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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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反省

創太の父視点です。

 電話で創太と少しだけ話すことができた夜。

 "いつも仕事、お疲れ様"という、創太に言われた言葉が頭から離れない。

 そんな事を言われたのは初めてだった。


 創太はいつも、俺が帰っても自分の部屋から出てこない。

 たまに出てきたと思うとジュースを持って部屋へ帰ったりで、俺との会話なんて基本的にない。

 創太が来るとだいたい恵子が、勉強はやったの? と確認する。

 それに一応返事をして、部屋へ戻っていく……


 勉強させてるのに成績も上がらないって、恵子も悩んでた。

 だから俺もちゃんと勉強するようにって、怒ってばかりだった……

 少しも、創太の話を聞いて、応援しようとなんてしていなかった。


 俺が今までの創太の様子を振りかえっていると、恵子が帰ってきた。


「お義母様、創太と連絡とってたんだってね」

「あぁ、そうみたいだな」


 母さんが先に話したみたいだ。

 まぁ、もう俺に電話してたことがバレてるから、恵子にも話したんだろう。


「あなたも喋ったんでしょ?」

「あぁ……」

「ちょっと……大丈夫?」


 俺の生返事を恵子は気にしている。

 俺自身、今の自分の考えが纏まっていないからどうしようもない。


「俺、明日も休みもらってるから、また電話してみる」

「私の分も創太にちゃんと言っておいてよ」

「あぁ……」


 何を言うんだ? 創太に……

 勉強しろってか?

 恵子がいつも言ってるのはそれだからな。

 でも勉強はしてるらしい……

 だったら俺は一体、恵子の分も何を言うんだろう?


 俺が創太に言いたかったこと……

 いつ帰って来るつもりだ。

 学校をサボるなんて何を考えているんだ。

 世間にどう思われているか分かってるのか。

 いつまで俺達に迷惑をかけるつもりだ。

 ……そんな事ばかりだな。


 世間体だの自分達への迷惑だの……

 創太は自殺までしようとしていたっていうのに、何でそんなことになったのかとか、創太の気持ちとかも考えないで……

 創太が死んでたら……とかより、何で帰って来ないんだって事にイラついて怒っていた。


 俺は本当に創太を心配していたのか?

 いつも怒ってばかりで、創太の話なんて聞いてもいなかった。

 でも、最初は心配してたから、創太の為にと怒ってたはずなんだ。

 いつからだろう……

 創太の事をちゃんと考えれていなかったのは……


 創太のあの言葉は、おそらくななさんに言わされたんだろう。

 でなければ創太が俺なんかを労う訳がない。

 それでも、嫌々でも俺に労いの言葉を言ってくれた。

 そんなどこの家庭でも当たり前に使われている言葉1つも、俺は息子から言ってもらえていなかった……

 言ってもらえるような親じゃなかったのか……


 そんな事を悶々と考えながら寝た。

 次の日の朝。

 もう何度目かの創太のいない、静かな朝。

 今日も休みをもらっているから出る準備は必要ない。


 朝食を食べて恵子が仕事に行く。


「それじゃあ、行ってきます」

「あぁ」


 そろそろ母さんが創太に電話をかける時間か……

 俺は創太に何を言うべきなんだろう……?


「武? 何か様子がおかしいけど、何かあったの?」

「いや、色々と考えていただけだ」


 ななさん……

 俺を挑発してきたふざけた女だと思っていた。

 でも母さんの言う通りだ。

 ななさんのお陰で気付けた事がある。


「なぁ母さん。今日も創太に電話するんだろ?」

「ええ」

「最初に出るのはななさんか?」

「いつもはそうだけど……どうかしらね。昨日の事もあるし……」

「もしななさんだったら、俺が謝りたいって伝えて電話を代わってくれ」

「分かったわ」


 母さんはななさんに電話をかけた。

 昨日のように全然繋がらないなんて事もなく、電話はすぐに出てもらえたようだ。


「おはようございます。あの、ななさん……昨日はすみませんでした。武が……その……」


 出たのはななさんのようだ。


「あ、あのななさん。その、今日も武がいるんです。それでななさんに謝りたいと……」


 母さんはちゃんと伝えてくれた。

 俺も電話を代わったら変に怒ったりしないで、ちゃんと謝ろうと決めていた。

 でも、


「そ、そうですか?」


と、ななさんに何か言われた様子の母さんは、電話を代わってはくれなかった。


「そ、創ちゃん? ご、ごめんね。武に代わるわ」


 え? 創太? ななさんじゃないのか?

 創太……創太ともう1度、ちゃんと……創太、創太と……


「創太!」


 もともと電話を代わってすぐ、ななさんに謝るつもりでいたし、いきなり創太と話すとは思ってなかったので変に混乱して叫んでしまった。

 ただ息子と話すだけだというのに、何を緊張しているんだ、俺は。


 叫んだからか、創太からも返事はない。

 違うんだ、俺は怒ろうとしていた訳じゃない。

 冷静に、落ち着いて……


「創太、お前、体は大丈夫なのか?」

「えっ?」


 やっぱり創太も怒られると思っていたようで、ビックリしている。


「え、うん、大丈夫……」

「ちゃんと飯食ってんのか?」

「うん」

「そうか……」


 創太との会話の話題がなくなった。

 息子と何を話したらいいのか分からないなんて、俺は本当に今まで何をしていたんだろう……

 結局ななさんに謝れもしなかったし……


「その、創太……ななさんってどんな人なんだ?」

「え? ……変な人だけど……?」


 俺と創太の会話がななさんに聞こえているかはしらないが、そんな変な人とかはっきり言っていいのか?

 本人もそこにいるんじゃないのか?


「変な人……それは、そうみたいだな。ご飯とかちゃんと作ってくれてるのか?」

「作ってくれはしないけど……」

「じゃあ創太が作ってるのか?」

「作ってる訳でもないけど……」


 なんだ? 曖昧だな……

 母さんの話だとご飯はちゃんと食べてるって話だったが……


「ちゃんと食べてるんだよな?」

「それは、食べてるけど……」

「そうか……」


 食べてるんならとりあえず良かった。

 ただ、創太もななさんも作ってないんなら、誰が作ってるんだ?

 毎日出前か? そんなの金もかかるだろう。

 一体なんの仕事をしている人なんだ?


 というか、食材とかどうしてるんだ?

 まさか創太と2人で買い物になんていかないだろうが、創太を家に1人残して買いにいくのもおかしい。

 ネットで買ってるのか?

 考えれば考えるほど謎が深まっていく。

 ななさん……何者なんだろう?


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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