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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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授業中

創太視点です。

「さて、授業を始めるわよ」


 お昼ご飯を食べ終えて、片付けを終えて部屋に戻ったら、ななさんは奥の部屋から脚付の大きいホワイトボードを持ってきた。

 それの位置と高さを調整しながら、


「どう? この辺で見える?」


と、僕に聞いてくる。

 変な所は気遣いできるんだよな、この人。


「大丈夫です」

「そう。じゃあ今から5教科、1時間づつの授業を始めまーす。因みに、今日は1時限目から現代文、英語、世界史、物理、数学の順よ。1科目毎に10分の休憩を挟むから、その間に教科書とノートは準備しなさい。飲み物は好きな時に飲んでいいけど、授業中に追加を取りにいくのは厳禁よ。あとトイレも休憩時間で行きなさいね」

「はぁ、分かりました」


 変な所の気遣いはできるくせに、こういうのはこっちの意見を何も聞く気がなく勝手に始まる。

 授業内容も勝手に決まってた……ん? ちょっと待てよ……


「あの、ななさん。教科書とノートを準備しろって言われても、今持ってない科目の教科書もあるんですけど……それにノートも……」


 僕は今、鞄に入ってる分の教科書しかもってない。

 それにノートだって流石に学校用のを使うわけにはいかない……よな?

 いや、でも……もう学校に行かないつもりなんだから、使ったっていいか……

 学校用のは使えないなんて……まるで、僕自身がまた学校に行こうとしてるみたいじゃないか……


「あーそうね、ちょっと待ってなさい」


 ななさんはそう言って奥の部屋に入っていき、両手に大量の教科書を持って部屋に戻って来た。

 結構な量で重そうだし、2回くらいに分けて持って来るか、僕を呼べばいいのに……


「教科書はこれを使えばいいわ。ノートはルーズリーフね。好きなように使っていいから」

「ありがとうございます……」


 ななさん持ってきた大量の教科書をドサッと僕の横に置いて、ルーズリーフを渡してきた。

 教科書も全教科あるし、なんなら知らない科目の教科書まであった。

 ほんとに、何でもあるな、この家……


「授業が終わったら夕食よ。創太が準備してね。そのあと今日やった範囲で簡易テストをするから、私の授業は死ぬ気で集中しなさい」

「死ぬ気でって……人の死ぬ気を邪魔したくせに」


 思わず悪態をついてしまったけど、ななさんは笑って、


「ふふっ、確かにそうね。創太、上手いこと言うじゃない」


とか言ってくる。

 この人の笑いのツボが分からない……


「死ぬ気は確かに良くないわね。死んだら意味ないものね。前言撤回するわ! 創太、私の授業は生きる気で集中しなさい」

「生きる気?」

「ええ、私の授業で覚えた知識を今後の創太の人生に生かす為に、生きる気で集中しなさいね」

「そんな集中したことないんで、できないですよ」


 本当に意味わかんない事しか言わないな……


「さあ、授業を始めるわよ!」


 そうしてそこそこ理不尽に始まったななさんの授業は、本当に分かりやすかった。

 自分でも驚く位に頭に入ってくるし、書くペースも僕に合わせてくれているみたいなのに、僕を変に待っている様子もない。

 集中が途切れる事もなく、気が付いたら1時間が経っていた。


「はいっ! 休憩ね。10分後に次を始めるわよ」

「は、はい……」

「ん? どうしたの?」

「あ、いえ……もう少しここを復習しておこうかと……」

「ダメよ!」


バサッ


「えっ?」


 僕が復習をしようとしていたら、ななさんに無理やり教科書を閉じられた。


「あのね、創太。休憩も休憩で大切なの。例え10分といえどバカにできないものよ。だいたい創太、さっきの授業中も飲み物飲んでないでしょ? なら今飲まなきゃ。あとトイレも行っておきなさい。それから私にも飲み物持ってきて。いっぱい喋ったから喉乾いちゃったわ」

「はぁ、分かりましたよ」


 休憩しろと言った割にはさりげなく飲み物要求してくるし……なんなんだろ……


 自分の飲み物とななさんの飲み物を適当に準備して部屋に戻ると、ななさんはパソコンの方でカタカタやっていた。

 人には休憩はちゃんと休憩しろとか言っといて、自分は休憩中も仕事してんじゃん。


「さ、10分経ったわ。休憩終了よ」

「あー、はい」

「ちょっと創太。次の授業の準備が出来てないじゃない。遅刻よ」

「ほんとに理不尽っ!」


 そんな感じでその後も授業をして、気が付いたら今日の授業は終わっていた。


「授業の後は夜ご飯でしたよね?」

「そうよ」


 結局どの授業の後も復習はさせてもらえなかった。

 夜ご飯ももうお馴染みの四角い物体にお湯を注いで作る。

 僕が夜ご飯を準備してる間、ななさんは簡易テストを作っていた。

 昨日みたいな猛スピードのタイピングではなく、普通に作っていたけど、テストの問題量は昨日とは比べ物にならない位に多かった。


「お疲れ様。じゃあ採点はしておくから、あとは創太の自由時間でいいわよ。気が向いたらお風呂とか準備しといてね」

「気が向いたらでいいんですか?」

「ええ、いいわよ。今日は授業も初日だし、疲れたでしょ?」

「いえ、大丈夫です」

「そう? なら、すぐにでもお風呂準備して、漫画の続きを読んでおきなさい」

「あ、はい……」


 優しいのかと思うとそうでもないな。

 とりあえず言われた通り、風呂掃除等の雑用を終わらせ、お風呂に入る。

 出てきてからは読みかけの漫画を読んだ。

 でも結構すぐに眠くなってきたので、隣の部屋に布団を準備した。

 ななさんは僕が風呂を準備してる時も、漫画を読んでいる時も相変わらず無言でパソコンとカタカタやっていた。


「ななさん、僕もう寝ますね」

「そう、おやすみなさい」


 話しかければ返事はしてくれるんだけどな。

 ほんとに理不尽で変な人。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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