突然の来訪
創太視点です。
大体の1日の流れも決まってきて、授業中に電話がかかってきた日以外は同じような日を繰り返していた。
でも、謎の電話があった日からまた数日経った時、いつもの四角い物体ご飯の数が少なくなってきていた。
いくら大量に落ちていたとはいえ、僕とななさんで毎日3食づつ、計6食が消費されていくんだから、なくなってくるのも当然だ。
「あの、ななさん。ご飯そろそろなくなりますよ」
「そう、まぁそのうち来るでしょ」
「そうなんですか?」
朝食を終えてから、そんな会話をした。
その時は"来る"って言葉の意味が分かってなかったけど、婆ちゃんからの電話も終わって自主勉強をしていた時、
ガチャ
という、玄関の戸が勝手に開く音がして、
「おーっす。みー、仕事だぞー。あとコレ、明奈と柾谷さんの新作な」
と、急に男の人が入ってきた。
ななさんや僕と歳もそんなに変わらなさそうな男の人。
手に箱を持っていて、すたすたと慣れた様子で僕達のいる部屋まで歩いてきたかと思うと、その箱をいつもの四角い物体スペースに置いて、
「ん? 誰君?」
と、僕の方を見て聞いてきた。
「え、えーっと……」
「私の助手」
ただでさえ急に入ってきたこの人に対し困惑しているのに、話しかけられてしまって、何を言ったらいいか分からず言い淀んでいたら、ななさんがさらっと助手だと言ってくれた。
「ふーん、そうなんだ……で、ほら仕事。ボスから」
その短い紹介だけで納得した様子で、ななさんへと向き直った男の人は、ななさんに何か紙を渡した。
もう僕の事なんて気にもしてないって感じだ……
なんだろう……なんか少しもやもやする……
「何……はぁ!? 何よこれ!」
「無茶苦茶だろ? まぁ、いつもの事だけどな」
紙を見たななさんは驚いた様子で、少し怒ったような声で男の人を見た。
それに対して男の人は、ななさんが驚いたのが面白かったのか、少し笑いながら返事をしていた。
「大体、期間が短すぎるのよ。こんな短期間でこんな量……私じゃなかったら無理よ」
何か無茶苦茶な仕事でも押し付けられたのかと、少し心配していたら、ななさんはそう言った。
私じゃなかったら無理って事は、自分ならやれるって言ってるんだよな?
流石はななさんだな、仕事を素直には受け取らないんだろう。
「あ、そうそう、ボスからの伝言。出来るって分かってるから頼んでる、だってよ」
「なら私からも伝言、伝えてくれる? あんまり無理しちゃダメよって」
「それは、ボスがみーならそう返してくれそうって言ってたやつだぜ」
「人の回答先読みしてて、腹立つわね」
ななさんと男の人はとても楽しそうに喋ってる。
僕にはよく分からないけど、ななさんは"ボス"って人から仕事を頼まれてて、この男の人はななさんの事を"みー"って呼んでるって事は分かった。
「んで、みーがそう言ったら言えって言われたのが、みーも無理しないようにって」
「なら、無理させないでよ!」
「おっ! そう言ったら言えって言われたのが……」
「もういいっ! 永遠に続くわっ!」
「ボスもみーならそう打ち切るってよ」
「もう……」
会話から察するに、ななさんはボスって人に考えを読まれてるんだな。
こんな訳の分からない変な人の考えが分かるとか、何者なんだろう……
それにこの男の人……この人と喋るななさんは僕と喋ってる時より楽しそうで、2人ともお互いの事を信頼し合っていて、とても仲がいいっていうのが伝わってくる……
何だろう? なんかさっきからもやっと感が消えないな……
「じゃ、俺はこれでー」
ななさんと楽しそうに会話をして、僕の事は特に気にもせず、男の人は出ていった。
ナチュラル過ぎるその動きに特に何もできなかったけど、今玄関開いたんだよな?
若干忘れかけてるけど、僕ってこの家に閉じ込められてるんだから、今あの人について行けばこの部屋を出れたって事だ。
でも、そんな事より……
「あの、ななさん。さっきのあの人誰ですか?」
「ん? あいつはアレね。運送業者」
「運送業者?」
「ほらそこ、さっきあいつが置いていった箱、開けてみなさい」
言われた通りに開けてみると、中には大量の四角い物体ご飯が入っていた。
「ご飯、配達してくれたのよ」
「そうですか……」
ただの配達の人とあんなに仲がいい訳がない。
ななさんとどういう関係の人なのかとか、そういう事を聞きたかったんだけどな……
って、そんな事……僕には関係ないのに、僕は何を気にしているんだろう……?
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




