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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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勉強方法

創太視点です。

 お昼御飯中のななさんとの会話は、訳の分からない話を聞かされた上に、僕がここで勉強をさせられるという事が決まってしまった。


「さてと、じゃあそっちのテーブル使っていいから、勉強始めなさいね。漫画の続きはその後でいいわ」

「その後って……僕は何時間勉強したらいいんですか?」

「創太は普段、どれくらい勉強してるの?」

「え、そんなの分かんないですけど……学校でして、家に帰ってからも寝るまでくらいは勉強してるんで、ほぼ1日中勉強でしたよ」


 僕がそう言うと、ななさんは呆れたように溜め息をついた。


「あのね創太、勉強はやったらやっただけ身に付くわけじゃないのよ。ちゃんと息抜きしてやらないと……そりゃあそんだけしてた勉強を急にしなくなったら、こんな事してていいのかって思えるのも頷けるわ」


 僕の1日はいつもほぼ勉強だった。

 学校では当然のように勉強して、家でも遊びもせずにずっと勉強ばかりしていた。

 最初は遊びに誘ってくれてたクラスメイトとかも、僕は勉強しなきゃいけないからと断ってたら、何も誘われなくなって、クラスでも僕は孤立していた。

 しかも成績は全く上がらなかった。

 学校へ行くと絡んで来るうるさい連中の方が成績はいいくらいで、つけられたあだ名は無駄ガリ勉だ。


「だいたい、何でそんなに勉強してるのよ?」


 勉強を始めて少し経った時、ななさんが聞いてきた。


「え? それは、やってないと母さんがうるさいから……」

「ふーん……じゃあ創太が勉強をしたくてしてた訳じゃないのね?」

「当たり前じゃないですか。勉強とかしたくないですし」


 僕は覚えも悪いんだし、どれだけ勉強したって無駄なんだからやりたくないのに、無理にやらせてくる母さん。

 本当に毎日勉強しかない日々を過ごしてた。

 だから余計に、漫画を読むだけの1日なんて理解できない。


「自分がやりたいって思った事の為じゃないと、モチベーションは上がらないわよ。だからそんなにやりにくそうなのね」

「え? 別にやりにくくはないですけど……」


 家や学校とは違う場所だから慣れないっていうのもあるけど、そこまでやりにくい訳じゃない。

 机の高さも丁度いいし、クッションもふかふかだし、疲れて腰を伸ばしていても何も言われない。

 むしろ快適に勉強が出来ているのに、ななさんにはそんなに勉強がやりにくそうに見えてるんだろうか?


「そんなやり方で本当にちゃんと頭に入ってる? いくら勉強したって、身につかなきゃ意味はないのよ」

「ななさんは見てるだけなのに、この勉強が僕の身についてないかとか分かるんですか?」

「分かるわよ、やりにくそうだもの。嫌々やってる感が漂ってるわ」

「やりにくいとかじゃなくて、僕は覚えが悪いので、たくさん勉強してもあんまり身につかないんですよ、元々」

「はぁ、その考え方がナンセンスだわ」


 また、ななさんに溜め息をつかれた。

 見てるだけで分かるとか言ってるけど、これだけ会話している間も、ななさんはパソコンとカタカタやっている。


「人にはそれぞれ覚え方に違いがあるものよ。創太の"覚え"が悪いんじゃなくて、"覚え方"が悪い場合もあるし、何なら今までの先生の教え方が合ってなかったのかも知れないわ」

「ななさんは随分と自分を肯定的に考えるんですね」

「当然でしょ。人はそれぞれ違うんだから、自分に合ったやり方があるもんなのよ」

「僕に合ったやり方ですか……」


 今まで沢山勉強しても、テストの点は全然上がらなかった。

 テスト当日になると体調を崩したり、覚えたはずのところなのに思い出せなかったりとかしていたけど、それは僕の覚え方が悪かっただけで、僕が覚えの悪いバカだからじゃない?

 いや、それはさすがに、自分に都合よく考え過ぎだろう。


「分からないところを教える程度でいいと思ってたんだけど、それだけ進んでないのなら自主勉強は無理そうね。創太には独学スタイルより授業スタイルの方が向いてるんでしょう」

「授業スタイル?」

「いいわ。私が創太の先生になってあげましょう」

「先生?」

「ちょーっと待ってね」


 僕の話をほぼ聞かずにそう言ったななさんは、急に恐ろしい早さでダカダカとパソコンに文字を打ち込み、5枚の紙を印刷して渡してきた。


「とりあえず高校3年までの範囲で、5教科分の簡易テスト作ったからやってみなさい。これで創太が今どこら辺まで覚えてるのかを私が把握するから」

「は、はぁ……」


 渡された紙に書かれた問題の量に言葉を失った。

 これだけのテストをあの、ダカダカってる間に作ったのか?

 多分、1分あったかなかったか位だったのに……

 もともと変な人だとは思ってたけど、ここまでヤバい人だったとは……

 外見的には僕と歳もそんなに変わらなさそうなのに……


「あの、そういえばななさんって歳いくつなんですか?」

「こらこら、女性に年齢を聞くもんじゃないわよ」


 まぁ、どうせ答えてはくれないと思ってはいたけど……

 でも高校の範囲のテストを何も見ずにいきなり作れるんだし、大学とかはいってるんじゃないか?


「僕一応、◎◎大学に行く為に勉強してるんですけど……ななさんって、大卒なんですか?」

「そうね大卒よ」

「何大学ですか?」

「どこでしょうねー」

「でも短大だとしても、卒業してるんなら20歳とかですよね?」

「だから女性に歳は聞かないのっ!」


 結局歳は答える気がないみたいだ。

 勉強は独学でどうとでもなるとか言ってたし、◎◎大学レベルの知識があったとしても◎◎大学卒業とは限らないか……


「ってか、創太は何で◎◎大学を目指してるの?」

「それは、母さんが絶対に行けって言うから。そのために毎日勉強しろってうるさいし……」

「なら自分で目指してる訳じゃないのね」

「そうですね」

「はぁーあ、全く……」


 ななさんはまたすごく大きな溜め息をついた。

 さっきから溜め息つかれてばかりなんだけどな……


「勉強はお母様がやれって言うからやってて、目指してる大学もお母様が行けって言った所に行こうとしてるなんて……とんだマザコンね」

「はぁ? マザコン?」


 今度は何を言い出したかと思えば、マザコンとか本当にあり得ない。

 何なら僕は母さんの事が1番嫌いだ。

 毎日どこどこさん家の何とか君は何がどうだとご近所さんと僕を比べてくるし、勉強勉強ってうるさいし、◎◎大学だの内申点だの聞き飽きてるっていうのに。


「別にマザコンとかじゃなくて、反発すると母さんうるさいんですよ。だから言うこと聞いてただけで……」

「確かに、選択の余地を与えなかった創太のお母様もどうかと思うけど、それを良しとしていた創太自身が問題だわ。お母様がやれって言った事なら何でもやるの? そうじゃないでしょ。ちゃんと自分の意思を持ちなさい」

「自分の意思?」

「誰かに言われた事だけをやるんじゃなくて、それが本当に自分のやるべき事なのかを判断して、自分がやりたいことをやりなさい」

「僕がやりたいことですか?」


 マザコンとか言われた事にイラついたけど、確かに僕が今の高校に入ったのも母さんがここにしなさいって言ったからで、◎◎大学を目指してるのも母さんが言ったからだ。

 反発するとうるさいとかはただの言い訳で、自分の意思も持たずに言われた事だけをやっていた。

 これはマザコンと言われても仕方ないのかも知れない。

 改めて考えると、僕ってやりたい事とか何もないな……


「創太、何か目標は?」

「特にないですけど……」

「なら、まずは目標を決めなさい。それをやっていくうちに、それが本当にやりたい事なのか、そうじゃないのかが分かるはずだから。でも、いきなりすごく難しい目標はダメよ。順番をつけなさいね」

「順番?」

「ゴールの見えない道を走るのなんて、怖いし、辛いだけよ。だから順番に進んでいくの。自分でゴールまでの通過点をいくつかつくって、まずはここからっていう順番を決めてから進んでいきなさい」

「そんなこと言われても……」


 考えてみたけど、僕には目標もやりたい事もなにもない。

 ◎◎大学に行きたい理由もないんだから。


「まぁ何も今すぐ決めなきゃいけないものでもないわ。そのうちやりたいことが出来たとして、その時に知識はいくらあっても邪魔になる事はないから、今はとりあえず勉強してなさい」


 結局ななさんはそれだけ言って、またパソコンに戻っていった。

 散々溜め息をつかれた挙げ句、マザコンだのとバカにされて、終いには目標を持てとか……

 なんかもう、さっきから色々言われ過ぎて混乱気味だ……

 とくに制限時間をつけられてる訳じゃないし、もう少し落ち着いてから渡された簡易テストをすることにした。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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