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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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考え方

創太視点です。

 いつもと同じくらいの時間、今日もななさんの携帯がなる。

 ななさんがスピーカーにして出ると、婆ちゃんだった。


「おはようございます」

「おはようございます、お婆様」


 昨日は急に父さんが電話に出たりしてビックリしたけど、今日は普通に婆ちゃんからの電話がかかってきた。


「あの、ななさん……昨日はすみませんでした。武が……その……」

「構いませんよ。今、創太君に代わりますね」

「あ、あのななさん。その、今日も武がいるんです。それでななさんに謝りたいと……」


 え? 父さんもいる?

 父さんが謝りたいって?

 聞き間違えか?


「でしたら、必要ありませんとお伝え下さい。私は謝る気もありませんし、謝ってもらう必要も感じていませんから」

「そ、そうですか?」


 ななさんは宥めるような優しい口調で、婆ちゃんに謝罪の必要はないと返した。

 謝る気がないっていうのは、あの時の父さんをバカにしたような電話の事だろう。

 嫌みったらしく、煽るような電話だった。

 あれはどう考えてもわざとやってたし、悪いとは思ってないから謝る気もないんだろうな。


 だからといってあの時の父さんの事も悪いとは思ってないから、謝ってもらう必要もないと言ってるんだろう。

 前の僕なら父さんが謝るって言ってるんだし、自分は謝らなくても謝らせておけばいいのに、変な人だなって思ってたかもしれない。

 でもななさんは、自分も相手が嫌な事を言ってるなら、自分が被害者ぶるのはおかしいって言っていた。

 何を考えてるのか分からない変な人だけど、自分のそういう考え方は貫いている。

 だから、今もこう言ったんだろうなと納得できた。


「じゃ、創太君に代わりますね」


 婆ちゃんにそう言って僕の方に携帯を持ってきたななさん。

 本当に父さんと喋る気はないらしい。


「はい、創太」

「ありがとうございます」


 僕も普通に携帯を受け取って、婆ちゃんに挨拶をした。


「婆ちゃん? おはよう」

「そ、創ちゃん? ご、ごめんね。武に代わるわ」


 え……それはそこに居るとしても、代わらないで欲しかったな……

 さっきななさんに、父さんがいることを言ってたからいるのは知ってたし、代わられる気はしてたけど……


「創太!」


 父さんだ。

 朝からそんな大声……できれば聞きたくなかった。

 どうしよう……昨日だってななさんに言われたこと言って直ぐにきっちゃったし、どうせまた長い説教が始まるだけだから、電話きろうかな?


 返事をするのも嫌だし、電話をきろうとしてたら、


「創太、お前、体は大丈夫なのか?」

「えっ?」


という、いつもの怒鳴り声とは全然違う声で、父さんはそう聞いてきた。

 ビックリして思わず声も出してしまった。

 こんな、不安げな父さんの声を聞いたのは、初めてな気がする……

 てっきり昨日みたいに怒られると思ったのに……


「え、うん、大丈夫……」

「ちゃんと飯食ってんのか?」

「うん」

「そうか……」


 何だろう……父さんらしくない。

 まるで僕を心配してるみたいじゃないか……


 父さんはいつも自分の方が大変だって感じで、僕の相談なんてろくに聞いてくれた事もないし、"母さんを困らせるなっ!"ばかりで、僕が困ってるとは最初から考えてないような人だ。

 そんな人が何で僕の体とか、ご飯とか、何で気にしてるんだ?

 あぁ、婆ちゃんに聞けって言われたのか……


「その、創太……ななさんってどんな人なんだ?」

「え? ……変な人だけど……?」

「変な人……それは、そうみたいだな。ご飯とかちゃんと作ってくれてるのか?」

「作ってくれはしないけど……」

「じゃあ創太が作ってるのか?」

「作ってる訳でもないけど……」

「ちゃんと食べてるんだよな?」

「それは、食べてるけど……」

「そうか……」


 こういう曖昧な返事をした時とか、僕が話してる事を父さんが理解しなかった時とかは、大体いつも"はっきりしろっ!"って怒ってくるのに……


「ななさんって名前は創太がつけたらしいな」

「そうだけど?」

「何でななさんなんだ? 本名は創太も聞いてないのか?」

「本名は聞いてない……ななさんっていうのは、名無しの権兵衛でいいっていってたから、名無しからとってななさんって呼んでるだけ」


 ななさんの事を知りたくて僕に聞いてるのか?

 でもそういう感じもしない……

 こんな風に普通に父さんと会話したのなんて、いつぶりだろう?


「歳はいくつくらいの人なんだ?」

「僕とそんなに変わらないくらいの見た目だけど、歳は分かんない……」


 昨日とか何か子供扱いしてきたし……

 勉強とか教えてもらってるし、対等じゃないのは分かってるけど、あぁいうあからさまに差を感じさせられるのは、何か嫌だ。

 もっと、ちゃんと認めてほしいというか……


「その、一応聞くが、ななさんは1人だよな? 2人はいないよな?」

「え? うん。1人だけど?」

「俺と婆ちゃんが電話したななさんは、同一人物だよな?」

「そうだけど?」

「二重人格か?」

「二重人格ではないけど、変な人だから……でも、自分に対して真っ直ぐな人なんだと思うけど」

「そうか」


 これだけななさんの話をしてるというのに、ななさんは全く興味がないという様子だ。

 パソコンとカタカタやってる。

 何だろう、僕の事とかどうでもいいのか?

 これでも結構勇気出して父さんと喋ってるっていうのに……

 もう少し興味もってくれたっていいのに……


 というか、父さんと喋り過ぎだよな……

 もうそろそろ終わってもいいかな?


「あ、あのさ、僕そろそろ勉強の続きするから」

「おう……そうか、頑張れよ」

「うん……」


 父さんとの電話はそうして終わった。

 長い説教以外でこんなに父さんと話したのは初めてな気がするな……

 父さんと喋るなんて朝から疲れる事をしちゃったな……と思ったけど、不思議とそんなに疲れてはなかった。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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