらいいのか……


「だ、大丈夫ですか? え、えーっときゅ、救急車呼ばなきゃ……」


 そう慌てる僕にそっと手を伸ばしたななさんは、


「きゅーきゅーはいらな……いから……」


それだけ言って、意識を失った。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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