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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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軽重

創太視点です。

 とくに誰からも起こされる事もなく、朝起きた。

 結局昨日は5枚の簡易テストを終わらせて、夕食や風呂掃除とかの雑用してから、少し漫画を読んでいたら寝てしまった。

 僕には布団で寝た覚えはないけど布団で寝ていたって事は、ななさんが運んでくれたんだろうか?

 流石にそれはないか……


「あら、創太おはよう。今日は早いわね」

「おはようございます」


 昨日と変わらず先に起きていて、朝からパソコンをカタカタやってるななさんに挨拶をする。

 時計を見ると、7時位だった。


「朝ごはん、作りましょうか?」

「ええ、お願いね」


 僕も慣れた手付きでで2人分の朝食を準備する。

 相変わらずお湯を注ぐだけの美味しいご飯だ。

 お湯を注いで、待っている間に飲み物を準備する。


 冷蔵庫を開けた時に、僕の悪知恵が働いた。

 折角だし、何か混ぜたのを持っていこう。

 昨日、全然僕の話を聞いてくれなかった腹癒せも込めて、自分からふざける時以外は表情も特に変わらないななさんを驚かせようと思った。


 コーヒーだと思って飲んだら違った! みたいなドッキリでも仕掛けてやろうかと思って、コーヒーにオレンジジュースを混ぜてみた。

 でも思ったよりオレンジジュースが沢山入って、あからさまにコーヒーに何か入れましたって感じの飲み物になってしまった。

 流石にこれは怒られるかな? とは思いつつもそのまま、


「できましたよ」


と、ななさんに声をかけた。


「ありがとう」


 そう言って顔をあげたななさんは、明らかに何か入ってますドリンクを見たけど、それに対してなにも言わない。

 怒ってるとかそう言う事じゃなくて、本当に気にしてない感じだ。

 朝食を食べ、普通に飲んだ。


「コーヒーとオレンジジュースってまぁまぁ合うのね」


と、僕が混ぜた事に対しては気にしてない感じで、飲み物の味に関してだけ感想を言われた。


「美味しいんですか?」

「そうね、もう少し配合を工夫したらもっとよくなるんじゃない?」

「僕が変なの持ってきた事に対しては何とも思わないんですか?」

「え? どうして? 私、最初に飲み物は何でもいいって言ったじゃない。創太はそれに応えてくれてるんだから、何を持ってきてもらっても私のリクエスト通りよ」

「そうですか……」


 命令口調だったり、強引で人の話を聞いてなかったりするけど、変なところで律儀に謙虚なんだよな……

 本当に変な人だ。


 朝食の片付けも終わらせて、部屋に戻って来たけど……僕は何をすればいいんだろう?

 助手として漫画を読むのか、それとも勉強をしてればいいのか……

 昨日、"私が先生になってあげる"とか言ってたのはどうなったのかとか……


「私の授業は昼からよ。それまではほら、昨日のテスト返却するから、間違った問題の復習をしておきなさい」


 僕が悩んでいるのが分かったのか、ななさんには昨日のテストを返された。

 赤ペンで採点してあって本当に少し学校みたいだ。


 そういえば、今日も婆ちゃんから電話はかかって来るのかな?

 ななさんは多分、今回も僕に電話に出るか聞いて来るだろうな。

 もちろん僕は出る気なんてない。


 父さんに話しかけても怒鳴られるだけ、母さんに話しかけても世間体だの言われるだけ。

 そんな僕にとっては、婆ちゃんが誰よりも一番話しやすい相手だった。

 でも今は違う……

 婆ちゃんと話さないといけないと思うと気が重くて、全く喋りたいとは思えなかった。

 ななさんは何故か分からないけど話しやすいし、話す必要性があるから喋るけど、本当は誰とも喋りたくなんてないんだ。


♪♪♪♪♪


 そんな事を考えていたら、予想してた通りに、ななさんの携帯がなった。

 昨日電話がかかってきたのとほぼ同じ時間だ。

 多分、父さんも母さんも出かけて、婆ちゃんが少し落ち着いた位の時間なんだろうな。

 昨日と同じで、ななさんはそれをスピーカーにして、僕にも会話が聞こえる用にしてから話し始めた。


「はーい」

「おはようございます。創太の祖母です」

「お婆様、今日もご連絡ありがとうございます。創太ー? お婆様と話す?」


 僕は今日も首を横に振る。

 そもそも僕は電話したいなんて一言も言ってないし、誰とも喋りたくない。

 ななさんが勝手にやってることだ。


 ……ななさんが勝手に?

 あ、コレ……もしかして昨日みたいに勝手な事を散々言われるんじゃないか?

 って事は昨日のアレとか……


「すみません、今日もシャイボーイですね」

「そうですか……」

「では創太君に変わって私が創太君の様子をお伝えしますね」

「ありがとうございます」

「じゃあまず、昨日の創太君の様子ですが、創太君って結構甘えん……」

「わぁぁぁああーわわっ!」

「ちょっと何? いきなり大声だして」


 言うと思った、でもまさか、本当に言うとは……

 ななさんが婆ちゃんに僕が甘えん坊だと伝えるのを阻止するために、僕は慌てて大声を出した。


「そ、創ちゃん? 創ちゃんなのね!? え、何かされてるの? 大丈夫なのよね?」

「ほらもう、創太が急に変な声出すから、お婆様も心配してるわよ。これじゃ私が創太に何かしたみたいじゃない」


 何かしたみたいじゃなくて、何かしたんじゃん。

 僕の事を勝手に甘えん坊だとか伝えようとするから……

 なんとかそれは阻止できたみたいでよかった。

 でも確かに今の状況だと、声しか聞いてない婆ちゃんには、ななさんが僕に何か危害を加えたと思われても仕方ない。

 弁解しないと……


「あ、あの……ごめん婆ちゃん。僕は大丈夫だから……」

「あぁ……創ちゃん、創ちゃんね。本当に無事で良かったわ……」

「うん、心配かけてごめん……」

「創ちゃんが無事ならそれでいいわ。何か困ってる事とかない? 大丈夫?」

「えっ……あー、うん。大丈夫」


 困ってる事か……

 この家に閉じ込められて困ってるけど、そういう余計な事を言うとややこしくなるし……


「僕は本当に大丈夫だから、心配しなくていいよ。婆ちゃんも変に無理とかしないでね」

「えぇ、ありがとう創ちゃん」

「じゃ、じゃあ」


 そうして僕は婆ちゃんとの電話をきった。

 なんだろう……

 あんなに婆ちゃんと話すのは気が重かったのに、いざ話してみたらその重みが全部抜けていったみたいで、少し楽になった。


 僕が電話をきるまで、僕と婆ちゃんの会話にも入って来ずにパソコンに向かっていたななさんは、


「あぁ、お婆様との電話、おわった?」


とだけ聞いてきた。

 だから僕も、


「終わりました」


とだけ言って、ななさんに携帯を返した。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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