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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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家族会議

創太の父視点です。

 創太との電話中。

 ななさんへの疑問はどんどん増えていく。

 そういえば、母さんがななさんって名前は創太がつけたって言ってたな。

 結局創太も本名は聞いていないんだろうか?


「ななさんって名前は創太がつけたらしいな」

「そうだけど?」

「何でななさんなんだ? 本名は創太も聞いてないのか?」

「本名は聞いてない……ななさんっていうのは、名無しの権兵衛でいいっていってたから、名無しからとってななさんって呼んでるだけ」


 名無しの権兵衛……

 手近に思い付いた女の子の名前とかでもなく、そこからとって決めていたのか……


「歳はいくつくらいの人なんだ?」

「僕とそんなに変わらないくらいの見た目だけど、歳は分かんない……」


 そうか、見た目は創太と変わらないのか。

 って事は創太には高校生くらいの見た目に見えるって事だな。

 でも俺が喋った時の印象からすると、結構大人の女なんだが……

 口調も偉そうで、人をバカにし慣れている感じの……

 やっぱり今創太が言ってるななさんとは別人なんじゃないか?


「その、一応聞くが、ななさんは1人だよな? 2人はいないよな?」

「え? うん。1人だけど?」

「俺と婆ちゃんが電話したななさんは、同一人物だよな?」

「そうだけど?」

「二重人格か?」

「二重人格ではないけど、変な人だから……でも、自分に対して真っ直ぐな人なんだと思うけど」

「そうか」


 変な人、だけど自分に真っ直ぐか……

 そんな風に創太はななさんを評価しているんだな……

 凄く真っ当な評価だと思った。

 だったら俺はどう評価されているんだろうな。

 人の話も聞かないうるさい奴、とかだろうか……


「あ、あのさ、僕そろそろ勉強の続きするから」

「おう……そうか、頑張れよ」

「うん……」


 そこで電話はきられた。

 でも今日は昨日とは違い、結構話せた。

 顔も見れない電話なのに、顔を見て喋っていた前よりも創太とちゃんとした会話が出来たように思えた。

 いや、今までは顔を見ることができたのに、俺は見てなかったんだんだろうな。


 それに、母さんの言っていた通りだった。

 あの勉強嫌いの創太が、自分から勉強すると言った。

 というか、そもそも本当に創太は勉強嫌いだったのか?

 いつも恵子にやれやれって怒られると思ってたが、逆に創太が勉強以外をしている所を俺は知らない。

 俺はどれだけ創太の事を知らなさすぎたんだろうか……


「武? 電話終わったの?」

「あぁ」


 母さんに携帯を返す。


「創ちゃんはなんて?」

「勉強するからきるってさ」

「そう」

「なぁ、母さん。最初にななさんに何て言われたんだ? 何でななさんの時に代わってくれなかった?」

「あれは、ななさんが謝罪の必要はないって言ってくれて……そのまま創ちゃんに代わってくれたから……」

「どういう事だ? 俺のあの怒鳴ったりした失礼な態度に怒ってるから、俺と話したくなかったのか?」


 俺は本当にななさんに謝るつもりだったのに……


「そういう感じじゃなかったわよ? 優しい感じで、ななさん自身が謝る気もないし、謝ってもらう必要も感じていないって言ってたわ」

「そうか……」


 確かに変な人だ。

 別に自分は謝る気なんてなくても、相手が謝るって言ってるなら、謝らせればいいのに……

 根本的な考え方が俺とは違うんだろう。

 だからこそ、俺達とは違う視点で創太の事にも気が付いてくれるんだろうな。


「母さん、今日は何か予定があったか?」

「え? いつも通りに家事だけよ?」

「なら家事は俺も手伝うから、今日は話をしないか?」

「話?」

「創太の話、母さんの知ってる事を教えてくれ。俺は今まで、創太の事を知らなさすぎたんだ。自分の息子なのにな……」

「そう、そうね。たくさん話しましょう」


 それから母さんと創太の話をした。

 好きな食べ物や得意な科目。

 そんな親なら知ってて当然のような事も知らなかった。

 それに創太は学校で嫌な思いをしているようで、俺はそういう相談にも乗らず、ただただ学校へ行けと言っていたんだな……


 かなり時間が経って日も暮れた頃、恵子が帰ってきた。


「ただいま、創太と話せた? 帰って来させれそう? まぁ、帰ってきたくないならそれでもいいけど、学校は行かせないとね。そろそろ単位にもひびいてくるだろうし……」


 帰ってきた恵子は1番にそう言った。

 やっぱりそうだ。

 こいつも俺と同じで、心配してる事がおかしい。


「なぁ、恵子。お前が1番心配してるのは何だ?」

「え? そんなの創太に決まってるでしょ?」

「本当にそうか? 世間体じゃないのか?」

「な、何を言うの!」


 俺の言葉に恵子は驚いた。


「お前はいつも創太に勉強しろって言ってたよな?」

「えぇ」

「じゃあ創太は勉強してなかったのか?」

「してたけど、成績が上がらなかったのよっ! あなたも知ってるでしょ? あの子、覚えも悪いから……お隣のお兄さんなんて、今と同じくらいの時には◎◎大学への進学も確定って言われてたっていうのに……」

「ほら、それだ。お前はいつも世間体じゃないか」

「はぁ? 何が言いたいのよ?」

「うちはうちで、創太は創太だろ! 他所の家なんて関係ない」

「なっ!」


 恵子はいつも言っていた。

 こんな成績じゃ◎◎大学へは行けないと。


「お前が気にしているのは創太じゃない。◎◎大学だ。そりゃ最初は創太の為を思って◎◎大学を薦めてたんだろうさ。だけどいつの間にか◎◎大学へ行かせなきゃいけないって思ってないか?」

「それは……」

「恵子、俺たちが本当に問題視するべきなのは創太じゃなくて、俺達の方なんじゃないか?」


 その夜、俺達は話し合った。

 今までの事、これからの事、創太の事。

 ずっと気づけなかった、この家の問題を。


「恵子。お前、明日休め」

「え……でも……」

「確かに仕事は大切だ。家族の為に俺達は仕事をしている。でも家族より大切な仕事なんてない。そうだろ?」

「……そうね、分かったわ。明日は私が創太と話すわ。お義母様、よろしくお願いしますね」

「えぇ」


 創太がどういう反応をしてくれるかは分からない。

 でも創太が帰って来てくれると信じて、明日も仕事を頑張ろう。

 創太が創太の意思で労ってくれるような、そんな尊敬してもらえる父親を目指したいから。


読んで頂きありがとうございます(*^^*)

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