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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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どっちもどっち

創太視点です。

 四角い物体ご飯も補充されたので、また同じような1日に戻ると思っていたけど、その日から少し変わった。

 僕の1日の流れは特に何も変わってはいないけど、ななさんは授業中にもパソコンをするようになった。

 多分あの人がななさんに渡していた仕事……ななさんが"私じゃなかったら無理"と言っていた仕事をしてるんだろう。


 授業中にパソコンをやってるとは言っても、それは左手だけで、右手はホワイトボードに書くのに使ってるし、目線も授業中は1度たりともパソコンへは向かない。

 休憩に入ると両手両目のダカダカタイピングに変わるけど、授業中は左手のみのカタカタだ……つまりななさんは、全く休憩していない。

 もう十分にこの人が変な人だという事は分かってるけど、毎日これじゃあ流石に心配になる。


 ご飯の時でさえ左手は常にカタカタやってるし、ななさんがパソコンから離れてる時なんて、トイレに行く時か、僕に婆ちゃんからかかってきた電話を渡す時位なもんだ。

 まぁ、いつも僕が寝てから風呂に入ったり、寝たりをしているみたいだし、その間は休んでるだろうけど……


「ほら、創太。お婆様からよ」


 少し考えていたら、ななさんが今日もスピーカーにした携帯を僕に渡しに来た。

 これ受けとると、またななさんはパソコンの方に戻っちゃうんだよな……


「ん? そ、創ちゃん?」


 電話から婆ちゃんが心配する声が聞こえてる。

 僕は携帯を受け取らずに、そのまま喋った。


「あ、おはよう婆ちゃん」

「あぁ、良かったわ。おはよう創ちゃん。今日の朝御飯は何だった?」


 僕が携帯を受け取らずに喋った事を不思議に思ってるみたいだけど、特に何も言わず、僕に携帯を渡そうとしている姿勢そのままのななさん。

 無言で"何で受け取らないの?"と言われてる感じはするけど、気にしないでそのまま会話する。


「今日は梅雑炊にしたよ」

「あら、美味しそうね」

「うん、美味しかった」

「勉強の方はどう? 捗ってる?」

「そ、そうだね。僕、数学とか苦手な方だったんだけど、最近は結構分かるようになってきて、解くのも楽しいよ」


 最近は結構勉強してるって話とかもしてたし、最初のよりは婆ちゃんとも会話らしい会話ができている。


「そう。それは良かったわ。ななさんは教えるのも上手なのね」

「そうみたいだね」


 自分の話をされているのに、会話に入ってくる気はないらしい。

 このまま話を引き延ばしてれば、ななさんをパソコンから離せるかもと思って何か話題を考えていたら、僕が受け取らないと分かったようで、ななさんは携帯を床に置いてパソコンの方へ行ってしまった。


 そうなるなら別に話を引き延ばす必要もないので、


「じゃあね、婆ちゃん」


と、婆ちゃんからの電話をきった。

 パソコンをやってるななさんの方へ行き、携帯を返すと、


「何で受け取らないの?」


と、案の定聞かれた。


「なんとなくです」


 僕はそれだけ答えて自主勉強に戻る。

 いつも適当な返事しかされないし、たまには僕も適当な返事でいいだろう。

 ななさんは少し不思議そうな顔をしていたけど、それ以上は特に何も聞いてこず、またカタカタしていた。


 そのあとも特に変わった事はなく、授業中も変わらずななさんはパソコンとカタカタやっていた。

 夜になり、僕の1日の最後、漫画を読むという仕事をしていたら、眠くなってきた。

 うとうとして、寝落ちしかけていたら、


「ちょっと創太? 今日はちゃんと自分で布団へ行ってよ。創太を担ぐのは私もそれなりに面倒くさいのよ」


というななさんの声が聞こえて起きた。

 いつもはパソコンに集中してて、僕が寝落ちしちゃっても気にもしないのに……

 というか、今ななさん……僕を担ぐって言った?


「え? あの、今まで僕が漫画読みながら寝落ちしちゃった時って、ななさんが運んでくれてたんですか?」

「そりゃそうでしょ。私以外に誰がいるのよ」


 今までもたまに漫画を読みながら寝落ちしちゃって、布団まで自力で行った記憶がない日もあったけど、朝は必ず布団で目を醒ましていた。

 どうやって運んでるんだろう? とは思っていたけど、まさか本当にななさんが運んでくれていたとは……

 というか……


「あの……僕、重くないですか?」

「え? んー? 平均位じゃない?」


 僕を運ぶのは重くないか? という意味で聞いたつもりだったんだけど、ななさんは平均体重の話だと思ったみたいだ。

 最近体重とか測ってないし正確には分からないけど、僕の体重は多分60キロ位ある。

 60キロって、女性が持てるものなのか? 僕は自分が何キロ持てるか知らないけど、多分30キロ位が限界だと思うんだけど……


「いえあの、平均体重の話ではなくて……ななさんって力持ちなんですね」

「え? あぁ、そうね」


 そういえば、最初に僕を引きずり下ろした時も結構な力だったし、教科書とか大量に持ってきた時も、重い物を持って疲れたって顔は特にしてなかったな。


「私、結構鍛えてるのよ。だから筋肉はあるのよね。まぁ、そのせいか胸もほぼ筋肉になっちゃったけどね……」

「そうなんですか……」


 少し自嘲気味にそう言ったななさん。

 胸が小さいの、やっぱり気にしてるんだな。

 眠いからかな? 上手い言葉が思い浮かばない……

 今のは何か、励ましてあげるべきだったんだろうか……?


「何? 創太もやっぱり女に筋肉とかいらないって思う派?」

「えーっと……僕は、男性女性に関わらず、力があるって素敵な事だと思いますよ。それにななさんはその力を生かせてるんだし、普通に格好いいと思いますけど」

「えっ?」

「僕、何か変なこと言いました?」


 ななさんは驚いた顔をしてる……

 眠気に襲われてる事もあって、今自分で何て言ったか正確には覚えてないけど、そんなに変な事は言ってないはずなんだけどな。


「あぁ、ごめん。そんな風に誉められたのは初めてだったから、ちょっとビックリしただけ」

「そうですか」

「いつもは貧乳マッチョとか言われてるから」


 貧乳……マッチョ……めっちゃ失礼なあだ名だな……

 そのストレート過ぎる失礼なあだ名に驚いて、少し眠気もとんだ。


「誰が言うんですか? そんな事。この間来た人とかですか?」

「ん? いや、あいつはそういう幼稚な事は言わないわよ。言うのはもっと幼稚なおバカさんよ」


 幼稚なおバカさんと貶す割には楽しそうで、その人とも仲がいいのが伝わってくる。

 この間のあの人以外にもななさんと仲のいい人はいるんだ。

 当たり前の事なんだけど、何かもやっとするな……

 それにしても、そんな変なあだ名も許すとか……


「そういうの、言われて嫌じゃないんですか?」

「まぁ、嫌っちゃ嫌だけど、私も万年玉砕野郎とか呼んでるし、お互い様よね。自分も相手の嫌がる事を言ってるんだもの、私だけが被害者ぶるのはおかしいでしょ?」

「そういうもんですか?」

「そういうもんよ」


 万年玉砕野郎って何だろう? とは思ったけど、言い返してる辺りがななさんも幼稚だな。

 でも、そうやって言い返してる事を自分でちゃんと分かってて、自分だけが被害者ぶれないという考え方は、やっぱり幼稚とも言えなくて、かっこいいと思った。


「ふぁーあ」


 もともと寝落ちしそうになってた訳だから仕方ないけど、睡魔が襲ってきて欠伸がでた。


「ななさんのそういう考え方、凄くかっこいいですね」

「そ、そう?」


 ん? 僕今自分で何て言ったっけ?

 何か思った事をそのまま言ったけど、何を思ってたんだっけ?

 眠すぎて思考が……

 もうまぶたが勝手に降ってくる……


「創太、眠いんなら無理に起きてないで、早く寝なさい」

「あー、おやすみなさい」

「はい、おやすみぃ」


 もう限界まできていた眠気と戦いながら、隣の部屋の布団まで自力で行った。

 何だろう……寝ぼけ眼で見たななさんの顔は、いつもより少し赤く見えた気がした。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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